SSブログ

そしてミランダを殺す [海外の作家 さ行]


そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

  • 作者: ピーター・スワンソン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻ミランダの浮気を知ったことを話し「妻を殺したい」と言ってしまう。リリーはミランダは殺されて当然だと断言し協力を申し出る。だが殺人計画が具体化され決行日が近づいたとき、予想外の事件が……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防を描く傑作ミステリ!


「このミステリーがすごい! 2019年版」、2018年週刊文春ミステリーベスト10、ともに第2位です。
とてもおもしろく読みましたが、うーん、第2位になるほどのものか、と思わないでもないですね。

空港のラウンジで偶然隣り合った女性リリーに、工事業者ブラッドと不倫に走っている妻ミランダの愚痴をテッドが話し、「僕の本当の望みは、妻を殺すことだよ」と言ってみたら、リリーは「そうすべきだと思う」と応じ...
解説で三橋曉も書いているように、パトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」 (河出文庫)を思い出させるオープニングですが、「見知らぬ乗客」は交換殺人で双方向であるのに対し、この「そしてミランダを殺す」は単に妻を殺したいと思っている主人公が助けてもらう、手伝ってもらうだけという一方向(一緒に殺人計画をたてる)なので、より一層信じがたい設定ですね。
テッド、リリー双方を語り手として登場させることで、この部分をなんとかクリアしているように思いました。
さてどうなるかな、と興味を惹かれてぐんぐん読み進んでいくと、第一部の終わりでびっくり。
ああ、こう来ましたか... これは意外でした。
たぶん、「見知らぬ乗客」を連想させることを逆手にとっているのでしょうね。

このミステリ、引用したあらすじにも、帯にも書いてあるのですが「男女四人の語り」で進行します。
先入観なく読むには邪魔なコメントになってしまいますが、<伏字この四人が誰か>、というのもポイントですね。
<伏字リリー、テッド、そしてミランダとブラッドだと思うじゃないですか、普通...でも、違うんですよね。
この作品は全体を通して、リリーの物語、として成立している、と思いました。過去を振り返るシーンが結構な比重です。

意外な展開(過去の話も含め)にワクワクしながら読み進んでいったのですが、ラストがちょっとねぇ...
このラスト、この展開にしてはつまらないラストだと思いました。
なんか安っぽくなっちゃった感じがします。

あとミステリ的に不満が残るのは、殺人を犯すというのに計画が極めて杜撰なこと。
失敗してもいい、捕まってもいい、と思っているわけではないのだから、しっかり考えてもらわないと、ミステリとしてはつまらなくなってしまいますよね。いくら話の展開が重点のサスペンスだとは言っても...

不満は述べましたが、2位だと思えばこその不満、とも言えまして、読んでいる最中はどっぷり世界に浸ってしまいましたので(だからこそ、第一部の終わりでびっくりしました)、十分おもしろい作品でした。

原題はThe Kind Worth Killing。
直訳すると、殺すに値する種類(の人間)というくらいの意味でしょうか。解説でも触れてありますが。
「あなたの奥さんは、殺されて当然の人間に思えるわ」(43ページ)
というリリーがテッドに言うセリフが当てはまりますね。当然、と訳してあるのはさすがプロ、ですね。



原題:The Kind Worth Killing
作者:Peter Swanson
刊行:2015年
訳者:務台夏子












nice!(24)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 24

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。