江戸川乱歩賞 マイベスト [その他]
先日、
斉藤詠一「到達不能極」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
神護かずみ「ノワールをまとう女」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
を続けて読んだ際、受賞作なしのときもあれば、二作同時受賞のときもあるので気になって、巻末に掲げてある受賞リストを数えてみました。
第3回の仁木悦子「猫は知っていた」 (ポプラ文庫ピュアフル)から最新である第64回「ノワールをまとう女」まで、ちょうど50作でした。
切りのいい数字ですね。
せっかくなので(?) 、全部読んでいることもあり、マイベスト10を選んでみようと思いました。
あくまで、マイベストです。偏愛のベスト10ですので、お気をつけて(?).。
また大抵の作品は、面白かったなぁ~という感想になってしまうので、ここでつけた順位もまたすぐに変わってしまうかもしれません......
受賞年順です。
それにしても、書影をつけようと思って今回改めて認識したのですが、乱歩賞受賞作、かなり絶版・品切れなんですね。
講談社から文庫版の江戸川乱歩賞全集が出たので、これで安心できるかな、と思っていたのですが、その全集すら品切......
面白い作品が多いので、もったいないですね。
1. 第8回(1962年)戸川昌子「大いなる幻影」(品切)
「孤独な老嬢たちが住む女子アパート。突如始まったアパート移動工事と同時に奇怪な事件が続発。老嬢たちの過去も次第に暴かれていく。」と短い紹介分がAmazonのページには書かれていましたが、これでは魅力が伝わらないですよね。
なんと言ったらいいのでしょうね? 非常に独特の作風で、断章っぽく感じられるエピソードが読者にきっちりつながって絵が見えるようになる仕組みになっていまして、薄い作品なんですが巧みに織り上げられているなぁ、とびっくりします。
2. 第13回(1967年)海渡英祐「伯林-一八八八年」(品切)
「ドイツ娘との恋に煩悶する留学中の医学生・森鴎外が伯爵殺害事件に遭遇、究明に乗り出す。事件の背後には鉄血宰相ビスマルクが!?」
若き森鴎外、森林太郎がビスマルクと推理合戦、という趣向がたまらなくて、密室のトリックはつまらないといってもよい仕上がりなのに、何度も読み返した作品です。
犯人の設定も当時斬新だったんだろな、と。子供ごころにとてもびっくりしました。
ラストの余韻も気に入っています。
3. 第16回(1970年)大谷羊太郎「殺意の演奏」(品切)
「芸能ショーの人気司会者が自室で死体となって発見された。残された暗号日記は遺書なのか、それとも? 芸能界の陰影と密室の謎に挑む。」
これまたAmazonの紹介文では魅力が伝わりませんね。
この作品、なんと解決が二通りあるんです! ちょっと生硬な感じのする文章もトリックも、この趣向のために気になりません。むしろ気負いが感じられて心地よいくらい。
最近では、下村敦史さんが何度も乱歩賞に挑戦しようやく受賞とかいって騒がれていましたが、大谷羊太郎も同様に何度もチャレンジして受賞に至った作家のようです。
密室に意欲を燃やしていた作家で、密室トリックがあれば立派なミステリが書けるという美しい誤解に依拠した作家だったのでは、と今となっては思いますが、初期作は文庫化されたらがんばって読んでいましたね。
4. 第21回(1975年)日下圭介「蝶たちは今……」(品切)
「旅先で間違えたバッグの中には1通の手紙が。だが差出人は3年前に死んでおり受取人も故人!? 死者同士で交された手紙の真実とは?──」
独特の雰囲気をたたえた作品で、フレンチ・ミステリー風と評されていたのを覚えています。後年普通の刑事もの、探偵ものを書くようになってしまいましたが、当時の日下圭介の作品はいずれもすこし渇いた感じのする、日常と地続きながらどことなく現実感がずれた感じの魅力がいっぱいでした。
どこか復刊しないかな?
