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玩具店の英雄 座間味くんの推理 [日本の作家 石持浅海]


玩具店の英雄~座間味くんの推理~ (光文社文庫)

玩具店の英雄~座間味くんの推理~ (光文社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/03/27
  • メディア: Kindle版

<カバー裏あらすじ>
津久井操は科学警察研究所の職員。実際に起きた事例をもとに、「警察は事件の発生を未然に防ぐことができるか」を研究している。難題を前に行き詰まった彼女に、大先輩の大迫警視正が紹介したのは、あの『月の扉』事件を解決した座間味くんだった。二人の警察官と酒と肴を前にして、座間味くんの超絶推理が繰り広げられ、事件の様相はまったく違うものになっていく!


「月の扉」 (光文社文庫)
「心臓と左手―座間味くんの推理」 (光文社文庫)
に続く、座間味くんシリーズ第3弾で、第2弾に続いて短編集です。シリーズはこのあと
「パレードの明暗: 座間味くんの推理」 (光文社文庫)
が出ていますね。

このシリーズ、楽しく読んできたと思うのですが、例によって詳細は覚えていなくて......新鮮に読めました!
たぶん新キャラクターだと思うのですが、津久井操という科学警察研究所の職員が登場、彼女をめぐる物語的側面も少しだけあります。

趣向としては、座間味くんと大迫警視と操がごはんとお酒を楽しみながら、操が調べた事件の話で座間味くんが意外な指摘をする、という流れで、安楽椅子探偵(アームチェアディテクティブ)の趣向です。
7話収録ですが、それぞれの料理は
「傘の花」ー普通の居酒屋
「最強の盾」-おでん
「襲撃の準備」-餃子
「玩具店の英雄」-イタリアン
「住宅街の迷惑」-牡蠣の土手鍋
「警察官の選択」-アメリカ料理、地ビール
「警察の幸運」-火鍋
となっています。

冒頭の「傘の花」、ちょっと意外な着眼点からするすると真相にたどり着く座間味くんの推理の飛躍ぶりが楽しいですね。
「最強の盾」は、設定に無理がありましたが、それでもおもしろい目の付け処。ミステリファンだったらすぐにピンと来てしまうかもしれませんが。
「襲撃の準備」は、石持浅海ならではの歪んだ動機、犯罪(計画)が描かれます。
「玩具店の英雄」は石持浅海にしては常識的なアイデアですが、その分大人し目の作品に感じられました。
「住宅街の迷惑」は新興宗教団体を扱っているので、少々安直な仕上がりになっているように思いました。
「警察官の選択」は、これまた石持浅海ならでは、といいたくなる発想ですが、ちょっと不思議に思っていることがあります。ネタバレになりますので、色を変えておきますが、この事件の場合、交通事故死になって保険金が下りるのでしょうか? ずいぶん通常の交通事故とは様相の違う事件なんですが
「警察の幸運」の回りくどさは、石持浅海ならでは、なのですが、好もしく思えました。たぶん題材がそういう回りくどさに似合っているからですね。

いずれも一癖ある推理を座間味くんが名探偵として披露するわけですが、解説で円堂都司昭が指摘しているように、「読者からすると彼は正義感だけではない怪しさを持った人物に映る」のです。
推理を披露した後、締めくくりのように座間味くんが放つコメントがいいようなく黒いのに、ぞっとしたりします。
ひょっとしたらこのシリーズの完結編は、座間味くんの意外な正体が明かされて終わるのかな? なんてことまで考えました。


<蛇足1>
「セクハラですか。いや、パワハラかな?」
悪意のかけらもない口調だ。大迫さんもにやりと笑う。「わかるかね」
二人で笑った。どうやら男性は大迫さんと相当親しいようだ。ということは、彼は警察官ではないのだろう。たとえ冗談でも、警察官は上位者--それも警視正--に向かって、こんな科白を吐かない。(16ページ)
本当ですか? 警察官は確かにお堅い職業だとは思いますし、ヒエラルキーの厳しい職場とは聞いていますが、この程度の軽口もアウトなんでしょうか?

<蛇足2>
おでんの種でいちばんおいしいのは、やはり味の染みた大根だろう。橋で割って口に入れる。ほくほくの大根は、想像以上に美味だった。(64ページ)
内容には共感するのですが、うーん、大根の形容に「ほくほく」ですか......
少々違和感あり。辞書的には「あたたかくておいしいもの」に使うとなっているみたいですが、イメージ大根よりもっと水分の少ないもの、芋などに使う形容詞のような感じがします。
でも、ネットでチェックしてみると、「ほくほく」を大根に使っている例がそこそこありますね。







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