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泥棒はスプーンを数える [海外の作家 は行]

泥棒はスプーンを数える (集英社文庫)

泥棒はスプーンを数える (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「ALLB」と記されたマニラフォルダーに包まれていたのは、フィッツジェラルドの最初の手書き原稿。匿名と思しきミスター・スミスに依頼され、難なく盗み出した泥棒探偵バーニイ・ローデンバー。第二の依頼もまたフィッツジェラルド絡みだった。そんな中、東92丁目で老婦人殺害事件が発生し、刑事のレイに呼び出されたバーニイが真相を追及する羽目に――。小粋な会話が心地いい円熟のシリーズ最終巻。


COVID-19 が猛威を振るっている中、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
息災であられますことを。

さて、ローレンス・ブロック「泥棒はスプーンを数える」 (集英社文庫)です。
ちなみに、この「泥棒はスプーンを数える」 から3月に読んだ本の感想になります。
このブログでローレンス・ブロックの感想を書くの、初めてですね。
ローレンス・ブロックといえば「過去からの弔鐘」 (二見文庫)でスタートした酔いどれ探偵・マット・スカダーシリーズが高名で評価が高いですが、個人的には「泥棒は選べない」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)から始まる泥棒バーニイ・ローデンバーの方が好みです。

シリーズのリストを作ってみると、以下になります。
1. 「泥棒は選べない」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1977年)
2. 「泥棒はクロゼットのなか」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1978年)
3. 「泥棒は詩を口ずさむ」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1979年)
4. 「泥棒は哲学で解決する」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1980年)
5. 「泥棒は抽象画を描く」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1983年)
6. 「泥棒は野球カードを集める」 (ハヤカワ・ポケット ミステリ) (1994年)
7. 「泥棒はボガートを夢見る」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1995年)
8. 「泥棒は図書室で推理する」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (1997年)
9. 「泥棒はライ麦畑で追いかける」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)(1999年)
10. 「泥棒は深夜に徘徊する」 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) (2004年)
11. 「泥棒はスプーンを数える」 (集英社文庫) (2013年)

最初の数作はハヤカワ・ポケット・ミステリ版で読み、文庫化が始まってからは文庫で読むようになりました。上のリストはすべてハヤカワ・ポケット・ミステリ版にリンクをはっていますが、文庫化は今のところ第6作の「泥棒は野球カードを集める」 (1994年)で止まっていまして、ぼくが読んでいるのもここまで。
その後もシリーズはハヤカワ・ポケット・ミステリで訳し続けられていましたが、9年振りの新作であるこの「泥棒はスプーンを数える」 は、版元が変わって集英社文庫。ハヤカワには最後までちゃんと訳してもらいたかったところですが、そうするとハヤカワ・ポケット・ミステリで訳されることになって文庫化されない、ということも考えられるので、集英社でよかったのかもしれません。
なんにせよ、バーニイ・ローデンバーシリーズの最終巻の本書が読めてよかった。集英社さん、ありがとう。

上記で引用したあらすじで、「小粋な会話が心地いい」とありますが、まさにそこが特長のシリーズで、語り手バーニイの語り口と合わせて大きな魅力です。
最終巻となる本書でも、その魅力は全開で、楽しめました。
語り口、と言えないかもしれませんが、338ページの第32章を読んだ(見た?)ときには、声を出して笑ってしまいました。

いやいや、そんなところまでいかなくても、冒頭第1章をさっと読むだけで、そのことはわかっていただけると思います。
バーニイの古書店で見つけた本を買わずにKindleでわずか2ドル99セントで買ったとわざわざカウンターにその本を持ってきていう若い女のエピソードから、ニヤリとできます。

ミステリとしての建付けは、話があっちいったり、こっちいったり、出来がよいとはお世辞にも言えませんが、泥棒ならではの謎解きシーンとか、そうそうバーニイならこうでなくてはねぇ、と思える段取りも盛り込まれており、個人的には満足できました。

タイトルは、冒頭に掲げられていますが
「その男がほんとうに善と悪には飽別がないと考えているのなら、その男がわれわれの家を出ていくときにはスプーンの数を数えることにしよう。」
というジェームズ・ボズウェル「サミュエル・ジョンソン伝」からとられています。
「サミュエル・ヂョンスン伝」として岩波文庫から訳されているようですね。

シリーズ最終巻と書かれていますが、特に最終話として特徴づけるようなラストが用意されているわけではなく、普通に終わっていますので、気長に待ってれば新作出たりしないかな?
ローレンス・ブロックも御年86歳だから、もう無理なのかな??

まずは早川書房さん、既刊分を順次文庫化してくださいね!


<蛇足1>
中華料理(というよりアジア料理というべきかもしれませんが)のテイクアウトの店の店員との会話について、バーニイとキャロリンが交わす会話ですが、
「彼女が言う”ジュノー・ロック”が”あなた、これ、好きじゃない(ユー ノー ライク)”だって意味だということがわれわれにわかるまでにいったいどれだけ時間がかかった?」(51ページ)
というのがあります。
ユー ノー ライク が、ジュノー・ロックに聞こえるんですか!?
中国系の人の英語の発音は日本人と比べるとおしなべてきれいだと思うのですが、それでもこうなんでしょうか? ああ、ぼくの英語はどう聞こえていることやら......

<蛇足2>
「わたしはルーマニアのマリア王妃かもしれない。」(110ページ)
会話に突然出てきたので、ルーマニアのマリア王妃、有名な人なのかな? と思いWikipediaで調べてしまいました。
ルーマニアというので馴染みがなかっただけでしょうか? 日本ではそれほど高名ではない気がします。

<蛇足3>
「どうして<ピーター・ルーガー>のステーキディナーが心臓発作の原因になるなんて言われているんだ?」
「勘定書が来たときにショックを受けるからさ」(122~123ページ)
おお、ピーター・ルーガー
ニューヨークに行った際、あちらで働いている人に、ブルックリンのお店に連れて行ってもらいました。そんな高いお店だったのか......ああ、ありがとうございました(このページはご覧になっていないでしょうが)。


原題:The Burglar who Counted the Spoons
作者:Lawrence Block
刊行:2013年
訳者:田口俊樹


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