SSブログ

ゼロの激震 [日本の作家 あ行]

ゼロの激震 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ゼロの激震 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 安生 正
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/06/24
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
不可思議な大規模災害が頻発する北関東。そんな折、元大手建設会社で技術者だった木龍のもとに奥立という男が現れる。すべてはマグマ活動にともなう火山性事象が原因であり、これ以上の被害を阻止すべく木龍の力を借りたいという。やがてマグマは東京へと南下していく。このままでは関東が壊滅、日本が滅んでしまう――。未曾有の危機にゼネコン技術者たちが挑む、パニックサスペンス。


「生存者ゼロ」 (宝島社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)の作者安生正の長編第三作です。(ちなみに、「生存者ゼロ」感想ページは、このブログのアクセス数ダントツ一位です。)
間に「ゼロの迎撃」 (宝島社文庫)が挟まっていて既読ですが、感想を書けていません(こんなのばっかりですね......)。

この種のディザスターもの大好きなので、この本もとてもとても楽しんで読みました。
壊滅しちゃう地域にお住いの方々、すみません......
災害シーン、いろいろとバリエーションがあって、すごいですね。

序章は、東京湾の人工島から地下五十キロのマントル層を目指す工事現場での事故です。
後でこの現場は、「東京湾第一発電所」の建設現場だったことがわかります。
この発電所がすごいですよ。名付けてバベルシステム(縁起の良くない名前ですけどね)という地熱発電所。マントル層の熱を利用する、というなんか壮大な発電所です。(技術的に可能なんでしょうかね?)

一方で群馬県、栃木県など北関東で火山性の災害が多発。
地下でマグマがおかしな(危険な)動きをしている。

地震や噴火のメカニズムがややうるさいくらいになされますが、これが意外と楽しい。
正直、理解できたかどうか疑わしいですが、それでも楽しかったですね。ワクワクします。
この大災害が、人災だ、という流れになっていくのですが、そしてそれは大方の予想通り、バベルプロジェクトが関係しているのですが、だからこそということなのか、この作品は災害に土木で対抗する、という気宇壮大なコンセプトの作品になっています。
(まったくの素人ゆえ)真偽のほども定かではありませんが、なので、この部分必須ですよね。

「よい設計者とは壊れ方を知っている設計者だ。どんな構造物であれ、それがどう壊れるかを知らない者に設計などできるわけがない」(94ページ)
「技術は人を選ぶ。勤勉、真摯、謙虚、そして器の大きさ。どれ一つ欠けても人の命を預かる資格はない。売名、不遜、おごり。どれか一つでも心に潜んでいれば技術は人を裏切る」(95ページ)
というのは主人公木龍が後輩である技術者設楽に語る内容ですが、いろいろ考えどころのセリフですね。

458ページからの最終章で災害を振り返るのですが、その風景にはあっけにとられます。
それまでにさんざん災害シーンが出てきているのですが、それでもこのラストの壮大さにはびっくりです。それくらいすさまじい災害です。
さて、本当に土木でこの規模の災害に対抗できるのか(対抗したからこそ、この規模で済んだ、ということなのかもしれませんが)、犠牲者十五万人程度で収まるのか(この規模だと二次災害というのか、海外にも大きな大きな影響が出ると思われます)、疑問は尽きないラストになっていますが、個人的にはこれだけ楽しませてもらえば大満足です。
災害規模の見積もりが甘いと思われるラストも、希望を残したということで物語的にはOKかと思います。

巻末の<主要参考文献>に、石黒耀の「死都日本」 (講談社文庫)が挙げてあって、おもわずニヤリとしました。

この本に関し、すごく面白いなと思ったブログにリンクを貼ります。勝手リンクです。
「『ゼロの激震』 安生正」Heaven or Hell?


<蛇足>
「人が死んでいく。こんなことで人が死んでいくのだ。」(219ページ)
という感想を漏らすシーンがあるのですが、「こんなこと」ではないと思いましたが......
この段階では、この災害の原因(遠因?)が人であることは明らかになっていませんが、匂わされてはいるのでそのことを先取りした感想でしょうか?
それにしては比較で語られるのが、一九九五年の阪神・淡路大震災、二〇一一年の東日本大震災なんですよね。
「十六年というタイムスパンは、地質学的にみれば一瞬だ。この国は神が瞬きしている間に何度も災害が起きる国なのだ。」(220ページ)
というのは、まったくその通りだと思いますが。
ちょっとあれっと思いました。


<2019.11.05>
昔の記事をコピーしてそれをベースに書いていたのですが、昔の記事が残ってしまっていました。
すみません。
削除しました。



タグ:安生正
nice!(19)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 19

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。