SSブログ

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた [日本の作家 あ行]

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

  • 作者: 井上 真偽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
聖女伝説が伝わる里で行われた婚礼の場で、同じ盃を回し飲みした出席者のうち、毒死した者と何事もなく助かった者が交互に出る「飛び石殺人」が発生。不可解な毒殺は祟り神として祀られた聖女による奇蹟なのか?探偵・上苙(うえおろ)丞は人の手による犯行可能性を数多の推理と論理で否定し、「奇蹟の実在」証明に挑む。


「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位です。
「その可能性はすでに考えた」 (講談社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2作です。
事件・謎が奇蹟であることを証明しようとする探偵という設定に無理があるなぁ、と感じてしまった前作ですが、この「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」 (講談社文庫)は、その路線を踏襲しているもののひねりが加えてあっておもしろい形に仕上がっています。

回し飲みでどうやって特定の人物だけを殺すか、というのはちょいちょいミステリで取り上げられている謎ではありますが、特定のひとりにどう毒を飲ませるか、というのが普通で、飛び石状に数人が死ぬ、というのは新しいのではないでしょうか。

いわゆる多重解決の醍醐味を味わえるシリーズですが、今回上苙丞が最初からは登場せず、弟子(?) の少年探偵八ツ星が謎解きを主導します。
いろいろな推理が飛び出して楽しいですね。
奇蹟を証明するためにあらゆる可能性をつぶす、ということが必要なので、本当に奇天烈な推理(?) まで飛び出すのも、また"をかし"。

しかし、この作品の最大のポイントは、第一部のラストの一行(195ページ)でしょう。
これには本当にびっくりしました。
それまでの事件の様相が一変する一行です。
変わるのは事件の様相だけではありません。
上苙丞はさらにさらに後の270ページになって登場するのですが、この一行のおかげで、上苙丞が繰り広げる推理の見え方もすっかり変わってしまいます。
もうねぇ、この一行だけでこの作品を推したくなりますね!

事件・謎が奇蹟であることを証明しようとする探偵という設定に無理がある、という思いには変わりはないのですが、その不満を上回る趣向と言ってもいいかもしれませんね。

「その可能性はすでに考えた」 について、「まだまだ実験作の段階、という気がしてなりません」と書きましたが、そして「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」 も実験作ではありますが(シリーズそのものが実験作なのかもしれませんが)、おもしろい方向の実験を試してくれているなぁ、と強く感じます。
シリーズ続巻をぜひお願いします。

最後に、今回もこの本については、SAKATAMさんのHP「黄金の羊毛亭」に素晴らしい解説とネタバレ解説(ネタバレ解説は、普通の解説のページからのリンクでご訪問ください)がありますので、ぜひご参照ください。(勝手リンクですみません)





nice!(23)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 23

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。