あと、細かいですが、タイトルの三点リーダは2つ重ねるのが正しいはずです。
「蝶たちは今……」であって、「蝶たちは今…」ではない。江戸川乱歩賞全集のものは、「蝶たちは今…」になってしまっていますね。
日下圭介の乱歩賞受賞後長編第1作が「悪夢は三度見る」 (講談社文庫)で、第2作が「折鶴が知った…」 (光文社文庫)。この三点リーダは1つだけなんですね。ここまでタイトルが7文字になるようにされていたのでは? という指摘が新保博久の「世紀末日本推理小説事情」 (ちくまライブラリー)でなされていまして、おもしろいなぁ、と思った記憶があります。
5. 第24回(1978年)栗本薫「ぼくらの時代」(品切)
「バイト先のTV局で起こった女子高校生連続殺人事件の解決に挑む大学生3人組。シラケ世代とミーハー族の心の断面をえぐる青春推理」
世代的には栗本薫は上の人になりますが、それでもこの作品に描かれた若者像には、共感を覚えたことが強く印象に残っています。
また、若い文章で生き生きとえがかれたミステリに夢中になったのを覚えています。
講談社の昔のフェアで、サイン入り文庫本が当たったのも、いい思い出ですね。
この作品も何度読み返したかわかりません。
6. 第26回(1980年)井沢元彦「猿丸幻視行」(品切)
「古歌の暗号解読に取り組む若き日の折口信夫。猿丸大夫と柿本人麻呂の関係は? “いろは歌”に隠された秘密とは? 伝記暗号推理の最高傑作。」
まさに偏愛といってもいい作品です。
すごくわくわくして読んだのを覚えています。作者が後から拵えたのではなく、すでに世にある古歌で暗号が出来上がるというすごさに夢中になりました。
おまけのような現実の殺人事件のトリックが、おいおいと言いたくなるような代物ですが、そこも含めて愛しています。
この本のおかげで、子どものころ、百人一首ではかならず「奥山に~」を取るようになりました。というか、全体の勝ち負けには関係なく、この猿丸太夫の札だけとれれば満足でした......
講談社文庫のの乱歩賞受賞作全集、「ぼくらの時代」と「猿丸幻視行」のカップリングなんですね。なんて贅沢な。
7. 第28回(1982年)岡嶋二人「焦茶色のパステル」
「東北の牧場で牧場長と競馬評論家が殺され、サラブレッドの母子も撃たれた。背後に、競馬界を揺るがす陰謀が!?」
この本、単行本が出たばかりのころ、病気で学校を休んで寝込んでいたときに、親がなぜかプレゼントと言って買ってきてくれたのです。うれしかったことと言ったら......(変な子どもだ)
まさにページターナーだな、と思ったことを覚えています。文字通り夢中になって読みました。
とても難解な題材を扱っていると思うのですが、非常にすっきりと説明されていて、衝撃の真相も分かりやすかったですね。
ツイストの効いた名作だと思います。品切になっていないのも素晴らしい!
8. 第31回(1985年)森雅裕「モーツァルトは子守唄を歌わない」(品切)
「モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、楽譜屋は奇怪な死に様をさらす―。その陰に策動するウィーン宮廷、フリーメーソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チェルニー師弟は子守唄が秘めたメッセージを解読。1791年の楽聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。」
コミックミステリ、とか言われたりしていましたが、ベートーヴェンがモーツァルトの死の謎を解くというとても斬新でしっかりしたミステリでした。
講談社文庫のカバー絵が魔夜峰央でしたね。
森雅裕さん、すっかり消えてしまっていますが、どこか復刊してくれるといいのにな、と思っています。一時期ある程度復刊がされたのですが、今またなにも手に入らないようになってしまっていますね。
9. 第47回(2001年)高野和明「13階段」
「犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。」
ようやく平成、ようやく21世紀の作品になります。
ミステリの枠にとどまりつつ、エンターテイメントを強く意識した作品だなぁ、と感心したことを思い出します。
どんでん返しへの執念(?) が心地よかったです。
久しぶりに乱歩賞で「(そこそこ、あるいは、普通に)おもしろかったね」というレベルを超える作品に出会えたなあと。
10. 第60回(2014年)下村敦史「闇に香る嘘」
「孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された村上和久は、兄の竜彦を頼る。しかし、移植どころか検査さえ拒絶する竜彦に疑念を抱く。目の前の男は実の兄なのか。27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。」
(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
なんだか、古い作品が多くなってしまいました。
昔読んだ作品の方が印象が強いからでしょうね......刷り込み?
