IQ [海外の作家 あ行]
<カバー裏あらすじ>
ロサンゼルスに住む黒人青年アイゼイアは “IQ” と呼ばれる探偵だ。ある事情から大金が必要になった彼は腐れ縁の相棒の口利きで大物ラッパーから仕事を請け負うことに。だがそれは「謎の巨犬を使う殺し屋を探し出せ」という異様なものだった! 奇妙な事件の謎を全力で追うIQ。そんな彼が探偵として生きる契機となった凄絶な過去とは――。新たなる“シャーロック・ホームズ”の誕生と活躍を描く、新人賞三冠受賞作!
帯にアンソニー賞、シェイマス賞、マカヴィティ賞受賞とあり、ミステリ新人賞を総なめにした話題作、と書かれています。
また、2018年週刊文春ミステリーベスト10第4位、「このミステリーがすごい! 2019年版」第3位です。
そして「新たなる“シャーロック・ホームズ”の誕生」@あらすじ。
正直、期待しすぎましたね。シャーロック・ホームズが引き合いに出されているのが信じられない。
きわめて普通のハードボイルドではないですか、これ。そんなに新しさも感じません。
IQというから、なにかあるのか、あるいは頭がいいことを誇示しているのかと思ったら、アイゼイア・クィンターベイのイニシャルってだけだし。
もっともこれらはこの作品の罪ではなく、周りの勝手な煽りのせいなので、割り引いて考えなければなりませんね。
シャーロック・ホームズさえ引き合いにだしていなければこういう感想はなかったかな?
はい、普通のハードボイルドとして楽しく読めましたよ。
不幸な育ちの黒人青年の背伸びを描いてもいる。その分も楽しい。
それ以上でも、それ以下でもない気がしました。
まず、原文がそうなのか、あるいは翻訳のせいなのかはわかりませんが、文章にあまり馴染めませんでした。相性が悪かったのでしょう。
またミステリ部分も、サプライズがない、というのは欠点として挙げておかねばならないと思います。
こういってはなんですが、ただだらだらと事件が解けていく感じ。犯人サイドも余計なことしすぎでしょう。
ハードボイルドの傑作群は、ミステリとしてきちんとサプライズがあるものですが......
一方で、卑しき街を行く探偵、ということで、不幸な育ちの黒人青年IQの背伸びはとても楽しい。
「自分たちがNではじまる言葉を使うのはいいのに、わたしのような人が使っちゃいけないのはなぜですか?」
「ニガにニガといわれたら、どういうつもりでニガといったのかはわかる。だが、あんたにニガといわれたら、心から“ニガ”といってるかもしれねえだろ」(350ページ)
なんて、おやっと思える会話もあちこちに忍ばせてあります。
映画化するといいのでは? と思ったりしましたが、どうなんでしょうか?
シリーズ化しているようですが、さて、次作「IQ2」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)を読んだものかどうか......
最後に、カバーかっこいいなと思いました。
次作のカバーもよさげですね。
<蛇足1>
「ビギーは本物のギャングスタ(OG)で、先駆者だ。」(99ページ)
本物のギャングスタにOGと振ってあります。
OG=Original Gangstaらしいです。知りませんでした。
<蛇足2>
「すぐ上に長方形の家(ケープコッド)の二階部分が見える。」(103ページ)
「長方形の家」にケープコッドとルビが振ってあります。
ケープコッドスタイルの建物って、長方形と呼ぶような形でしたっけ?
屋根の部分を考えると、あまり長方形というのはふさわしくないような気がしますが......
おうちの形といえば、このホームページがステキですね。(いつもながら勝手リンクです)
原題:IQ
作者:Joe Ide
刊行:2016年
訳者:熊谷千寿
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