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推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ [日本の作家 か行]

推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ (メディアワークス文庫)

推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 久住 四季
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/12/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
名探偵は推理作家の助手を好む?
 彼ほど個性的な人間にお目にかかったことはない。同居人の凛堂である。人目を惹く美貌ながら、生活破綻者。極めつけはその仕事で、難事件解決専門の探偵だと嘯くのだ。
 僕は駆け出しの推理作家だが、まさか本物の探偵に出会うとは。行動は自由奔放。奇妙な言動には唖然とさせられる。だがその驚愕の推理ときたら、とびきり最高なのだ。
 これは「事実は小説より奇なり」を地でいく話だ。なにせ小説家の僕が言うのだから間違いない。では僕の書く探偵物語。ご一読いただこう。


久住四季の作品を読むのは、「トリックスターズ」 (メディアワークス文庫)に次いで2作目です。
「トリックスターズ」 の感想は書けていませんが(手元の記録では2016年に読んでいます)、まずまずおもしろかったので、シリーズ外のも読んでみようと思って購入しました。

「ハートに火をつけて」
「折れ曲がった竹のごとく」
の2話収録です。

軽いタッチの作品ですが、いいな、と思ったのは、名探偵である凛堂が折々推理を披露してくれること。
名探偵物の定番といえば定番ですが、語り手との出会いのシーン(43ページくらいから)で、語り手の素性をビシビシ当てていくところなんか、ワクワクしますよね。少々乱暴な部分があってもOKです。
事件についても、細かな手がかりを組み合わせてするすると解いていくかたちとなっていまして、おもしろいですよ。

「ハートに火をつけて」は、僕が焼け出された火災事件の真相を解くもの。
「折れ曲がった竹のごとく」は、脅迫状騒ぎに続き、当の政治家が殺された事件の謎を解くもの。

論理の厳密さ、とか、堅牢な謎、とか、あるいは精緻なつじつま、とかいうレベルでは突っ込みどころ満載というか、ユルいところがどっさりあることはありますが、いいんです、いいんです。
このあたり、栗本薫が江戸川乱歩賞を「ぼくらの時代」 (新風舎文庫)で受賞した際の受賞の言葉を引用したかったのですが、ものが手元になくて引用できず残念です。

シリーズ化する気満々のラストですので(ちょっとあざとすぎる気がしますが)、続きにも期待しましょう!


<蛇足1>
「まあタイミングから鑑みて、今回は二の可能性が濃厚だろう。」(64ページ)
「凛堂の兄--柳一郎氏の影響を鑑みたのだろうか。」(200ページ)
「殺人事件という社会的重大性を鑑みて」(254ページ)
機械的に(!) 毎回あげつらいますが「鑑みて」と「考えて」は違う単語なので、意識してちゃんと使ってほしいです。特に小説家の皆様。殊に本書のようにヤングアダルト向けの叢書から出す作家の場合は。
それにしても、300ページにも満たない本のなかで、3度も出てくるとは......

<蛇足2>
「……私はずっと、先生の生き様に憧れてきました」(211ページ)
これも、気になりますね。
「生き様」というのは最近ではいい意味としても使われることが多くなっては来ておりますが、本来良い意味では使わず、他人について使うことは差し控えるべき表現なので、憧れの対象に使うのは相当程度の激しい誤用かと思います。

<蛇足3>
「松本清張がお好きとのことでしたが、本格の素養も充分おありです」(264ページ)
松本清張は社会派として知られていますから、世間一般の認識はこういう感じなのかな、とも思いますが、松本清張の作品、かなりトリッキーなものが数多くあるように思っています。
たとえば社会派の名作「砂の器」(上) (下) (新潮文庫)にはすごいトリックが投入されていますし、そのトリックは本格派もびっくりのものだったと思います。(むしろバカミスの領域かもしれませんが......)

<蛇足4>
帯に
「推理小説の作り方わかります。」
と書いてあるのですが、推理作家である僕、月瀬純は、実際に遭遇した事件、凛堂星史郎が解決した事件を書いていくパターンとなっていますので、この作品を読んでも推理小説の作り方はわからないと思うのですが。看板に偽りあり、です。
(当然のことながら、帯の問題なので、作者である久住四季のせいではありませんが)



タグ:久住四季
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