SSブログ

黒いアリバイ [海外の作家 あ行]


黒いアリバイ (創元推理文庫)

黒いアリバイ (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/02/02
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
女優の旅興行の宣伝のため連れてこられた黒豹が、衆人環視のなか逃げ出して姿をくらました。やがて、ずたずたに引き裂かれた娘の死骸がひとつ、またひとつ--。美しい犠牲者を求めて彷徨する黒い獣を追って警察は奔走するが、その行方は杳として知れない。だが本件の示すあまりに残虐な獣性に、ある疑惑が浮かび……。サスペンスの巨匠による《ブラック》ものを代表する傑作!


創元推理文庫の2018年の復刊フェアのうちの1冊です。
これ、かなり風変わりな作品でしたね。
発表当時はかなりセンセーショナルだったのではないでしょうか?
なにしろ黒豹に襲われて殺される、というのですから。

あらすじにも書かれていますが、興行の宣伝のために黒豹を街中に連れていく、などというのは正気の沙汰ではありませんが、舞台となっている南米の架空の都市シューダ・レアルの猥雑さには合っている、ということでしょうか?
思いついた女優のマネージャーであるマニングのバカッ、という感じが強いですね。
第一章で黒豹が逃げ、第二章から第五章まで順に被害者の視点で描かれます。
これが、非常にサスペンスフルですね。
ああ、この娘(女性)も無残に殺されてしまうんだなぁ、と思っても、読み進んでしまう。ヒリヒリします。

そして最終章では、反撃。
マニングは最初から女性惨殺が豹の仕業という見方に疑義を唱えている、という設定になっています。
「ぼくの意見はまったく正反対だ。人間でなくて、どんな動物が、こんなにとことんまでやりぬけるもんか。こんなむごいことができるのは、人間だけさ。どんなに悪虐非道の猛獣だって、ここまではやらない」(142ページ)
最後に殺された女性の友人が囮となって、マニングとともに追い詰めようとします。
ここもまたとてもサスペンスフルです。

出来がいい作品ですか? と問われると、No と答えないといけないのかな、と思える作品なのですが、それでも一気読みしました。

ところで、タイトルの「黒いアリバイ」のアリバイ、どういう意味なのか読み終わってもピンときません。
ミステリでよくいう現場不在証明という意味ではなさそうです。
言い訳、という意味もありますが、そちらでもしっくりきません。
第一章の章題が「アリバイ」、そして最終章の章題が「黒いアリバイ」。
意味がわかりません。




<蛇足>
「だけどサリイ、あなたっていつもあんなふうなのね。誰かにこれこれするなっていわれると、かえってしたくなるのね。」
「スチーム・ローラーのサリイってところかしら」(218ページ)
この部分意味がわかりませんでした。
スチーム・ローラー!?



原題:The Black Alibi
作者:William Irish
刊行:1942年
訳者:稲葉明雄




nice!(20)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 20

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。