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新車のなかの女 [海外の作家 さ行]


新車のなかの女【新訳版】 (創元推理文庫)

新車のなかの女【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: セバスチアン・ジャプリゾ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
金髪のダニーは、社長の新車を空港から社長宅まで回送するよう頼まれた。しかし彼女は南仏への旅を思いつく。真新しいサンダーバードを走らせるダニーの姿は、束の間、女王のようだった。しかし思いも寄らぬ事件が彼女を待ち受けていた。なぜ彼女は襲われたのか? 初めての地で皆が彼女を知っているのはなぜか? 気まぐれの旅にしかけられた恐るべき罠。鬼才ジャプリゾの真骨頂。


「シンデレラの罠」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)のセバスチャン・ジャプリゾの作品です。
こちらも、平岡敦さんによる新訳です。
旧訳は「新車の中の女」 (創元推理文庫)、新訳は漢字を開いて「新車のなかの女」と表記が変わっています。
この作品「シンデレラの罠」 同様に再読になります。
きれいに忘れてしまっていて、初読のようにまっさらな気持ちで楽しめました(苦笑)。

「シンデレラの罠」 と趣は違うのですが、何か独特な手触りの作品ですね。セバスチャン・ジャプリゾの術中にしっかり嵌まっているということでしょう。

原題は「La Dame dans L'auto avec des Lunettes et un Fusil」
英語では、The Lady in the Car with Glasses and a Gun。
直訳すると「眼鏡と銃を持った、車の中の女」となりますね。
目次の章立てを見ると


眼鏡

となっています。ちょっと洒落ていますね。

冒頭、いきなりサービスステーションの洗面所で襲われているシーンからスタートします。
おお、怖い。
それからここにに至るまでの経緯を振り返るわけです。
社長の車を勝手に拝借して、海が見たいと小旅行としゃれこんだ女性が、行く先々で不思議な体験+怖い体験をする。
初めて行った場所ばかりなのに、出会う人々が、昨日会ったと言う。

これ、怖いですよねぇ。
洗面所で襲われるというのも怖いですが、知らないはずの場所で、みんなから知っている人だと言われる、というのは。
主人公がもともと自分に自信がなく、ひょっとして私...と惑い始めるところは、おいおい、と思いましたが、次第に精神状態がグラグラしていくのがサスペンスを高めていますね。

ときおり、主人公の視点ではなくて、主人公が出会う人たちの方に視点が移りますので、その人たちが偽証しているわけではないことがわかりますし、同時に、主人公が自分を見失っているだけなのかも、という不安も芽生えてきます。

ミステリとして、冷静に見てみると、ちょっとこれは無理だなぁ、と思えるのですが、登場人物の性格や小道具によって、(主人公にとって)悪夢のような状況が立ち上がってくるのが素敵ですね。

平岡敦による訳者あとがき、連城三紀彦による解説がどちらも素晴らしいので、ぜひ。


原題:La Dame dans L'auto avec des Lunettes et un Fusil
作者:Sebastien Japrisot
刊行:1966年
訳者:平岡敦

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