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バルコニーの男 [海外の作家 マイ・シューヴァル ペール・ヴァール]

バルコニーの男 刑事マルティン・ベック (角川文庫)

バルコニーの男 刑事マルティン・ベック (角川文庫)

  • 作者: マイ・シューヴァル
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/03/25
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ストックホルム中央の公園で女児の死体が見つかった。彼女は前年、不審な男に話しかけられ、警察に証言を残していた。そのわずか二日後に別の公園で新たな少女が殺害され、ストックホルム市民は恐怖に打ち震えた。連続少女暴行殺人事件に、刑事マルティン・ベックは仲間と事件に取り組むが、手がかりは三歳の男の子のたどたどしい証言と、強盗犯の記憶のみ。捜査は行き詰まる――。警察小説の金字塔シリーズ・第三作!


「ロセアンナ」(角川文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「煙に消えた男」(角川文庫)(感想ページへのリンクはこちら
に続く、マイ・シューヴァル ペール・ヴァールーによる、マルティン・ベックシリーズ第3作です。

今回の事件は連続少女暴行殺人事件。痛ましい事件ですね。
一種の通り魔的事件なので、手がかりもほとんどなく、捜査が難航する、という構図の作品です。

読み終えた感想は、誤解を恐れずにいうと、
「この作品、ミステリなのかな?」
というものでした。
別の表現でいうと
「この小説、警察小説ではあっても、警察ミステリじゃないんじゃないかな?」
もちろん、警察小説は広義のミステリの範疇ですから、この「バルコニーの男」 はミステリに位置付けられるわけですが、おもしろさの主眼が、ミステリにはない気がしてなりません。普通の小説?
あらすじにも書いてある、三歳の男の子のたどたどしい証言のくだりなどは、ミステリ風味がちょっぴりしますが、あまりにもあっさり扱われています。
作品の冒頭、バルコニーの男の場面から始まっているのも、ミステリ的にはいろいろと料理のしがいのあるオープニングのようにも思えるのですが、その後とりたてて重視される気配もありませんし、作者はミステリとしてのおもしろさを重視していないような気がします。

それよりは警察の面々の方がよほど重点がおかれているようです。
マルティン・ベックやコルベリといったお馴染みになってきた捜査官以外にも、この「バルコニーの男」 で初お目見えだと思われる、グンヴァルド・ラーソンとか、複雑そうなキャラクターで注目株ですよね。

ミステリ味が薄くても、ぐんぐん読ませる力を持った作品で、優れたシリーズだと再認識しました。
シリーズ次作は「消えた消防車」 (角川文庫)で、楽しみです。
<2020.11訂正>
シリーズ次作は
「笑う警官」 (角川文庫)でした。失礼しました。


<蛇足>
「新聞と宣伝郵便物ばかりだ」(288ページ)
思わず失笑。宣伝郵便物って... 今どきダイレクトメールと言わない人いますか?
せっかくのスウェーデン語からの新訳。こなれた日本語にしましょうよ。


原題:Mannen pa balkongen
作者:Maj Sjowall & Per Wahloo
刊行:1967年
訳者:柳沢由実子


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