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遠い国からきた少年 [日本の作家 樋口有介]

遠い国からきた少年 (中公文庫)

遠い国からきた少年 (中公文庫)

  • 作者: 樋口 有介
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/04/20
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
法律事務所で調査員として働く風町サエは、服役経験のあるシングルマザー。今回の依頼者は、アイドル候補生が店員の安売りピザ店で大儲けをした男。自殺した少女の両親から要求された一億二千万円の賠償金を減額させたいという。調査を進めるうち、ある人の過去にも迫っていくことになったサエは―。『笑う少年』を改題。


「猿の悲しみ」 (中公文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2作です。
文庫化にあたって、「笑う少年」から「遠い国からきた少年」 へと改題されています。

常識的に考えると、「遠い国からきた少年」=「笑う少年」ですから(タイトルになるような少年がそう何人もいるとは思えません)、本書に「笑う少年」が出てきたときから、この少年は「遠い国からきた少年」なんだな、と思ってしまいます。
これが本書にとってよいことだったのかどうか、ちょっと疑問ですね。
改題しないほうがよかったのでは?

この点を置いておくと、シリーズ快調です!
この作品単体で楽しめますが、前作「猿の悲しみ」 のネタバレ、あるいはネタバレに近いところがあちこちにありますので、「猿の悲しみ」 を先に読んでおいたほうがよさそうです。
風町サエ、息子の溺愛ぶりに拍車がかかっています。おかしい。

まるでAKBを彷彿とさせるような、OKEというアイドル・グループが出て来ます。
このOKEのビジネスモデル(?) がなかなか興味深い設定になっています。
もとは『ラビット・ピザ』というピザ・チェーンで、そこの従業員を女子高校生か同年齢の少女たちに限定。客に従業員少女の人気投票をさせ、その集票によって、渋谷、原宿、青山といった旗艦店舗に登用。そこでのさらなる人気投票で上位になった少女たちを『OKEスペシャル』というユニットにして芸能界へ!(15ページに説明あり)
なかなかのアイデアのような気がします。
AKBの場合は買わせるのがCDですが、ピザ屋なのでピザの売り上げに直結するのがおもしろいですね。中途半端なロイヤリティ・プログラムより効果あるでしょうね。

OKEをめぐる捜査がやがて「笑う少年」の正体を探っていくというストーリー展開になりますが、羽田法律事務所の「裏の」仕事で探るだけではなく、友愛協会の凛花からの依頼としても探る、というところが面白い展開ですね。

樋口有介の軽やかでしなやかな文章に支えられ、サエの活躍を追いかけるのがとても楽しいです。
この後シリーズは刊行されていないようですが、少年を主人公にした作品に加えて、サエ・シリーズもお願いします。柚木草平シリーズや木野塚佐平シリーズはどっちでもいいです(笑)。



<蛇足1>
前沢遥帆子(まえざわよほこ)という登場人物が出て来ます。
よほこ、とは変わった名前だなぁ、と最初思っていたのですが、これ「よほこ」とフリガナが振ってあっても、発音はきっと「ようこ」なんでしょうね。
「ほ」を「お」という音で読むのはまま見られることですよね。
顔も昔は「かほ」だったものが「かお」になったものですし。
似たような例に「かほり」がありますね。こちらも「かおり」さんとお読みする例が多いように思います。
お名前だったら、好きに書いていただいて結構だとは思いますが(それでも、かほり、を、かおり、と読め、というのは無理なんですけれども)、「香り」という名詞を「かほり」と書くのは間違いですね。旧かなですらありませんから(旧かなでは「かをり」)。
昔、「シクラメンのかほり」という歌がありましたが(作詞・作曲 小椋佳)、香りという意味だとすると小椋佳の間違いです。間違いだとすると、かなり迷惑な間違いですね。あの曲のせいで、香りが「かほり」だと勘違いする人が多いでしょうから。あの曲で固有名詞という解釈が成立するのかどうかわかりませんが......

<蛇足2>
終盤コント・ラフォンという高級ワインが登場します(331ページ)。
ワインはまったくわかりませんので、ネットで調べてみたら、すごそうなワインですね...



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