普通乱歩賞で傑作、ベストといったら、こちら ↓ になると思います。
第41回(1996年)藤原伊織「テロリストのパラソル」
「アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそりと暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た事実とは……。」
この作品は、さすがの乱歩賞&直木賞W受賞作だけあって、いまでも手に入りますね。
講談社文庫だけでなく、文春文庫でも出ているようです。
おもしろく読みましたが、偏愛のベスト10には入らない......
きわめて典型的なハードボイルドで、それ以上でもそれ以下でもない。全共闘世代向けハーレクインロマンスとか言う人もいるようですね(笑)。
世代がずれているので、かえって醒めちゃうからかもしれません。
でも文章の心地よさはすごかったです。
こうやって並べると、変な作品が好きなんですね、と言われそうな......
斉藤詠一「到達不能極」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
神護かずみ「ノワールをまとう女」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
を続けて読んだ際、受賞作なしのときもあれば、二作同時受賞のときもあるので気になって、巻末に掲げてある受賞リストを数えてみました。
第3回の仁木悦子「猫は知っていた」 (ポプラ文庫ピュアフル)から最新である第64回「ノワールをまとう女」まで、ちょうど50作でした。
切りのいい数字ですね。
せっかくなので(?) 、全部読んでいることもあり、マイベスト10を選んでみようと思いました。
あくまで、マイベストです。偏愛のベスト10ですので、お気をつけて(?).。
また大抵の作品は、面白かったなぁ~という感想になってしまうので、ここでつけた順位もまたすぐに変わってしまうかもしれません......
受賞年順です。
それにしても、書影をつけようと思って今回改めて認識したのですが、乱歩賞受賞作、かなり絶版・品切れなんですね。
講談社から文庫版の江戸川乱歩賞全集が出たので、これで安心できるかな、と思っていたのですが、その全集すら品切......
面白い作品が多いので、もったいないですね。
1. 第8回(1962年)戸川昌子「大いなる幻影」(品切)
江戸川乱歩賞全集(4)大いなる幻影 華やかな死体 (講談社文庫)
- 作者: 戸川 昌子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/09/14
- メディア: 文庫
「孤独な老嬢たちが住む女子アパート。突如始まったアパート移動工事と同時に奇怪な事件が続発。老嬢たちの過去も次第に暴かれていく。」と短い紹介分がAmazonのページには書かれていましたが、これでは魅力が伝わらないですよね。
なんと言ったらいいのでしょうね? 非常に独特の作風で、断章っぽく感じられるエピソードが読者にきっちりつながって絵が見えるようになる仕組みになっていまして、薄い作品なんですが巧みに織り上げられているなぁ、とびっくりします。
2. 第13回(1967年)海渡英祐「伯林-一八八八年」(品切)
江戸川乱歩賞全集(7)伯林-一八八八年 高層の死角 (講談社文庫)
- 作者: 海渡 英祐
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/09/14
- メディア: 文庫
「ドイツ娘との恋に煩悶する留学中の医学生・森鴎外が伯爵殺害事件に遭遇、究明に乗り出す。事件の背後には鉄血宰相ビスマルクが!?」
若き森鴎外、森林太郎がビスマルクと推理合戦、という趣向がたまらなくて、密室のトリックはつまらないといってもよい仕上がりなのに、何度も読み返した作品です。
犯人の設定も当時斬新だったんだろな、と。子供ごころにとてもびっくりしました。
ラストの余韻も気に入っています。
3. 第16回(1970年)大谷羊太郎「殺意の演奏」(品切)
