SSブログ

猿島六人殺し [日本の作家 な行]


猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 鳴神 響一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
浪人者の多田文治郎は江ノ島・鎌倉見物のあと足を伸ばした米ヶ浜で、浦賀奉行所与力を務める学友の宮本甚五左衛門に出会い、対岸の猿島で起きた殺しの検分に同道してほしいと頼まれる。甚五左衛門が「面妖な事件」と評したことに興味をそそられ、承諾した文治郎。酸鼻を極める現場で彼が見たものとはいったい……? 驚天動地の時代ミステリ!


たぶん日本経済新聞だったと思うのですが、読書欄というのか書評欄というのかで(評者は縄田一男だったかと)、シリーズ第2作の「能舞台の赤光 多田文治郎推理帖」 (幻冬舎文庫)が取り上げられていまして、それがおもしろそうだな、と思ってシリーズ第1作のこの「猿島六人殺し 多田文治郎推理帖」 (幻冬舎文庫)をチェックしてみたら、こちらがこれまたおもしろそう。ということで購入!

離れ小島である猿島にある茶寮で六人が殺されていて、でも生きている者はだれ一人いない状態。茶寮は険しい崖の上に建っていて、門には頑丈な閂がかけられていて...
おお、「そして誰もいなくなった」 (ハヤカワ・クリスティー文庫)ではありませんか!!

探偵役をつとめる多田文治郎とワトソン役の甚五左衛門が事件現場に赴くまでの第一章のあと、第二章は事件の当事者の手記となっており、まさに「そして誰もいなくなった」

「そして誰もいなくなった」と違うのは、手記のあと、第三章以下で謎解きが行われること、です。
「そして誰もいなくなった」型のミステリは、皆殺しの部分が終わるとすとんとラストを迎えるパターンが多い(、そして、そのすとんと落とす切れ味で勝負する作品が多い)と思うのですが、この「猿島六人殺し 多田文治郎推理帖」は違います。手記が終わる段階で152ページほど。まだ200ページもあります。
そして、手記と現場を見たのをベースに謎解きを行う。
これは新しいように思いました。わくわく。
でもね、ちょっと残念なことに、次から次へとトリックをたちまちのうちに見抜いてしまうんですよね。
第三章でほぼすべての殺人の真相が明かされてしまいます。
ああ、もったいない。
もっともっと、ああでもない、こうでもない、とひねくり回してくれればよいのに。推理するという余裕もなく、ぱっぱと真相が語られてしまいます。
犯人もあっさり突き止められてしまいます。
ついでに文句を言っておくと、それぞれのトリックも特段とりたてていうほどのものでもないんですよね...だから多田文治郎でなくとも、読者も真相やトリックの見当が割と簡単についてしまうようになっています。

このあと犯人の手記があって背景が語られ、プラスαで物語は幕を閉じる、という流れ。
「そして誰もいなくなった」型のミステリに犯人の手記は必須アイテムではありますが、本作ではトリックや事件の流れが解き明かされてしまっていますので、手記は事件の仕掛けを明かすという役割を担うのではなく、事件の背景を語るものとなっています。
ここも新しい試みですよね。
この手記に新たな謎を仕掛けるというのも、楽しい仕組みだと思いました。

ということで文句もつけてしまいましたが、トータルでは大満足。
「そして誰もいなくなった」の変奏曲を時代小説の枠組みで構築した、なんて、素晴らしい!

シリーズを追いかけていきたいです。


nice!(24)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 24

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。