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はぶらし [日本の作家 近藤史恵]

はぶらし (幻冬舎文庫)

はぶらし (幻冬舎文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/10/09
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
脚本家として順調に生活する鈴音(36歳)が、高校時代の友達・水絵に突然呼び出された。子連れの水絵は離婚し、リストラに遭ったことを打ち明け、再就職先を決めるために一週間だけ泊めてほしいと泣きつく。鈴音は戸惑いつつも承諾し、共同生活を始めるが……。人は相手の願いをどこまで受け入れるべきなのか?  揺れ動く心理を描いた傑作サスペンス。


近藤史恵のこの作品、サスペンスフルではありますが、サスペンスというジャンル分けがふさわしいかどうかは甚だ疑問ですね。
また、ミステリ味はありません。

長らく音信不通だった高校時代の友人が子連れで家にやってくる、その顛末を描いた物語です。

友人・水絵の設定が、たとえばサイコパスとか病的、あるいは狂気というレベルではなく、単にずれているというレベルであるように描かれていて、その点が秀逸ですよね。
個人的には、普通と思えるレベルからは大きくはみ出している女性だな、と思いましたが、それでも異常者と言い切るほどのものではないと思いました。程度の差こそあれ、こういう人、結構いるんじゃないかな、なんて。
そして子供が一層問題を複雑にする。

タイトルである「はぶらし」というのは、その象徴的ともいえるエピソードからとられています。
転がり込んできた水絵母子に、歯ブラシを渡した鈴音。
翌日夜、新しいのを買ってきたから、と使った歯ブラシを返してくる水絵。(自分たちは)買ってきた新しいのを使っている、と......
ああ、(個人的には)これは理解を超えているなぁ、耐えられないなぁと思いました。こういう人と一緒にいたくはないですねぇ......
でも、こういう人いるな、とも思いました。
以前、なにかの折にお箸を忘れてきた人に、割り箸が余っているのであげたのですが、その人は、なんと(と思いました)洗ってその割り箸を返してこようとした、ということがあったので。
歯ブラシは、ラストでも、改めて印象的な登場をします。

タイトルはひらがなで「はぶらし」ですが、本文中の表記は「歯ブラシ」なんですよね。
この違いが何を意味するのかはちょっとわからないのですが......
でも、ひらがな表記と漢字+カタカナ表記では、受ける印象が違います。ひらがなの方がやわらかい。ひょっとすると、物語自体が激しい激突の連続ではなく、一つ一つは小さめの積み重ねがじわじわと効いてくることを表しているのかも、などと考えました。

水絵と鈴音の高校時代のエピソードや、水絵の息子・耕太をめぐるエピソードが効果的に配置されています。

ラスト近くで鈴音は大きな決断をするのですが(その内容はミステリでなくても伏せておくのが適当だと思うのでここでは書きません)、最終章でのフォローが見事だな、と思いました。
いろいろな議論、考え方はあると思うのですが、こういう決着があったのなら、鈴音の決断はよかったのかあ、と。


タグ:近藤史恵
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KINYAN

ご訪問ありがとうございます
by KINYAN (2019-10-27 20:23) 

31

KINYAN さん
ご訪問 & Nice! ありがとうございます!
by 31 (2019-11-03 00:50) 

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