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さらばスペインの日日 [日本の作家 逢坂剛]

さらばスペインの日日(上) (講談社文庫)さらばスペインの日日(下) (講談社文庫)

さらばスペインの日日(上) (講談社文庫)
さらばスペインの日日(下) (講談社文庫)

  • 作者: 逢坂 剛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ドイツに続く日本の無条件降伏で第二次世界大戦が終結。密命を帯びスペインに潜行していた陸軍情報将校の北都昭平は戦犯指定の危機にさらされる。一方、英国情報部員ヴァジニアは、MI6の遣り手情報部員の二重スパイ疑惑の真相に迫るが、罠に陥り拘束される羽目に。著者渾身のイベリア・シリーズ完結篇。<上巻>
偽造パスポートで帰国を決意した北都。イギリスの警察網をくぐり抜け、マドリード経由で小さな船の四等船室に潜り込み、祖国を目指す。東京で待ち受けていたのは、GHQら占領軍の取り調べ、ベルリンで運命を共にした記者の尾形、それに……。第二次大戦のヨーロッパを描いた著者のライフワーク、ついに完結! <下巻>


「イベリアの雷鳴」 (講談社文庫)
「遠ざかる祖国」(上) (下) (講談社文庫)
「燃える蜃気楼」(上) (下) (講談社文庫)
「暗い国境線」 (上) (下) (講談社文庫)
「鎖された海峡」 (講談社文庫)
「暗殺者の森」(上) (下) (講談社文庫)
に続くイベリア・シリーズ第7弾にして完結編です。
2013年に出たもので、2016年に文庫化され、今頃読んでいます。

「暗い国境線」 から感想をこのブログに書いていましたが、「暗殺者の森」の感想は書けずじまいです。

第二次世界大戦の戦況も終わって、いわゆる終戦処理が始まります。
日本が負けてしまっても、昭平たちの生活は、比較的穏やかなようです(昭平の国籍が日本ではなく、スペインとペルーになっているから、ということもありますが)。
ヴァージニアは、イギリスに戻って、キム・フィルビーと対決しようとします。
これが波紋を呼んで、次から次へと...... いつもながらの起伏にとんだストーリーを楽しむことができました。
キム・フィルビーは実在の人物なので、ヴァージニアとキム・フィルビーの対決の帰結は史実の制約を受けてしまうわけですが、ヴァージニアにはもうひとふんばりしてほしかったなぁ、なんて贅沢な希望を抱いてしまいました。

ヨーロッパにいる日本人たちが日本へ引き上げていく場面があるのですが、ちょっとぐっときます。
百人近くのスペイン・ポルトガル組に加えて、バチカンから二十人、イタリア組二十八人、スウェーデン組など七十五名、ヴィシー・フランスから六十九名。総勢二百八十人を超える日本人で船プルス・ウルトラ号はあふれ返ることになった(下巻218ページ~。スペイン以外の人たちが合流するのは244~245ページ)、と。
マニラで筑紫丸に乗り換え、浦賀へ。
当時ヨーロッパにいた日本人は三百人にも満たなかったのですね。あまりにも多くの国を敵に回していたということでしょう。いかに無謀な戦いだったかは、この点からもわかりますね。

この大河ストーリーのラストが日本とはねぇ......
敗戦すれば引き上げるはずで、まあ、これが自然なんでしょうが、思い至りませんでした。

下巻にある「作者自身によるエピローグ」で、シリーズの裏話、後日談が語られていますが、これだけ長大な物語を支えた話と いうことで、とても興味深いです。
「太平洋戦争を描いた小説は数多いが、同時期にヨーロッパで日本人がどう戦ったか、あるいは戦わなかったか、その顛末を描いた小説は一つもない」(371ページ)
こういう発見から、ここまでの物語が作り上げられるのですね。作家のイマジネーションの豊かさを印象付けられます。
こういった物語の種、芽はあちこちにあるのでしょうね、きっと。

昭平とヴァージニアの物語にも一つの区切りが訪れたわけですが、このあとの物語も気になります。

ところで、シリーズ完結の今になって、という感じですが、今更ながら、昭平という名前が気になりました。
昭平って、何年生まれなのでしょうか?
「昭」の字、昭和という元号ができるまで日本で(ほとんど?)使われていなかった文字だという認識だからです。
はやく生まれたとして昭和元年生まれ。それでも終戦の時点で二十歳です。
イベリア・シリーズでの昭平の設定とは合わないですよね......
もっとも、昭平はスパイということですから、偽名だとすれば問題ないのですが。(それでも年齢からして不自然な名前をスパイがつけるというのはまずいのではと思ってしまいますが)

<蛇足1>
クリスマスは、家で家族そろって祝う習慣があるため、休業するレストランも少なくない。しかし、大晦日は男も女も盛装して町へ繰り出すので、ほとんどのレストランが営業する。(下巻196ページ)
クリスマスは、キリスト教国はいずこもそうなんでしょうね。
とはいえ「休業するレストランも少なくない」程度ではなく「ほとんどのレストランが休業する」という感じだと思います。

<蛇足2>
「あの船名のローマ字は、ヘボン式の表記だな。書き換えた跡があるから、前は日本式で書かれていたんだろう。」(26ページ)
終戦でローマ字の表記方法も換えさせられたのですね......



シリーズが完結したので、書影をまとめておきます。
この「さらばスペインの日日」のカバー裏側の帯には
「第二次世界大戦時代のスペインを主要舞台に、愛と諜報と戦いを壮大かつ緻密に描き切るエスピオナージ(スパイ)巨編!」と紹介されています。
イベリアの雷鳴 (講談社文庫)
イベリアの雷鳴 (講談社文庫)

遠ざかる祖国(上) (下) (講談社文庫)
遠ざかる祖国(上) (講談社文庫)遠ざかる祖国(下) (講談社文庫)

燃える蜃気楼(上)(下) (講談社文庫)
燃える蜃気楼(上) (講談社文庫)燃える蜃気楼(下) (講談社文庫)

暗い国境線 (上) (下) (講談社文庫)
暗い国境線 上 (講談社文庫)暗い国境線 下 (講談社文庫)

鎖された海峡 (講談社文庫)
鎖された海峡 (講談社文庫)

暗殺者の森(上) (下) (講談社文庫)
暗殺者の森(上) (講談社文庫)暗殺者の森(下) (講談社文庫)

さらばスペインの日日(上)(下) (講談社文庫)
さらばスペインの日日(上) (講談社文庫)さらばスペインの日日(下) (講談社文庫)



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