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ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 [日本の作家 初野晴]


ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 「ハルチカ」シリーズ (角川文庫)

ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇 「ハルチカ」シリーズ (角川文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
マレンと成島の夢は、穂村と上条の夢を叶えることだ――。部を引退した片桐元部長から告げられ、来年のコンクールへの決意を新たにする芹澤直子。ギクシャクした関係を続けるカイユと後藤朱里。部の垣根を越えてある事件を解決するマレンと名越。そして部のまとめ役の成島美代子……。清水南高校吹奏楽部に運命的に集まった個性的なメンバー。その知られざる青春と日常の謎を描く、大人気シリーズ書き下ろし番外篇!


「退出ゲーム」 (角川文庫) (感想のページへのリンクはこちら
「初恋ソムリエ」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「空想オルガン」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「千年ジュリエット」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「惑星カロン」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くハル・チカシリーズ第6弾にして、番外編。
ハル・チカではない登場人物たちに焦点のあたった連作になっています。

「ポチ犯科帳 -檜山界雄×後藤朱里」
「風変わりな再会の集い -芹澤直子×片桐圭介」
「掌編 穂村千夏は戯曲の没ネタを回収する」
「巡るピクトグラム -マレン・セイ×名越俊也」
「ひとり吹奏楽部 -成島美代子×???」
の5編収録。

「ポチ犯科帳 -檜山界雄×後藤朱里」は、タイトルから連想されますとおり、犬が登場します。
コーギーの引き取り先探し、がメインですが、犬好きのおばさんが飼っている犬の名前が、おまさ、お千代、おさわ、お豊、そして鬼平と、「鬼平犯科帳」の登場人物からつけている、っていうのがふるってますね。

「風変わりな再会の集い -芹澤直子×片桐圭介」は、居合わせた駄菓子屋での怪しい出来事の顛末を描いています。ちょっとした寸劇といったところでしょうか。
本筋のストーリーよりも、
「ピアノって鍵盤を押しただけでいつも同じ高さの音が出る便利な楽器なの。だから音楽家はピアノの勉強をする。絶対音感より、絶対音高なのよ。それにピアノは音楽の三要素--旋律(メロディー)、リズム、和音(ハーモニー)を同時に表現できる万能の楽器でもあるのよ。ピアノのある家からは音楽家が育ちやすいの。楽器の中でも特別だと思って。」(93ページ)
と芹澤直子が片桐圭介に説明するセリフですが印象に残りました。
うーん、なるほどー。ピアノって、すごいですね。

「掌編 穂村千夏は戯曲の没ネタを回収する」は、間奏曲、というか、お口直し?

「巡るピクトグラム -マレン・セイ×名越俊也」は、扱っているテーマが、ベルマーク。身近なようで、縁遠い存在のベルマーク。
今もあるんですかねー? というと、作中人物に叱られますね。
出てくるエピソード、実話をもとにされているのでしょうか? 現実感漂うあたり、ステキだなと思いました。

「ひとり吹奏楽部 -成島美代子×???」は、昔の部の日誌に
「あえて、困難や逆境を乗り越えられるひとのタイプを考えてみた。」
「ひとりではだめだ。この五人のタイプがそろわないと、意味がない。この五人がそろえば、優秀な指導者が去っても、部員が減っても、なんとか持ちこたえることができる。
 いまから記す。
<ファイター>=闘うひと
<シンカー>=考えるひと
<ビリーバー>=信じるひと
<コネクター>=つなぐひと
<リアリスト>=現実的なひと」(227ページ)
と書いたモチヅキという人物に思いをはせるエピソードです。これが、清水南高校吹奏楽部の今を映し出ているという趣向ですね。
「私たちは悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ。」(209ページ)という冒頭の引用が、視点人物である成島の背景にマッチして印象的でした。

このあとシリーズは出ていないようです。
期待していますので、続刊を早くお願いします!


<蛇足1>
「音色が悪くなったり低音の伸びがなくなったら交換時期になる。」(17ページ)
「お金のためになにかを犠牲にしたり後回しにする現象はよくない。」(152ページ)
「技術が低かったり、人数合わせの奏者を入れるくらいなら、最初から不要だという極論さえある。」(218ページ)
徹底して、「~たり」は単独使用になっていますね。「~たり~たり」としないと、文章のリズムが悪くなって居心地が悪い、ということはないのでしょうか?

<蛇足2>
ティンパニのチューニング・ボルトについて、カイユが
「ボルトに下手に油さすと、かえって演奏中にゆるんじゃうかもしれないだろ。すこし錆びてきたあたりが調子いいんだ。」(16ページ)
というシーンがあり、本当ですか!? と思いました。と同時に、そうかも、と素人ながら思ったり。




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