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ナイン・ドラゴンズ [海外の作家 マイクル・コナリー]

ナイン・ドラゴンズ(上) (講談社文庫)ナイン・ドラゴンズ(下) (講談社文庫)ナイン・ドラゴンズ(下) (講談社文庫)
  • 作者: マイクル・コナリー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
かつて暴動が起きたエリアで酒店を営む中国人が銃殺された。ロス市警本部殺人事件特捜班のボッシュは、事件の背後に中国系犯罪組織・三合会(トライアッド)が存在することをつきとめる。報復を恐れず追うボッシュの前に現れる強力な容疑者。その身柄を拘束した直後、香港に住むボッシュの娘が監禁されている映像が届く。<上巻>
娘を助け出すべく香港に飛んだボッシュは、前妻と彼女の同僚の力を借りて街中を血眼で探し回る。監禁映像の背景にあったのは九龍(カオルン)半島の繁華街、尖沙咀(チム・サー・チヨイ)であることが判明。しかしボッシュの人生最大にして、最悪の悲劇が起こる。娘は救えるのか?裏で糸を引いているのは誰だ。コナリー作品、成熟の極み!<下巻>


前作「スケアクロウ」(上) (下) (講談社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)は新聞記者であるジャック・マカヴォイを主人公にした作品でしたが、マイクル・コナリー21作目のこの「ナイン・ドラゴンズ」(上) (下) (講談社文庫)は、看板シリーズであるハリー・ボッシュものです。

タイトルからして、香港が舞台になるのだな、と思い、あれれ? ハリー・ボッシュ香港に行くのか、休暇でも取るのかな? でもハリー・ボッシュが休暇を取るなんて考えられないな、と思っていたら、香港が舞台というのは当たっていましたが、それ以外は大外れでしたね。
あらすじに書いてしまってあるので明かしてしまいますが、ボッシュの娘が香港にいて誘拐されるのですね。
(なお、ボッシュは以前にも休みをとって娘に会いに香港にも行っていたようですね......子煩悩?)

『ナイン・ドラゴンズ』は形にするまで長い時間がかかった。ハリー・ボッシュの人生という旅において極めて重要な物語である。わたしにしてはいつもよりアクション多めの本であるだけでなく、(中略)人物造形に大きく重点を置いた物語でもある。
--マイクル・コナリー(「わたしが『ナイン・ドラゴンズ』を書いた理由(わけ)」より)
と帯に書かれているように、ハリー・ボッシュシリーズとしてはかなり大きなポイントとなる作品となっています。
ハリーを襲う運命の過酷さにも震える思いです。
また、確かにアクションも多く、いろいろと楽しみどころ、読みどころの多い作品です。

でもね、と否定的なことを書いてしまいますが、ミステリとして見た場合、ちょっとどうかな、と思いました。

まず、物語の根底に横たわる大きな大きな偶然の要素。
かなり致命的な偶然ではなかろうかと思います。
また、肝心の(?) 香港での捜索行があまりにもラッキー。さほど苦労せずに(強烈なアクションシーンはありますが)見つかります。
元FBI捜査官の妻やその恋人の用心棒が手伝ってくれるので徒手空拳ではありませんが、三十九時間という限られた時間で見つかってしまうというのは少々運が良すぎる、というものでしょう。

香港での捜索行は写真を手がかりに娘の居所を探し出すというものですが、遠い昔に読んだ草野唯雄の「見知らぬ顔の女」 (角川文庫)と同じ趣向だなぁ、と思いながら読んでいました(脱線しますが、「見知らぬ顔の女」は最初に発表された時のタイトルが「大東京午前二時」というらしく、なかなかかっこいいいな、改題しなけりゃよかったのにな、なんて思いました)。
おもしろい趣向なのですが、同時にこの部分、ものすごくボッシュ達が幸運にみえるところでもあります......ラボで分析するところはかなりわくわくしたんですが......香港に行ってからがねぇ。

ボッシュ達が運がいいといえば、ラストの犯人をおいつめる取り調べのシーンもそうです。

マイクル・コナリーの作品らしいジェットコースター・サスペンスで、ドキドキワクワクして読み進むことができ、とてもおもしろかったのですが、ミステリとしてはちょっとボッシュに運が味方をしすぎているのでちょっと残念です。


<蛇足1>
「なぜ百八ドルなんだ? 守料に税金を乗せているのか?」(上巻68ページ)
守料(もりりょう)がわかりませんでした。みかじめ料のことなんですね。

<蛇足2>
空港の入国審査のシーンで、係官を「審査員」(202ページ)と訳してありました。
確かに入国審査というのですから、係官は審査員でおかしくないのでしょうが、なんとなく違和感がありました。
日本での呼称を調べてみたら入国審査官と書いてありますから、員と官で印象が違う気もしますが、審査員で正しいのですね。


原題:The Scarecrow
作者:Michael Connelly
刊行:2009年
訳者:古沢嘉通



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