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紳士の黙約 [海外の作家 あ行]


紳士の黙約 (角川文庫)

紳士の黙約 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
サンディエゴの探偵にして地元屈指のサーファー、ブーン・ダニエルズは、“紳士の時間”を海で楽しむサーフィン仲間から、妻の浮気調査の依頼を受ける。同じころ、爽やかな人柄で愛されるサーファーのK2が、ダイナーで殴り殺された。人気者の死に街中が悲しむなか、加害者の弁護士に雇われたブーンは調査を開始、真相は別にあると直感。そして危険過ぎる事件の内実が、カリフォルニアの太陽の下に晒される時が訪れる――。


「夜明けのパトロール」 (角川文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾です。
前作を読んだのは2014年5月。6年以上読む間が空いてしまいました。

文体といい、会話といい、くつろいだ感じが漂うのがこのシリーズの魅力と思っていて、そこに変わりはないのですが、主人公ブーンの立ち位置から、「夜明けのパトロール」 よりも緊迫した感じがします。
なにせ、仲間に背を向けるような捜査をするのですから。
そこに、恋人候補(?) のペトラが絡むのですから、なおさら。
ブーンを取り巻く人物たちがいいのは変わらずで、であるからこそ一層、ブーンの置かれる状況が厳しいものであることがこちらに響いてきます。
探偵は孤高の騎士である、というわけですね。

同時に取り組む調査が、名士で知り合いの金持ちの妻の浮気調査。
卑しき町を行く、卑しき探偵。

そう、わりと普通のハードボイルドの物語に大きく近づいた一編となっています。
ウィンズロウのハードボイルドがおもしろいのは、「ストリート・キッズ」 (創元推理文庫)から始まるニール・ケアリー シリーズやその他の作品群で照明済ですから、安心して世界に浸ればいいんですよね。

楽しみなシリーズなのですが、その後続編は出ていなそうです。
登場人物たちとまた逢いたいので、続編希望です。


<蛇足>
「名探偵がさらに活躍して、ブレインガムはじつはJFK暗殺犯だった、なんていう新事実を掘り起こしかねないからな。あるいは、リンドバーグの赤ん坊の誘拐事件にも関わっていたとか? ユダヤの群衆を煽ってキリストを磔にしたのもブレインガムだと割り出したんだろ、ブーン?」(233ページ)
こういうセリフが早い段階で登場します。望まない事実を探り当てたブーンに対して弁護士が嫌味?を言うところです。
おもしろいな、と思っていると、
「この警部補は、ケネディー暗殺もリンドバーグ愛児誘拐事件もイエス・キリストの磔も、ブーンを犯人に仕立てたがる。」(339ページ)
という地の文が登場しますーー地の文とはいってもジョニーという登場人物の視点ですが。
とすると、弁護士とジョニー双方が同じような感覚を持っている、ということですよね。このふたり、相当性格も育ちも違いそうなのですが。
こういう言い回し、アメリカでは一般的なのでしょうか? まさかね(笑)。






原題:The Dawn Patrol
著者:Don Winslow
刊行:2008年
訳者:中山宥



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