SSブログ

現代詩人探偵 [日本の作家 か行]

現代詩人探偵 (創元推理文庫)

現代詩人探偵 (創元推理文庫)

  • 作者: 紅玉 いづき
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/04/12
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
とある地方都市でSNSコミュニティ、『現代詩人卵の会』のオフ会が開かれた。九人の参加者は別れ際に、これからも創作を続け、十年後に再会する約束を交わした。しかし当日集まったのは五人で、残りが自殺などの不審死を遂げていた。なぜ彼らは死ななければならなかったのか。細々と創作を続けながらも、詩を書いて生きていくことに疑問を抱き始めていた僕は、彼らの死にまつわる事情を探り始めるが……。生きることと詩作の両立に悩む孤独な探偵が、創作に取り憑かれた人々の生きた軌跡を辿り、見た光景とは?


前回感想を書いた「掟上今日子の備忘録」(講談社文庫)(リンクはこちら)までが3月に読んだ本でした。
3月、期末月にもかかわらず読書がはかどりましたね。月間13冊(上下本がありましたので12作)も読めたのはすごく久しぶりです。
ということで、この「現代詩人探偵」 (創元推理文庫)から4月に読んだ本です。
ちょうど1ヶ月遅れで感想を書いていることになりますね。

宇田川拓也の解説が、この作品のプロフィールをものすごくすっきりまとめていまして、
「このたび文庫化された紅玉いづき『現代詩人探偵』は、二〇〇七年に第十三回電撃小説大賞<大賞>受賞作『ミミズクと夜の王』で華々しいデビューを飾った著者が、キャリア十年目にして初めて“ミステリ”に取り組んだ意欲作だ。その内容は殺人事件や奇妙な謎をケレン味たっぷりに扱ったタイプとは大きく異なり、オーソドックスなディテクティブストーリーのフォーマットを用いて“創作の業”とでもいうべきテーマに真正面から挑んだ、従来にない独自性の際立ったものになっている。」

そうなんですよね。
かなり独自。
読後感も特殊でして、ミステリを読んだ感じがしない......
普通のミステリだったら、『現代詩人卵の会』を舞台に自殺や事故の不審死が重なってきたのであれば、自殺や事故のように見えて実は連続殺人事件で......という風に展開するところですが、この作品の場合、自殺や事故の真相というよりは、背景を探っていく物語となります。(途中、ミステリらしい展開を見せるエピソードもありますが)

探偵のようなことをする主人公の行動は、救いをもたらすものではなく、まさに秘密を暴き立てる感じで、苦いです。
これらを通して、なぜ詩を書くのか、詩はどう伝わっていくのか、が深められていく構図になっています。重いです。

ミステリらしい仕掛けも用意されていますが、そこはミステリとして受け取るのではなく、主人公の苦悩、焦燥(?) が反映されたもの、と理解しました。

ミステリとして期待するものは得られませんでしたが、読後感は充実していたと思います。
もちろん、ぼくは創作者ではありませんので、本当のところ、どこまで理解できたのか甚だ疑問ではありますが、主人公の感慨には共感できました。苦しい内容ですけれども。
ラストも、重苦しい物語の最後に、すっと一条の光が照らされたような感じがしました。


<蛇足1>
男性が女性に指輪を贈る意味を思う。
そして、女性がその指輪を首にかけて、指につけない意味も、また。(178ページ)
男性が贈る理由はわかるのですが、女性が指につけない理由がわかりません......。

<蛇足2>
一生懸命、忘れようとしているから、って。(182ページ)
一生懸命かぁ......と。
ただ、この作品の場合、詩人の感性として、正しい一所懸命より一生懸命なのかなぁ、と思ってしまいました。




タグ:紅玉いづき
nice!(17)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 17

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。