もろこし桃花幻 [日本の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
道に迷った漁夫が行き着いたのは、戦乱を逃れた民の子孫が王朝の変遷も知らず平和に暮らしているユートピアだった―陶淵明『桃花源記』を思わせるのどかな村にやってきた、陶華ら旅の一行。ところが、落ち着く間もなく大騒動に巻き込まれ、下手人扱いの憂き目に遭う。道すがら連れになった一癖も二癖もある顔ぶれを見ればそれもやむなしかと、凡人の陶華は溜息をつくが…。
秋梨惟喬の
「もろこし銀侠伝」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)、
「もろこし紅游録」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
に続く銀牌侠伝説シリーズ第3弾は、長編です。
といっても薄めの長編なので、快調にすいすい読めました!
「もろこし紅游録」以来すごく久しぶりに読んだのですが、すっと世界に入り込めます。これはいつもの通り。
物語の背景となっている、元朝末期の流賊が面白かったですね。
なるほどこういう仕組みなんだ、と勉強になります。
桃渓山という険しい山を遥かに望む渓陵の小さな県城を攻め落とそうとして苦戦している流賊の姿がオープニングです。そのあと、桃渓の城に籠っている側(一人は顔軍師と呼ばれている!)の話に。
続けて、桃渓山の下流の村で、川に女性のバラバラ死体が流れてきたという怪事。
さらに章が変わって、桃渓村のたどりついた陶華(科挙を目指していたが、王朝末期で科挙が行われず、旅に出ている男)に合流する様々な人物たち。
一行は、なんだかんだしたあと、桃源郷ともいうべき隠れ村にたどり着くが、その村はどうもただならぬ様子で...
いいではないですか、こういうの。
当然ながら、桃渓山に隠された秘密を暴いていくわけですが、この真相がまたいいんです。
馬鹿馬鹿しいけど(為念、褒め言葉です)、それでいてこの時代背景、この世界設定ならあるかもなー、と思えてしまう大技(反則技!?)が、むしろ爽快でした。
活劇シーン(?) とか戦闘シーンで無茶苦茶強い奴が出てくるのは、銀牌侠ならではで、楽しんで読むのがいいですね。残酷なシーンもあちらこちらにありますが。
こういうぬけぬけとした話は大好きです。
作者のあとがきには
「ですから、銀牌侠の物語はまだまだ続きます」
と書かれているのですが、このあと続きは出版されていないようです。
ぜひ、ぜひ、ぜひ。
2019-04-28 05:10
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