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閉ざされた庭で [海外の作家 た行]


閉ざされた庭で (論創海外ミステリ)

閉ざされた庭で (論創海外ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2014/12/02
  • メディア: 単行本



論創海外ミステリ134。単行本です。
エリザベス・デイリーの本を読むのは初めてです。
帯によると「アガサ・クリスティーから一目置かれた女流作家」
らしいです。それが本当だとするとすごい。
・・・のですが、訳者あとがきによると、デイリーの作品の裏表紙に推薦文(プルーフ)を寄せたことから生まれてエピソードらしいです。なーんだ。

庭園で起こった射殺事件を扱っているのですが、庭園と屋敷の位置関係もわからないし、図面も地図もない。
ここからだと見つからないとか見つかる、とか、銃を撃てるとか撃てないとか議論されても、まったくピンと来ないし、少々困りました。不親切ですよね。(もっとも、それでも作者の頭の中ではきちんと図面が引かれていることが想像できるので、不安になったりはしませんでしたが)

分からないと言えば、殺人現場である庭園(バラ園)に置かれている像が、ざんざんけなされているのですが、これもピンと来ませんでしたね。
冒頭から「あんな趣味の悪いもの」(9ぺージ)呼ばわりです。
「どうやら人間、それも男性をかたどったもので、実寸より小ぶりに作ってある。丈の短いギリシャ風の衣装をまとっている。高さのない円形の土台の上に立っていて、風雪にさらされ、劣化が著しい」(10ページ)と説明される、木製のアポロ像ということなのですが、アポロ像がそんなに趣味の悪いもの、なのでしょうか?

作品は、ミステリとしては非常にオーソドックスな謎解き物で、正直、地味でしたね。
退屈したりはしなかったものの(翻訳は読みにくくて問題があると思いましたが、ストーリー展開は読みやすかったですね)、取り立てていうほどのこともないような...(失礼)
いや、真相はかなりトリッキーではあるんですよね。
そう、それこそクリスティが書いてもおかしくないような感じです。(クリスティならもっとうまく書いているでしょうけれども)
だから、大騒ぎせずに、小味ながらウェルメイドなミステリとして楽しめばいいのでは?


<蛇足1>
噴水を作るにはもってこいの場所よ、林の泉からパイプを通したり、古い治水溝から水を引けばいいのだから。(9ページ)
変な日本語ですね。~たり、~たり、となっていないのを別にしても、おさまりがわるい文章だなあと思います。

<蛇足2>
自分ひとりで入ったと警察に主張し、さらには死因審問でも証言するおつもりですか?(80ページ)
明日の午後、死因尋問が始まるまでには動き出すだろう(211ページ)
普通ミステリでは検死審問というところを死因審問とするのはよいとして、審問なのか尋問なのか、一つの書物の中では統一すべきではないでしょうか?

<蛇足3>
わたしには--旧知の友を除き--アビィ以外に地縁はひとりもおりませんし(81ページ)
地縁? 文脈的に間違った用語だと思います。
知り合い程度の訳でよかったのではないでしょうか?

<蛇足4>
相続税を払えばそれぐらい残る。小切手帳を見ればすべてわかるよ(88ページ)
小切手帳というのは(利用者が記録をちゃんとつけているにしても)出金サイドだけを記録するものですから、入金額とか残高はわからないと思います。日本でいう通帳はないでしょうけれど、ここは誤訳ではなかろうかと。

<蛇足5>
エルスワース・モッソン…………州検事(巻頭の主要登場人物欄)
窓辺のカウチに座っているのが、リヴァータウン在住の州検事、エルスワース・モッソンだ。(85ページ)
この件についての権限がおありなら、モッソン判事にも。(110ページ)
ああ、モッソンですか。彼は州判事です。(173ページ)
一体、モッソンさんは、どういう人なのでしょうか? 

<蛇足6>
本当にバカな女。無口な人って、たいていバカよ。無口を装って、自分の愚かさを取り繕っているの。(228ページ)
なかなか大胆なセリフで笑ってしまいました。



原題:Any Shape of Form
作者:Elizabeth Daly
刊行:1945年
訳者:安達眞弓






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