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八月は冷たい城 [日本の作家 恩田陸]


八月は冷たい城 (ミステリーランド)

八月は冷たい城 (ミステリーランド)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/12/20
  • メディア: 単行本

<外箱あらすじ>
夏流城(かなしろ)での林間学校に初めて参加する光彦。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染の卓也、大柄でおっとりと話す耕介、唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正だ。到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、首から折られた四つのひまわりの花だった。少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、茂みの奥に嫌を持って立つ誰かの影を目撃する。閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……? 彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。


この「八月は冷たい城」 (ミステリーランド)は、「七月に流れる花」 (ミステリーランド)の感想にも書いたように、同時発売でした。(奥付は2016年12月)

既に文庫化されています。講談社タイガ版、講談社文庫版があるようです。

八月は冷たい城 (講談社タイガ)

八月は冷たい城 (講談社タイガ)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/10/24
  • メディア: 文庫

講談社文庫版は、「七月に流れる花」と合本です。

七月に流れる花/八月は冷たい城 (講談社文庫)

七月に流れる花/八月は冷たい城 (講談社文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: 文庫



「七月に流れる花」 (講談社タイガ)が女子バージョンであったのに対し「八月は冷たい城」 (講談社タイガ)は男子バージョンです。
時間軸も、タイトルから明らかではありますが、すこし男子バージョンの方が後に設定されています。
そして、「七月に流れる花」 のネタバレ、というか、物語世界の設定が明らかになっているという前提で話が幕開きします。
(なので「七月に流れる花」 から読んだほうがよいです)

男子サイドは、光彦、卓也、幸正、耕介の4名で、どことなくひんやりした手触りの作品になっていることに変わりはありませんが、女子サイドと比較するとかなり動的です。

物語世界の設定を前提に、事件が発生します。
鎌が仕掛けられていたり、彫像が倒れたり......
まさに、死の危険がある林間学校になっています。
やはり注目は、物語世界の設定あればこその事件になっているということでしょう。

ネタバレにつき色を変えておきますが、
「なんというグロテスクで残酷な状況だろう。みんなに気を遣いながら、親が死ぬのを待ち続けるなんて。」(95ページ)
というところに、この物語のエッセンスが詰まっています。

そして、最後に明かされる(とはいえ、登場人物による想像にすぎないのですが)「みどりおとこ」の正体。
あまりのグロテスクさに、ここまでする必要あるかな、と思ってしまいましたが(もっと穏やかな謎解きであっても、少年の成長物語としての骨子は揺るがないので)、これは好みの問題なのかもしれません。

雰囲気作家恩田陸を味わう入門書として、
「七月に流れる花」
「八月は冷たい城」
はいいかもしれません。


タグ:恩田陸
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