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大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤 [日本の作家 や行]


大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 山本 巧次
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/05/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
江戸と現代で二重生活を営む元OLの関口優佳=おゆうは、小間物問屋の主人から、息子が実の子かどうか調べてほしいと相談を受ける。出生に関して、産婆のおこうから強請りまがいの手紙が届いたのだという。一方、同心の伝三郎も、さる大名の御落胤について調べる中で、おこうの行方を追っていた。だが、やがておこうの死体が発見され――。ふたつの時代を行き来しながら御落胤騒動の真相に迫る!


「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」 (宝島社文庫)に続くシリーズ第2弾です。
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」 (宝島社文庫)の感想を書けずじまいなのですが......

江戸を舞台にしているのですが、主人公であるおゆうは、現代のOLでタイムトンネルを経由して現代と江戸をいったりきたりしているという......
なんとも人を食った設定ですが、これがとてもおもしろい!
第13回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」 から始まったシリーズは好評のようで、次々と続刊が出ています。
この後
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 北斎に聞いてみろ」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ドローン江戸を翔ぶ」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁掘のおゆう 北からの黒船」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 妖刀は怪盗を招く」 (宝島社文庫)
と毎年出ているようですね。

本書の帯に
「チャーミングでユニーク。掟破りの小説だ」
という池上冬樹のコメントが載っていますが、まさにその通り。とてもチャーミングです。
掟破りというのは、おそらく、現代のOLを主人公にしているので、時代考証をさほど厳密にする必要がない、ということを指しているのでしょうね。
たとえば
『「あらま、源七親分。また留守している間に玄関番してくれてんですか」
「よお、おゆうさん。また勝手に入っちまって悪いな。しかし、武家屋敷じゃあるまいしこれを玄関と呼ぶかい」
 源七はわざとらしく周りを見回してニヤニヤした。そうだった。江戸時代では式台のある立派な入口しか玄関とは言わない。あらゆる家の表口を玄関と言うようになるのは明治以降だ。平成と江戸時代のこういう感覚の違いは、口に出すとき充分気を付けないといけない。』(194ページ)
なんてところがあって、ここは十分時代考証を意識した部分ではありますが、これ以外の場所で少々変なことがあっても、平成のOLが見たこと、感じたことですからね、という言い訳が成立するようにできています。

また、推理ものという観点でいうと、掟破りというのは、DNA鑑定とか指紋とか、こっそり現代の技術で捜査を進めるところもそうですね。大胆な捕り物帳だこと。
それをどうやって江戸の人の納得するかたちに落とし込んでいくか、というのが見どころになる、というなかなかおもしろい狙いが出てくる作品です。
今回もDNA鑑定とは違う方向へ進めていってしまう伝三郎はじめとする江戸の捜査陣にやきもきする、という展開に。
(そういえば、余計なことですが、指紋の取り扱いには、不手際があるような気がします。ついているはずの指紋がなかったりします。まあ、これは簡単に修正がきくミスかとは思いますが)

事件そのものは、大名の御落胤、お家騒動、赤ん坊のすり替え、と来たうえで、DNA鑑定で(読者とおゆうには)決着がついているので、なんとなく作者の狙いに見当がつくようになっていまして、黒幕?の正体含めてさほど意外感はないのですが、物語が転がっていく面白さを十分に堪能できるようになっています。
もうちょっと単純なプロットにしたほうが効果的な気がしなくもないですが、さっと読めて楽しい。
好調なシリーズを追いかけていきたいと思います。


<蛇足>
「江戸で指折りの小間物屋と言えば、せいぜい数軒です。」(121ページ)
間違っていないというか、まさにその通りなんですが、「指折り」が「せいぜい数軒」って、当たり前すぎて言わないだろうな、と思って笑ってしまいました。



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