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砂漠の悪魔 [日本の作家 近藤史恵]


砂漠の悪魔 (講談社文庫)

砂漠の悪魔 (講談社文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/12/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大学生の広太は、自らの卑劣な行為が原因で、友人を自殺させてしまう。それをきっかけに、普通の学生生活から一転、悪事に荷担せざるを得なくなる。“バイト”として行かされた中国・北京で、広太は留学生の雅之と出会い、彼と共に中国西部に向かう。おもむいた砂漠で、広太は想像を超える事実に直面する。


近藤史恵のノン・シリーズものですが、とびきりの異色作です。サスペンス的であっても、ミステリではありませんね。
友人・榊原を自殺に追い込んでしまった主人公・広太の転落譚、と簡単に言ってしまえばそういう話ですが、一気読みしました。

主人公は、自分勝手で思い上がっているように設定されていますが、程度の差こそあれ若いころは周りなんて見えていないものだし、思い上がってもおかしくないとも言えますので、ちょっと意地が悪く、ちょっと邪悪なことを思いついただけの普通の青年、とも言えなくもないかな、と思いました。殊に、恋愛をめぐっては残酷になれるもの、とも思います。
(とはいえ、広太が榊原に対してやったことは本当に最低で、その手段となった彼女・桂に対しても最低の行為です)

友人が自殺してしまって、その葬式に行って、そこからの展開が、まさに転がるように悪い方へ、悪い方へ、となります。
ヤクザに目をつけられ、中国への運び屋にされ、抜けようとして脅され、抜けられなくなり...
このヤクザに目をつけられるところの枠組みは無理があるなぁ、普通こういう流れにはならないだろうなぁと思えてなりませんが(だって、自殺に追いやったとはいえ実際に殺したわけではないんですから)、それを過ぎていったん巻き込まれてしまえば、あとは落ちるだけです。
普通のストーリー展開だと、この後はヤクザとどう渡り合っていくか、という話だと予想するところですが(自殺した榊原の父親が暴力団対策課の刑事ということもありますし)、近藤史恵はそういう話にはしません。

帯に
「200ページ目で唖然。300ページ目で呆然、」(←句点、読点、このままです)
とありますが、いや、びっくりの展開です。
キーになるのは、中国で出会った留学生・雅之です。
200ページ目のときは、おっ、そう来たか、と思ったりしたのですが、300ページ目では近藤史恵の胆力に感服しました。
「日本では絶対に見られない景色を見せてやるよ」(290ページ)
と雅之に言われて連れていかれるタクラマカン砂漠。タイトルの砂漠が出てきます。
個人的には最近あれ「砂漠の悪魔」のネタバレになりますので読後にリンク先をご確認ください。あれを後から読む分にはネタバレにはなりません)を読んだところだったので、まさかなぁ、と思いながらちょっと予想してしまっていました。しかし、こうやってストーリーに組み込むとは...

「おまえはそんなことをするべきじゃなかった。だが、そいつだって、そんなことで死ぬべきじゃなかったんだ。大事に思ってくれる家族がいるならなおさらだ」(280ページ)
と広太から経緯を聞いた後に雅之が広太に投げる言葉が印象的でした。



タグ:近藤史恵
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