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ロードサイド・クロス [海外の作家 ジェフリー・ディーヴァー]


ロードサイド・クロス 上 (文春文庫)ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)ロードサイド・クロス 下 (文春文庫)
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
路傍に立てられた死者を弔う十字架――刻まれた死の日付は明日。そして問題の日、十字架に名の刻まれた女子高生が命を狙われ、九死に一生を得た。事件は連続殺人未遂に発展。被害者はいずれもネットいじめに加担しており、いじめを受けた少年は失踪していた。尋問の天才キャサリン・ダンスは少年の行方を追うが……。大好評シリーズ第二作。 <上巻>
ネットいじめに端を発する事件は殺人にエスカレートした。犯人は失踪した少年なのか? ダンスは炎上の発端となったブログで報じられた交通事故の真相を追う。ネット上の悪意が織りなす迷宮。その奥底にひそむのは悪辣巧緻な完全犯罪計画。幾重にも張りめぐらされた欺瞞と嘘を見破った末、ダンスは意外きわまる真犯人にたどりつく! <下巻>


ここから10月に読んだ本の感想です。

「このミステリーがすごい! 2011年版」 第9位
「2011本格ミステリ・ベスト10」第9位
週刊文春ミステリーベスト10 第3位。

「スリーピング・ドール」 (上) (下) (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続き、尋問とキネシクス(証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し分析する科学)のエキスパート、キャサリン・ダンスが主役をつとめるシリーズ第2作。
その前に、リンカーン・ライムシリーズである「ウォッチメイカー」 (上)(下) (文春文庫)(感想ページへのリンクはこちら)にも出てきましたので、登場作としては3作目です。

タイトルになっているロードサイド・クロスとは、あらすじにもある通り「路傍に立てられた死者を弔う十字架」です。これが一種の犯行予告になっている事件です。
「路肩の十字架」と40ページには書かれています。

あらすじには触れてありませんが、この事件と同時に、「スリーピング・ドール」 (上) (下) 事件の余波が描かれています。
それは、重度の火傷を負い死亡したファン・ミラー刑事の安楽死容疑で、キャサリンの母イーディが逮捕されてしまうというもの。ハーパー検事のスタンドプレーという趣があるものの、予断を許しません。
(伏せるべきかな、とも思いましたが、上巻の半分くらいからスタートするエピソードなのでここに書いておくことにします)
こちらは、どうしても母親のことを疑ってしまう、少なくともその可能性は否定できないと考えてしまうキャサリンの苦悩と、母親との確執が焦点になります。
母親との問題は下巻374ページになって一応の解決をみるのですが、なかなか難しい問題ですね。

ロードサイド・クロス事件の方は、あまりにあからさまなかたちで話が進んでいくので、「こんな平凡な話のわけがないよな」と読者が思ってしまいます。
それを承知の上で話を転がしていくのが、いつものジェフリー・ディーヴァーなのですが、ちょっと今回はディーヴァーにしてはひねりが足りないような気がしました。
とはいっても、それがこの作品の欠点というわけではありません。
そもそもディーヴァーにしてはひねりが足りない、というだけで、普通よりはそれでもひねってあります。
また、ひねりを抑えた分、話がわかりやすく、くっきりしてきました。
たとえば追われる高校生トラヴィスのエピソードは、シンプルになった分イメージがつかみやすくなりました。

キャサリンのプライベートもなにやらあわただしい感じになってきましたし、シリーズのこの後が楽しみです。



<蛇足1>
「リスかウッドチャックか、そのくらいの大きさでした」(266ページ)
ウッドチャックって、身近な動物なんですね。

<蛇足2>
「SF系のゲームだ」
ダンスにとっては説明になっていなかった。「え、何系?」
「ママ、サイエンス・フィクションだよ」
「ああ、空想科学(サイファイ)ってことね」
「違うってば。ママ、古すぎ。いまはSFって言うんだよ」(下巻34ページ)
勉強になります。

<蛇足3>
「『攻殻機動隊』? さあね、二十回か、三十回か……続編も同じくらい見た」(58ページ)
アニメーションの古典になっているということですね。

<蛇足4>
「完全にゲームの世界に浸れるこういった”ポッド”の故郷は、日本だ。子供たちは、外界と完全に遮断された暗いブースにこもって何時間でもコンピューターゲームをプレイし続ける。社会との接点はネットのみという”引きこもり”人口の多さで知られるっ国でこういったものが生まれたのは、必然と言えそうだ。」(126ページ)
なんだか書き方からして、ジェフリー・ディーヴァーは日本に良い印象を持っていないような気がしてなりませんね。







原題:Roadside Crosses
作者:Jeffery Deaver
刊行:2009年
翻訳:池田真紀子





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センニン

ご訪問 & nice! ありがとうございました。
また遊びに来ます。
by センニン (2020-11-14 20:44) 

31

センニンさん
ご訪問&nice!ありがとうございます。
またよろしくお願いします。
by 31 (2020-11-21 04:13) 

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