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死者のあやまち [海外の作家 アガサ・クリスティー]


死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

死者のあやまち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12/01
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
田舎屋敷で催し物として犯人探しゲームが行なわれることになった。ポアロの良き友で作家のオリヴァがその筋書きを考えたのだが、まもなくゲームの死体役の少女が本当に絞殺されてしまう。さらに主催者の夫人が忽然と姿を消し、事態は混迷してしまうが……名探偵ポアロが卑劣な殺人遊戯を止めるために立ち上がる。


クリスティを読むのは久しぶりですね。
「フランクフルトへの乗客」 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
(感想ページへのリンクはこちら)以来なので、4年以上間が空きましたね。
まあクリスティの作品はもともと翻訳が出そろっていたし、大物はほとんど読み終わっているので、なかなかそこから進むのは時間がかかりますね(←個人的言い訳です)。

冒頭、オリヴァ夫人から電話がかかってきて、ポアロ(クリスティー文庫の表記はポアロですが、個人的にはポワロと書きまい)がはるばるデヴォンシャーまで駆り出されることになるのですが、まずここが可笑しい。
ポアロって、こんなに簡単に他人に手玉に取られましたっけ? 耄碌した(笑)!?

はっきりしないけれど、腑に落ちないおかしな点があって
「明日、犯人捜しの余興の殺人のかわりに、ほんものの殺人があったとしても、あたしは驚かないわ!」(24ページ)
という夫人のおかげで、殺人を未然に防ぐ、というタスクを負ったポアロ。
ポアロが赴いたナス屋敷で、あらすじにもある通り、犯人捜しゲームの途中で本当に殺人事件が発生する、という(ミステリ的には)楽しい設定です。
あれ? なんだか既視感があるなあ、と思ったら、「ハロウィーン・パーティー」 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)と似てるからなんですね。
ただ、殺されたのは少女。
この、殺されそうもない少女が殺される、オリヴァ夫人が感じた腑に落ちないおかしな点と関係がなさそうな少女が殺される、というのがポイントですね。
殺人が起きるのが133ページ。1/3が済んだところですね。

このあとブランド警部がやってきて、延々尋問シーンが続きます。
ひたすら、会話、会話、会話です。
ところがこれに退屈しませんでした。
会話から次々と謎が深まったり、新しい視点、怪しい見方が浮上したりするからです。
なんとなく、古き良き古典ミステリ、という味わいをしっかりと楽しめました。

お屋敷ものとして異色なのは「名探偵皆を集めてさてと言い」というシーンがないことでしょうか。
登場人物をラストで集めにくいというプロット上の要請からかもしれませんし、たどり着く真相の醜悪さからかもしれません。背後に隠されていた動機は、クラシック・ミステリには王道のものなんですが、見事に醜悪なものになっています(変な褒め言葉ですね)。
心躍る謎解きシーンがない代わりなのか、その真相を受けてのラストシーンの厳かさ(と言ってよいと思います)は、本作品の味わいどころかと思います。


<蛇足1>
オリヴァ夫人が最初に登場するときのいでたちがすごいですよ。
「どぎつい卵の黄身の色をした粗いツイードのコートとスカート、それからいかにもいやな感じの芥子色のジャンパーといったいでたちだった。」(19ページ)
コートとジャンパーを同時に着るって、なかなか斬新なコーディネイトですね。

<蛇足2>
「たまげたことにポアロは大きなキューピー人形をあててしまった。」(119ページ)
キューピーってこの頃から、イギリスにもあったんですね。


原題:Dead Man's Folly
著者:Agatha Christie
刊行:1956年
訳者:田村隆一






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