「芸能ショーの人気司会者が自室で死体となって発見された。残された暗号日記は遺書なのか、それとも? 芸能界の陰影と密室の謎に挑む。」
これまたAmazonの紹介文では魅力が伝わりませんね。
この作品、なんと解決が二通りあるんです! ちょっと生硬な感じのする文章もトリックも、この趣向のために気になりません。むしろ気負いが感じられて心地よいくらい。
最近では、下村敦史さんが何度も乱歩賞に挑戦しようやく受賞とかいって騒がれていましたが、大谷羊太郎も同様に何度もチャレンジして受賞に至った作家のようです。
密室に意欲を燃やしていた作家で、密室トリックがあれば立派なミステリが書けるという美しい誤解に依拠した作家だったのでは、と今となっては思いますが、初期作は文庫化されたらがんばって読んでいましたね。
4. 第21回(1975年)日下圭介「蝶たちは今……」(品切)
江戸川乱歩賞全集(10)蝶たちは今… 五十万年の死角 (講談社文庫)
- 作者: 日下 圭介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/09/13
- メディア: 文庫
「旅先で間違えたバッグの中には1通の手紙が。だが差出人は3年前に死んでおり受取人も故人!? 死者同士で交された手紙の真実とは?──」
独特の雰囲気をたたえた作品で、フレンチ・ミステリー風と評されていたのを覚えています。後年普通の刑事もの、探偵ものを書くようになってしまいましたが、当時の日下圭介の作品はいずれもすこし渇いた感じのする、日常と地続きながらどことなく現実感がずれた感じの魅力がいっぱいでした。
どこか復刊しないかな?
あと、細かいですが、タイトルの三点リーダは2つ重ねるのが正しいはずです。
「蝶たちは今……」であって、「蝶たちは今…」ではない。江戸川乱歩賞全集のものは、「蝶たちは今…」になってしまっていますね。
日下圭介の乱歩賞受賞後長編第1作が「悪夢は三度見る」 (講談社文庫)で、第2作が「折鶴が知った…」 (光文社文庫)。この三点リーダは1つだけなんですね。ここまでタイトルが7文字になるようにされていたのでは? という指摘が新保博久の「世紀末日本推理小説事情」 (ちくまライブラリー)でなされていまして、おもしろいなぁ、と思った記憶があります。
5. 第24回(1978年)栗本薫「ぼくらの時代」(品切)
江戸川乱歩賞全集(12)ぼくらの時代 猿丸幻視行 (講談社文庫)
- 作者: 栗本 薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/09/14
- メディア: 文庫
「バイト先のTV局で起こった女子高校生連続殺人事件の解決に挑む大学生3人組。シラケ世代とミーハー族の心の断面をえぐる青春推理」
世代的には栗本薫は上の人になりますが、それでもこの作品に描かれた若者像には、共感を覚えたことが強く印象に残っています。
また、若い文章で生き生きとえがかれたミステリに夢中になったのを覚えています。
講談社の昔のフェアで、サイン入り文庫本が当たったのも、いい思い出ですね。
この作品も何度読み返したかわかりません。
6. 第26回(1980年)井沢元彦「猿丸幻視行」(品切)
江戸川乱歩賞全集(12)ぼくらの時代 猿丸幻視行 (講談社文庫)
- 作者: 栗本 薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/09/14
- メディア: 文庫
「古歌の暗号解読に取り組む若き日の折口信夫。猿丸大夫と柿本人麻呂の関係は? “いろは歌”に隠された秘密とは? 伝記暗号推理の最高傑作。」
まさに偏愛といってもいい作品です。
すごくわくわくして読んだのを覚えています。作者が後から拵えたのではなく、すでに世にある古歌で暗号が出来上がるというすごさに夢中になりました。
おまけのような現実の殺人事件のトリックが、おいおいと言いたくなるような代物ですが、そこも含めて愛しています。
この本のおかげで、子どものころ、百人一首ではかならず「奥山に~」を取るようになりました。というか、全体の勝ち負けには関係なく、この猿丸太夫の札だけとれれば満足でした......
