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ガール・オン・ザ・トレイン [海外の作家 は行]

ガール・オン・ザ・トレイン(上) (講談社文庫)ガール・オン・ザ・トレイン(下) (講談社文庫)ガール・オン・ザ・トレイン(下) (講談社文庫)
  • 作者: ポーラ・ホーキンズ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/10/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
夫と離婚し、酒浸りの日々を送るレイチェル。彼女は通勤電車の窓から、一組の幸せそうな夫婦を見つけ、昔の自分の姿と重ね合わせていた。その夫婦の家は、かつての自宅に近接しており、元夫は当時の家で新しい妻子と暮らしているのだった。絶望と闇を抱える女性三人の独白で描く、サイコスリラーの傑作!<上巻>
ある朝、レイチェルは電車の窓から、理想としていた主婦の、不倫現場を見てしまう。その直後、主婦は行方不明に。失踪か、殺人か。捜査が難航する中、彼女の過去が徐々に明かされる。レイチェルは「真相」を告げようと被害者の夫に近づくが、それが悲劇の始まりだった。世界で絶賛された英国ミステリー、驚愕の結末。<下巻>


8月の中旬以降すっかりさぼっていました。
夏休みシーズンということで、海外旅行に行ったりもしましたが、それは主因ではなく、さぼり癖がついちゃったようです。
9月になりましたので、気を取り直して! (と言いながら、自分の生来の怠け癖に懸念がありますが...)

さて、この「ガール・オン・ザ・トレイン」(上) (下) (講談社文庫) ですが、2年くらい前に知人にお勧めされたものです。
映画も面白かったけれど、小説も面白かった、と。

上下巻になる長い物語ですが、すらすら読めます。
面白かったです。
「世界50ヵ国で出版、累計1500万部」という帯がついているのですが、売れているのもよくわかるわかりやすさ、おもしろさです。映画化もされましたしね。
(余談ですが、この「50ヵ国」という表記、嫌いです。50ヶ国か50箇国と書いてほしいですね。ヶは箇の略字と聞いていますので許容範囲かと思いますが、ヵって何なんでしょうか? こんな字ありますか??)
でも、手放しでほめるわけにはいかない気がしました。

まず主人公であるレイチェルというのがちょっと受け入れがたい。
ひらたく言うと、アル中で、ストーカーなんです。
常識では考えられないような行動を取ります。
物語の駆動力が、常識外のところにある、というのは我慢しなければいけない作品もあるでしょうが、この作品の場合はちょっとどうかな、と思います。いわゆる常識の範囲外にある主人公が、常識の範囲内の世界設定にいる、という作品は数多くありますが、それらの作品の目指すところは、この作品の目指すところとは違うので。
こういう設定で感情移入できないうえに、主人公が行動するたびに、「いくらなんでも(ひどいケースには、いくらアル中でも)そんな行動はとらないだろう」と思えてしまうので、物語に入り込むのが難しい。

また小説の技法として、視点人物を3人設定しているのですが、これは確かにサスペンスを高めてはいると思うのですが、少々作者に都合がよい切り替えになっている気がしました。
一方で、3人も視点人物がいるせいで、ただでさえ少ない登場人物の中の”犯人候補”が非常に限定されてしまっています。カバー裏のあらすじに、「驚愕の結末」とありますが、この状況で真相が明かされたときに驚愕する読者がいるとは思えません。

それでも、面白く読めたんですよね。
女性三人の視点というのが、逆に興味深かったですね。
非常にわかりやすく、直截的に心理が書かれているので、(理解できる、できないは別にして)それぞれの状況やものの見方が伝わってくるからです。

また、物語が転がりにくい局面になると、常識はずれの行動を主人公がとって新たな展開を生み出すので(作者の技巧としてはあまりに安直ですが)、次々にストーリーが進んでいく快感はあります。

ということで、知人には心置きなく「面白かったよ」と伝えることができました!

映画の方は観ていませんが、上に書いたような欠点(?) は映画化するとなくなりやすい点ですので、うまく処理されているのでしょうね。


<蛇足>
カバーに使われている写真、車窓から見える景色としての住宅街がイギリスらしくてよいと思いましたが、この作品の場合は裏庭側が車窓から見えるという設定なので、この写真は違うなぁ、と。残念。



原題:The Girl on the Train
作者:Paula Hawkins
刊行:2015年
訳者:池田真紀子



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