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デクスター 夜の観察者 [海外の作家 ら行]

デクスター 夜の観察者 (ヴィレッジブックス)

デクスター 夜の観察者 (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ジェフ ・リンジー
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2010/10/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
マイアミ大学の構内で首なし死体が見つかった。被害者の女子学生2人は全身を焼かれ、頭部のかわりに陶器の雄牛の頭が置かれていた。不気味ながら興をそそられる手口……のはずが、事件に関わってからというものデクスターは何者かに執拗にストーキングされ、頼みの“殺人鬼の勘”も今回は捜査に役立ってくれない。そんななか新たな首なし死体が発見され、デクスターの身近な人物にも魔手が伸び始める。手がかりは現場に残された謎の文字。だがそれは想像を超える闇への招待状にすぎなかった!昼は好青年の鑑識官、夜は冷血無情な連続殺人鬼――強烈なダークヒーローの活躍を描く絶賛シリーズ第3弾。


「デクスター 幼き者への挽歌」(ヴィレッジブックス)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「デクスター 闇に笑う月」 (ヴィレッジブックス)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第三作です。

三作目にして異色作、と申しましょうか、これまでデクスターといつも一緒にいた〈闇の乗客〉に注目です。

まず、不思議な断章が冒頭はじめあちこちにあり、それが次第に〈闇の乗客〉の正体(?) に関連しそうだな、とわかってきます。
すると、〈闇の乗客〉って、デクスターの二重人格的なもの、とばかり思っていたのですが、違ったんですね!? 解説で関口苑生が書いているように、それこそ悪魔のようなものだったんですね!?
「デクスター 闇に笑う月」 感想で、「ひょっとして宇宙人とかSF的設定なのかな、なんて勘ぐりながら読みましたが」なんて書きましたが、ある意味その通りだったのか......
とすると、この「デクスター 夜の観察者」にも
「十四歳として生きるのは、たとえ人造人間にとっても決して楽ではなかった。」(208ページ)
なんてくだりがありますが、あながち誇張じゃない!? あっ、でも、人造人間ではないですね。

そしてその〈闇の乗客〉、本書ではデクスターのもとから(中から?)姿を消してしまいます。(180ページ)
「馬鹿げているのは百も承知だが、とにかくわたしは夜間にまったくひとりになった経験がなく、そのため自分がとことん無防備に思えてならなかった。〈闇の乗客〉なかりせば、わたしは鼻が鈍くなって牙をすっかり抜かれた虎にすぎなくなる。自分がのろまの愚図になった気分だったし、背中の皮膚がぞっとぞわぞわしっぱなしだった。」(263ページ)
とデクスターが言う通り、すっかり調子が狂ってしまいます。

それでも余裕のあるいつもの語り口を100%とは言いませんが、維持しているのは立派ですね。よかった。
さて、〈闇の乗客〉はデクスターのもとに戻ってくるのか......

それと同時に本書で注目なのは、リサ(デクスターの婚約者!)の子供たちをどうやって指導していくか、というところですね。
これがとてもおもしろい。
536ページのコーディのセリフには、もう拍手喝采ですよ。

追う側から追われる側になったデクスター、〈闇の乗客〉が不在のデクスターとかなりの変わり種でずいぶん楽しませてくれましたが、これでいろいろと出揃った感があるので、これからが楽しみだなぁ、と思っても、もう翻訳はストップしているんですよね。
Wikipediaで調べたら、
Darkly Dreaming Dexter (2004) 「デクスター 幼き者への挽歌」
Dearly Devoted Dexter (2005) 「デクスター 闇に笑う月」
Dexter in the Dark (2007)  「デクスター 夜の観察者」
のあと、
Dexter by Design (2009)
Dexter Is Delicious (2010)
Double Dexter (2011)
Dexter's Final Cut (2013)
Dexter is Dead (2015)
と、シリーズは8作目まで出ているようです。
ぜひ、ぜひ、翻訳してください!



<蛇足1>
パステリートというお菓子が登場します(104ページ)。
知らなかったのですが、アルゼンチンのお菓子のようです。
ネットで調べてみると「甘いジャムやサツマイモを薄いパイ生地で包んでこんがり揚げ、粉砂糖をまぶしたもの」や「パイ生地でできた甘い揚げパンで、 中にはメンブリージョというカリンのジャムが入っています」と書かれていますね。
中米の方にも同じ名前の食べ物があるようですが、それはお菓子ではなくて、挽肉を詰めた揚げ餃子のようなもの、とされています。
(勝手にリンクを貼っています)

<蛇足2>
アレスター・クロウリーの名前が132ページに出て来ます。
これまた知らなかったのですが、イギリスのオカルティストで、その世界では有名なんですね...

<蛇足3>
「この若き怪物にさえあてはまっていた思春期の無上命令のひとつに、“二十歳以上の大人はなにもわかっていない”というものがあった。」(208ページ)
そうそう思春期ってそうだよね、と思いながら、無上命令という難しい語が突然出てきてびっくりしました......調べちゃいましたよ......

<蛇足4>
「アラム語はヘブライ語と同様に母音文字をもたない。」(274ページ)
「レイダース 失われたアーク(聖櫃)」を引き合いに出しながら、アラム語が出て来ます。
アラム語もヘブライ語も母音文字を持たないんですか......なんだか、すごそうな言語ですね。

<蛇足5>
「デリカテッセンでランチを注文するときにキールバーサという単語を口にすることはできても、あいにくポーランド語はわたしが通暁している言語ではない。」(325ページ)
またもや知らない語が出て来ました。
キールバーサ。kielbasa 東欧のソーセージ(風のもの)のことらしいです。




原題:Dexter in the Dark
作者:Jeff Lindsay
刊行:2007年
訳者:白石朗



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