亡者の金 [海外の作家 は行]
<論創社HPの内容紹介から>
かつて英国読書界を風靡し、アメリカ大統領にも絶賛された往年の人気作家、約半世紀ぶりの邦訳書。
大金を遺して死んだ怪しげな下宿人。
狡猾な策士に翻弄される青年が命を賭けた謎解きに挑む!
論創ミステリ、単行本です。
J・S・フレッチャーの本を読むのは「ミドル・テンプルの殺人」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら)に次いで2冊目ですが、翻訳されたのはこの「亡者の金」 (論創海外ミステリ)の方が先でした。
結論を先に言ってしまうと、面白かったです。
本格ミステリとしてどうか、と言われると弱い作品ですが、サスペンスにあふれていますし、主人公が冒険に乗り出すところも楽しく読めます。
いわゆる”通俗的”な作品としてとても楽しかったです。
すごくあっさりと犯人の見当がつき、そのまま進んでいくのが難点、ということだと思いますが、一方で、そのおかげでサスペンスが高まってきますので、一概にダメといえないのでは、と考えています。
主人公の頭が悪いことも(悪いと言ってしまってはいけないかもしれませんね。訳者あとがきで書かれているように、お人好し程度の表現がいいのかな?)気になるといえば気になるのですが、サスペンスものとして特に際立って頭が悪いわけでもないですし、主人公が隠し事をするのも常套的ながら手堅い感じがします。
主人公のする選択・行動に「おいおい、それはないだろ」と何度もツッコミを入れたくなりますが、この種のサスペンスの正攻法と言えば正攻法ですし。
繰り返しになりますが、”通俗的”な作品として、いいなと思えます。
田舎を舞台にした、のどかな田園ミステリ(って言い方があるのかどうか知りませんが....)といった趣きの出だしから、想定外に物語が拡がっていくところも高ポイントだと思いました。
ちょっと冒険小説っぽい部分(あくまで「っぽい」ってだけですが)があるのも、意外と好印象です。
J・S・フレッチャー、いいですね。
もっともっと訳してもらえるととてもうれしいです。
原題:Dead Men's Money
作者:J. S. Fletcher
刊行:1920年
訳者:水野恵
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