煽動者 [日本の作家 石持浅海]
<裏表紙あらすじ>
日曜夕刻までに指摘せよ。“名前”のない犯人を--。
テロ組織内部で殺人事件が起きた。この組織のメンバーは、平日は一般人を装い、週末だけ作戦を実行。互いの本名も素性も秘密だ。外部からの侵入が不可能な、軽井沢の施設に招集された八人のメンバー。発生した殺人の犯人は誰か?テロ組織ゆえ警察は呼べない。週明けには一般人に戻らなければならない刻限下、犯人探求の頭脳戦が始まった―。閉鎖状況本格ミステリー!
「攪乱者」 (実業之日本社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続く、シリーズ第2弾です。
施設に召集されたテロリストのメンバーのなかで殺人事件が起こる...
おもしろいことを考えますよねぇ。嵐でもないのに、嵐の山荘が成立する。
作中にも書いてありますが
「しかしここは反政府組織だ。警察は来ないし、上司からの指示はもう出されている。事件は放っておいて、任務を継続するようにと。」(199ページ)
ということなんですね。
さらにおもしろいのが、この任務。
「攪乱者」 に続いて、こんなテロがあるかなあ? というような任務です。
この微妙な匙加減がこのシリーズのポイントですね。
そしてさらにさらにおもしろいのが、嵐の山荘での殺人が発生したというのに、このテロ組織の面々はいったんその施設を離れ、翌週またこの施設に”出勤”するというところですね。
こういう異常な設定の物語ですから、異常なことがあっても普通なのかもしれませんが、この作品の動機にはやはり首をかしげざるを得ません。
まあ、動機が理解を超えているなんていうのは、石持浅海作品には普通のことですから、苦笑するしかないのですが...
こんな動機で殺されては、たまったものではありません...
と、石持浅海らしい作品で仕方ないなぁ~、と思っていたら、ラストでこの組織の秘密が明かされます。
これには感心しました。おもしろい!
出発点はさほど突飛な発想ではないのではと思いますが、そこからこういうテロ組織に持ってきたのはアイデア賞だと思いました。
こんなテロがあるかなぁ?、こんなのテロに入るかなぁ? という疑問にさらっと答えていて、ニヤニヤと笑ってしまいます。
馬鹿馬鹿しいことを作品に仕立て上げるなら、ここまでやらないとね!
<蛇足>
「一般企業ならば、部下のやる気を削ぐとして、管理者のべからず集に載る態度だ」(189ページ)
というところで、おやと思いました。
「べからず集」
最近聞かない表現ですね。
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