講談社文庫のの乱歩賞受賞作全集、「ぼくらの時代」と「猿丸幻視行」のカップリングなんですね。なんて贅沢な。
7. 第28回(1982年)岡嶋二人「焦茶色のパステル」
「東北の牧場で牧場長と競馬評論家が殺され、サラブレッドの母子も撃たれた。背後に、競馬界を揺るがす陰謀が!?」
この本、単行本が出たばかりのころ、病気で学校を休んで寝込んでいたときに、親がなぜかプレゼントと言って買ってきてくれたのです。うれしかったことと言ったら......(変な子どもだ)
まさにページターナーだな、と思ったことを覚えています。文字通り夢中になって読みました。
とても難解な題材を扱っていると思うのですが、非常にすっきりと説明されていて、衝撃の真相も分かりやすかったですね。
ツイストの効いた名作だと思います。品切になっていないのも素晴らしい!
8. 第31回(1985年)森雅裕「モーツァルトは子守唄を歌わない」(品切)
「モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、楽譜屋は奇怪な死に様をさらす―。その陰に策動するウィーン宮廷、フリーメーソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チェルニー師弟は子守唄が秘めたメッセージを解読。1791年の楽聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。」
コミックミステリ、とか言われたりしていましたが、ベートーヴェンがモーツァルトの死の謎を解くというとても斬新でしっかりしたミステリでした。
講談社文庫のカバー絵が魔夜峰央でしたね。
森雅裕さん、すっかり消えてしまっていますが、どこか復刊してくれるといいのにな、と思っています。一時期ある程度復刊がされたのですが、今またなにも手に入らないようになってしまっていますね。
9. 第47回(2001年)高野和明「13階段」
「犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。」
ようやく平成、ようやく21世紀の作品になります。
ミステリの枠にとどまりつつ、エンターテイメントを強く意識した作品だなぁ、と感心したことを思い出します。
どんでん返しへの執念(?) が心地よかったです。
久しぶりに乱歩賞で「(そこそこ、あるいは、普通に)おもしろかったね」というレベルを超える作品に出会えたなあと。
10. 第60回(2014年)下村敦史「闇に香る嘘」
「孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された村上和久は、兄の竜彦を頼る。しかし、移植どころか検査さえ拒絶する竜彦に疑念を抱く。目の前の男は実の兄なのか。27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。」
(ブログの感想ページへのリンクはこちら)
なんだか、古い作品が多くなってしまいました。
昔読んだ作品の方が印象が強いからでしょうね......刷り込み?
普通乱歩賞で傑作、ベストといったら、こちら ↓ になると思います。
第41回(1996年)藤原伊織「テロリストのパラソル」
「アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し20年以上もひっそりと暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た事実とは……。」
この作品は、さすがの乱歩賞&直木賞W受賞作だけあって、いまでも手に入りますね。
講談社文庫だけでなく、文春文庫でも出ているようです。
おもしろく読みましたが、偏愛のベスト10には入らない......
きわめて典型的なハードボイルドで、それ以上でもそれ以下でもない。全共闘世代向けハーレクインロマンスとか言う人もいるようですね(笑)。
世代がずれているので、かえって醒めちゃうからかもしれません。
でも文章の心地よさはすごかったです。
こうやって並べると、変な作品が好きなんですね、と言われそうな......
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