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真鍮のむし [日本の作家 田中啓文]

真鍮のむし 永見緋太郎の事件簿 (創元推理文庫)

真鍮のむし 永見緋太郎の事件簿 (創元推理文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/01/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
天才的なテナーサックスの腕前とは裏腹に、世事にはうとい永見緋太郎。だが、ひとたび不思議な出来事に遭遇するや、音楽を奏でるように見事に謎を解き明かす。アメリカで管楽器の盗難事件に巻き込まれた永見が見いだした人情味溢れる真相他、日本のみならずニューヨーク、シカゴ、そしてジャズの聖地ニューオリンズなどを舞台にした全七編。ジャズと不思議に満ちた、痛快ミステリ。


「落下する緑―永見緋太郎の事件簿」 (創元推理文庫)
「辛い飴 永見緋太郎の事件簿」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾。

「塞翁が馬」
「犬猿の仲」
「虎は死して皮を残す」
「獅子真鍮の虫」
「サギをカラスと」
「ザリガニで鯛を釣る」
「狐につままれる」
の7話収録。ことわざをタイトルのモチーフにした趣向ですね。

「塞翁が馬」は、真相の見当はすぐつくのですが、まさかなぁ、と思ってしまいました。だって、そんなこと......
「犬猿の仲」は、ミステリというより人情噺に近くなっているような。もっとも人情噺という側面は、シリーズを進むごとに強くなってきていますが。
「虎は死して皮を残す」の密室からどうやって逃げたか、というトリックはおもしろいですねぇ。ありえそう。
「獅子真鍮の虫」は、古いぼろい楽器ばかりが盗まれる盗難事件の謎ですが、この動機は面白いですね。
「サギをカラスと」は、老演奏家の消えた恋人(?) の行方を追う話ですが、なるほどねー。
「ザリガニで鯛を釣る」は、唐島に相次ぐ不運を扱っていますが、これは、ちょっとわかりやすいのでは、とも思います。人情噺の一つの頂点ということでしょうか?
「狐につままれる」のトリック、大好きです。音楽による密室という新手のパターンもステキです。

これまでにもましてミステリ味が薄れてきていて、ジャズそして人情噺に力点が置かれた作品になっているなぁ、というのが読んだ際の感想だったのですが、法月綸太郎の解説を読んで認識を改めました。
なるほど。
短編職人であるエドワード・ホックの「ぬるさ」の境地を目指したのですか......

それでもジャズ部分の豊穣ぶりは特筆すべき特長だなぁ、と感じましたが(なにしろ、ジャズの聖地をめぐり、ジャズの名手たちを登場させていくのですから)、ミステリ面はおっしゃる通りの境地にも思えますね。

このあとの続刊は出ていないようですが、貴重なシリーズなので、ぜひ続けてもらいたいです。



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コースケ

31様、こんばんは。
田中啓文さんのこの永見緋太郎シリーズ、鮎川哲也氏のアンソロジーが
初出で、筆者の中では特に本格色が強く、私も好きで読んでいました。
最近は全く音沙汰が無く、本当に残念です。

by コースケ (2020-05-19 19:09) 

31

コースケさん
コメントありがとうございます!
駄洒落を抑えた、田中啓文さんの新しい魅力を教えてくれたシリーズでもあるので、ぜひ続けてもらいたいです!
by 31 (2020-05-21 16:06) 

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