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グレイストーンズ屋敷殺人事件 [海外の作家 は行]


グレイストーンズ屋敷殺人事件 (論創海外ミステリ)

グレイストーンズ屋敷殺人事件 (論創海外ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2020/03/01
  • メディア: 単行本

<裏表紙あらすじ>
1937年初夏の晩ロンドン郊外の屋敷で資産家の遺体が発見された 凶器は鈍器。
ヘイヤーの本格長編ミステリ待望の邦訳!
スコットランドヤードのヘミングウェイ巡査部長とハナサイド警視が事件を追う!


論創海外ミステリ138。単行本です。
ジョージェット・ヘイヤーの本は、「マシューズ家の毒」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)以来ですね。
ハナサイド警視とヘミングウェイ部長刑事が登場する作品として第4作のようです。
「紳士と月夜の晒し台」 (創元推理文庫)(ブログ感想ページへのリンクはこちら
「マシューズ家の毒」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
のあと、「They Found Him Dead」という作品が、この「グレイストーンズ屋敷殺人事件」 (論創海外ミステリ)の間に挟まっているようです。


事件は、あらすじ(? 帯から無理やり引用しましたが、あらすじとは言えませんね、これでは......) にも触れられている資産家殺しだけです。
現場にはいろんな人物が出入りしており、容疑者が絞られているようなのに、なかなか犯人の正体がつかめません。
数分間での殺人事件。
また、現場で見つからなかった凶器が何なのか、どうやって犯人は(見つからずに)持ち出したのか、という謎が据えられています。
邦題は「グレイストーンズ屋敷殺人事件」となっていますが、原題は「A Blunt Instrument」。すなわち、鈍器。
ここに力入れていますよ、という作者の宣言でもありますね。
結構切れ味するどいです。

ミステリで、Blunt Instrument といったらエラリー・クイーンのあれ(念のためタイトルは伏せておきます。amazon にリンクを貼っています)ですが、作者は意識していたのでしょうか? あれの方が発表年が古いので(1932年)、ミステリ・プロパーの作家なら絶対に意識していたと言えそうですが、ジョージェット・ヘイヤーはリージェンシー・ロマンスが本業(?) なので、どうだったのでしょうね? 少し気になります。

ということで、「紳士と月夜の晒し台」「マシューズ家の毒」対比、ミステリとしての建付けは大幅に進歩しています。

同時に、ジョージェット・ヘイヤーといえば、奇矯な登場人物たちなのですが、今回も登場人物がいろいろと楽しい作品になっています。
隠しごとばかりで一筋縄ではいかない登場人物たちというのは、ミステリにはうってつけではありますが、ジョージェット・ヘイヤーの場合はさらにひねくれた感じ(笑)。
なかでも被害者の甥にあたるネヴィル・フレッチャーが最高ですね(最悪?)。
愚かな行動から疑われてしまう隣人一家とのやり取りは、このシリーズの醍醐味といってしまってもよいかも。
嫌味、皮肉、韜晦、自嘲......
そしてもう一人とっても印象深いのが、聖書から引用しまくる巡査のグラス。
グラスのセリフ、ほとんど全部が聖書の引用と言ってもいいくらいのすさまじさ。
ネヴィルがグラスに対抗しようと効果的な聖書の文言を探してぶつけるシーンなんかも出て来ます。
シリーズ通して出てきているヘミングウェイ巡査部長は、グラスと組まされてぼやくこと、ぼやくこと(笑)。
こんなにもふんだんに聖書の引用が出てくるなんて、それくらい作家にとって聖書は身近なものなのでしょうね......自家薬籠中とはこのこと?

このあとジョージェット・ヘイヤーの翻訳は出ていないようですね。
個人的に好きなので、また訳してほしいです。


原題:A Blunt Instrument
作者:Georgette Heyer
刊行:1938年
訳者:中島なすか





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