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ソウル・コレクター [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]

ソウル・コレクター 上 (文春文庫)ソウル・コレクター 下 (文春文庫)ソウル・コレクター 下 (文春文庫)
  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
リンカーン・ライムのいとこアーサーが殺人容疑で逮捕された。アーサーは一貫して無実を主張するも、犯行現場や自宅から多数の証拠がみつかり有罪は確定的にみえた。だがライムは不審に思う――証拠が揃い過ぎている。アーサーは濡れ衣を着せられたのでは?そう睨んだライムは、サックスらとともに独自の捜査を開始する! <上巻>
殺人容疑で逮捕されたいとこを無実とみたライムは、冤罪と思しき同様の事件の発生を突き止める。共通の手掛りが示したのは、膨大な情報を操る犯人像。真相を究明すべく、ライムのチームは世界最大のデータマイニング会社に乗り込むが――。データ社会がもたらす闇と戦慄を描く傑作! 巻末に著者と児玉清氏の対談を特別収録。<下巻>

リンカーン・ライムシリーズ第8作です。
「このミステリーがすごい! 2010年版」 第5位、かつ、週刊文春ミステリーベスト10 第3位。

今回の敵は、コンピューター社会、データ社会を突いた犯人です。
「千兆(ペタ)バイトの闇にひそむもっとも卑劣な殺人鬼」
「盗まれる個人情報 改竄されるデータ 知らぬ間に、罪を着せられる――恐怖」
と文庫本上下巻それぞれの帯に書かれています。
SSD(ストラテジック・システムズ・データコープ)社というニューヨーク市周辺に本社を置くデーターマイナーがキーとなって登場します。

本当にこのレベルまで個人情報が集められてしまっているでしょうか?
ちょっと非現実的な気もしますが、一方で、アップルやグーグルなどならやっていてもおかしくないかな、とも思ったりもするところがポイントなのかもしれませんね。
原題は「The Broken Window」で、いわゆる割れ窓理論に基づいたものですが、SSD社の(創業者の)理念と結びついているわけですね。
(タイトルといえば、訳者あとがきに、日本のタイトルも、ディーヴァーが候補をくれた、と書いてあったのですが、おもしろい、というか不思議でしたね。)

そしてそのデータを犯人に悪用されてしまう。
文字通り、人生を滅茶苦茶にされてしまう整形外科医とか出てきて、哀れでなりません。殺されはしないのですが。
おもしろいなと思ったのは、犯人の設定ですね。ちょっぴり無理筋な設定に思えるのですが。
とはいえ、犯人が繰り出してくる攻撃は迫力十分で、ハラハラ、ドキドキ。

気になったのは、ライムがイギリスの当局と協調して行っている殺し屋捕獲のエピソード。
これ、いらなくないですか??
シリーズとして追いかけていきたい、ということなのでしょうけれども、物語のモメンタムを削いでしまっているような気がしてなりません。

最後に、児玉清さんとディーヴァーの対談が収録されているのもポイント高いですね。
ミステリの目利きでもいらっしゃった児玉さんが、引き出し多くいろいろと聞き出されているのがおもしろい、というか、すごい、ですね。

<蛇足1>
「彼らはのんきなアンテロープみたいに」(上巻82ページ)
アンテロープ? 調べると、レイヨウ(羚羊)のことなんですね。今ではレイヨウと言わずに、アンテロープと言うのでしょうか?

<蛇足2>
「通りを歩きながら、周囲のシックスティーンたちを観察する」(上巻134ページ)
何の説明もなく、いきなりシックスティーンと出てきて戸惑いました。
シックスティーン? 16?
16歳の人たちを指しているのではなさそうだし、普通の一般の人たちを指しているようなのだけれど......と思っていたら、
「シックスティーン……人間を指してそう呼ぶのは、もちろん、私だけではない。ほかにも大勢いる。この業界では一般的な用語だ。」(上巻134ページ)
という説明が出て来ます。
「十六桁の番号は、名前よりもよほど明快で効率的だ。」(上巻135ページ)
なるほど。アメリカですから、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーのことでしょうね。

<蛇足3>
囚われたライムのいとこが、刑務所?の中で交わす会話で言われるセリフが光っていました。
「あんた、ものを買ったんだろ。万引きすりゃよかったんだよ。そしてら、何買ったか、ばれようがねえじゃん。」(上巻377ページ)
確かに。完璧な答えです......(監視カメラがとらえているかもしれませんが)

<蛇足4>
「アメリア・サックスはマンハッタンに戻っていた。やかましいわりにレスポンスの悪い日本製エンジンに、いらいらが募る。
 まるで製氷機みたい音だ。ついでに馬力も製氷機程度しかない。」(下巻246ページ)
ジェフリー・ディーヴァー、日本に何か恨みがあるのでしょうか?

<蛇足5>
犯人の視点のシーンで、
「私は縁起の悪いナンバー3だった」(下巻275ページ)
というのがあります。3って縁起が悪いのですか?
犯人特有のジンクスのようなものがあって、読んだのに忘れてしまっているのかな?



原題:The Broken Window
作者:Jeffery Deaver
刊行:2008年
翻訳:池田真紀子

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