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黒い睡蓮 [海外の作家 は行]


黒い睡蓮 (集英社文庫)

黒い睡蓮 (集英社文庫)

  • 作者: ミシェル・ビュッシ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
モネの《睡蓮》で有名な村で発生した、奇妙な殺人事件。殺された眼科医は女好きで、絵画のコレクターでもあった。動機は愛憎絡み、あるいは絵画取引きに関する怨恨なのか。事件を担当するセレナック警部は、眼科医が言い寄っていた美貌の女教師に話を聞くうちに、彼女に心惹かれていく。一方、村では風変りな老女が徘徊し……。『彼女のいない飛行機』で人気を博した著者の傑作ミステリ。


「このミステリーがすごい! 2018年版」第5位。
「2018本格ミステリ・ベスト10」第4位
この「黒い睡蓮」 (集英社文庫)は2015年に翻訳された「彼女のいない飛行機」 (集英社文庫)が話題となったミシェル・ビュッシの作品で、「彼女のいない飛行機」 よりも前に発表された作品のようです。
舞台はノルマンディーの村ジヴェルニー。モネで有名なところですね。

書き出しは
「ある村に、三人の女がいた。
 ひとり目は意地悪で二人目は嘘つき、三人目はエゴイストだった。」(11ページ)
そして前語りにあたるこの部分の結部は
「いちばん若い三人目の女はファネットといい、二人目の名前はステファニー・デュパン、いちばん年寄りのひとり目の女、それはこのわたしだ。」(13ページ)
いかにも怪しげですよね。
三人の女それぞれに起こるそれぞれの出来事が綴られていくのですが、つながりはどうなっているのかな、というのが興味の焦点となります。
ミステリを読み慣れた人なら、ある程度見当をつけて読み始めることでしょう。
ところがその見当を裏切るような記述があちこちに。
とするとこちらの考え違いなのかな、と思いつつ読み進む。

それぞれの物語、エピソードがとても興味深かったですね。
絵に活路を見出す少女ファネット、捜査する警察署長と関係が深まっていく学校教師ステファニー、そして過去を回想しながら”観察者”として村を徘徊するわたし。
舞台がジヴェルニーだけに、モネやモネの作品が底流に流れているのも素敵です。ジヴィルニー自体もたっぷり描かれます。

ミステリとしての仕掛けはどうだったか、というと、訳者あとがきでは「大技」と書かれています。
前例はいっぱいある手法・仕掛けですが、一歩前に進んだ感じがします。少なくとも前例よりは踏み出して作り上げられているとは思いました。
ただ、原文がどうなっているかわかりませんが、読み返せばいわくあげな前語りはアンフェアと言わざるを得ないですし(そもそも「三人の女がいた」というのがアウトですしね←ネタバレにつき色を変えています)、本文中にもアンフェアと思えるところがあちこちに。
この仕掛けを成立させるためにもっとも重要なポイント(名前の違いや犬ネプチューンの扱い←ネタバレにつき色を変えています)も説明はされているもののかなり苦しいです。
それでも、アンフェアにならないように、そしてそれらしいヒントをちりばめようとした努力の跡はしっかりうかがえますが。

ただ、この作品についてはミステリとしてアンフェアでも構わないのかもしれないな、という気がしました。
というのは、ちょっとネタバレ気味になりますが、この仕掛けが明かされたときに、三人の女それぞれの物語が違った景色に見えてくるからです。このためだったら、多少のアンフェアは受け入れようではないですか! とそんな気分。

モネに彩られた作品で、芸術作品もあちこちに出てきます。
「モネの『睡蓮』を見ていると、なんだか絵のなかに吸いこまれ、突き抜けていくような気がするでしょ? 井戸のなかか砂の穴にでも、落ちていくみたいに。それがモネの狙いだったのよ。よどんだ水を描くこと、一生の出来事が目の前を通り過ぎていくような印象を与えることが。」(299ページ)
睡蓮を見てもちっともそんなことを思わない芸術オンチなので、こんなことを言われると恐れ入るしかないのですが、しかもこの発言者が11歳くらいの少女(ファネットです)と来ては...

分厚い作品ですが、一気読みしました。
「彼女のいない飛行機」 にも期待します。

<蛇足1>
「アマドゥ・カンドゥに聞いた話だが、十年前、日本の片田舎にモネの家やノルマンディ風の花園、水の庭をそっくり模した庭園ができたのだそうだ。」(248ページ)
と書いてあったので、ネットで調べてみました。
高知県の北川村にある「モネの庭 マルモッタン」(勝手リンクですがHPにリンクを貼っています)のことのようです。
北川村「モネの庭」マルモッタンは、1999年に「アカデミー・デ・ボザール終身書記アルノー・ドートリヴ氏から、それまでは門外不出であった〈モネの庭〉の名称をいただく事となった」うえ、「印象派の巨匠クロードモネが43歳から生涯の半分を過ごした、フランス・ジヴェルニーで丹誠込めて作り上げた〈モネの庭〉を再現した庭として2000年に開園」したとのことです。
なんだかすごいですね。
ちょっと行ってみたくなりました。

<蛇足2>
「ジヴェルニーから一キロ以上ある、人里離れたきれいな場所だ。イラクサの島で待ち合わせるというのは、考えれば考えるほどいいアイディアだと彼女は思った」(449ページ)
「一キロ以上ある」という表現から、一キロちょっとの距離にあるということになります。
人に見つからないよう密会するのなら、ちょっと近すぎるのではないでしょうか? 本筋とは関係ないですが気になりました。

<蛇足3>
「アンティークショップの前で大人たちの一団が、日本語だか韓国語だか、わけのわからない言葉を話している。わたしは動物園の恐竜みたいなものだ。」(551ページ)
日本人が揶揄されているなぁ、と感じないでもないですが、ひと昔前ならこうでも、今なら「中国語だか韓国語だか」と書かないと実情に合わないでしょう。
観光地出会うのは、日本人より圧倒的に韓国人、中国人が多いですから...
それと、動物園の恐竜って、どういうことでしょうか? 動物園に恐竜はいないような...




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