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兇悪な街 [日本の作家 な行]


私立探偵 左文字進 兇悪な街(小学館文庫)

私立探偵 左文字進 兇悪な街(小学館文庫)

  • 作者: 西村 京太郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/10/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
 ロスアンゼルス生まれの都会派探偵・左文字進は、十津川警部とともに西村作品の名キャラクターとして多くのファンを魅了してきた。そして本作――。左文字の親友である若き私立探偵・川村が射殺される。川村の死の直前、共にいた女とは……。次々と起こる殺人を繋ぐ糸は何か?
 追跡行の途次、忽然と姿を消した左文字の愛妻・史子。都会の闇に蠢くハイテクを駆使した姿なき殺人者を前に窮地に陥る左文字。西村京太郎が生んだ華麗なるキャラクター、私立探偵・左文字進が、またも読者を虜にする長編推理小説、待望の文庫化。


西村京太郎を読むのは本当に久しぶりです。
手元の記録によると、2004年に「黄金番組(ゴールデンアワー)殺人事件 」(徳間文庫)を読んで以来で、約17年ぶりですか。

西村京太郎といえば、鉄道ミステリの大家で、続々とおびただしい数の作品を発表しておられます。
いまでは鉄道ミステリばかり書いておられるようなイメージになっていますが、鉄道ミステリを連発されるようになる前は、非常にバラエティに富んだ作品を発表される作家でした。
大胆な設定の広い意味の誘拐ミステリも、西村京太郎が得意としていたジャンルの一つで、この「兇悪な街」(小学館文庫)に登場する名探偵左文字進は、このジャンルを代表する探偵でした。

どうして久しぶりに西村京太郎を読もうと思ったかというと......
赤川次郎を愛読し、ずっと追いかけてきているのですが、赤川次郎の作品数は600を超えています。
おそらくそれ以上の多作家である西村京太郎は何冊くらい書かれているのだろう、とふと思ったのです。
西村京太郎研究会というHPがありまして、そこに著作リストがあります(いつも通り、勝手リンクです。すみません)。
それを拝見したら2020年7月時点で630冊。
あれ? 意外と少ない。--少ない、というのはおかしいですね。赤川次郎対比、圧倒的に作品数が多いだろうと思っていたので、それほど差がないことに驚いたのです。
興味を持ったついでに、
赤川次郎は、
608作目 「三毛猫ホームズの復活祭」 (カッパノベルス)(感想ページはこちら)が2018年5月17日。
609作目 「吸血鬼と伝説の名舞台」 (集英社オレンジ文庫)(感想ページはこちら)が2018年7月20日。
一方西村京太郎は、
608作目 「能登花嫁列車殺人事件」 (カッパ・ノベルス)が2018年6月30日
609作目 「十津川警部 海の見える駅――愛ある伊予灘線」が2018年7月17日。
ですから、デビューが相当早かった西村京太郎を赤川次郎が作品数で抜いてからは2018年7月に西村京太郎が抜き返すまで、赤川次郎の方が多かったのですね、多分。

鉄道ミステリの最初のころまでは、まめに読んでいたのですが、作品数が増えてしまって追いきれなくなって....
それがまあ、こういう風に興味を持ったので、久しぶりに読んでみようかな、と。読むなら、鉄道ミステリじゃないな、と。
それで選んだのが左文字進が登場するこの「兇悪な街」(小学館文庫)だったわけです。
(西村京太郎ほどの人気作家でも品切・絶版が多いのですね)

読みだしてすぐ、懐かしい気分に浸りました。
粗い。雑だ。
西村京太郎って、いい意味でも悪い意味でも、雑・粗い、なんですよね。懐かしい。
突っ込みどころ満載ですが、いくつか、下の方にいつものごとく<蛇足>として書いておきます。

あらすじにもある「ハイテクを駆使した姿なき殺人者」というのも、いまどきハイテクって、と笑えます。
しかも、中身を読んでみると、ハイテクと称されることが、ちっともハイテク感なし。
おそらく西村京太郎の主要ターゲット顧客層である中高老年のおじさまに合わせて、ハイテク度合いを落としたのでしょうね(笑)。
166ページに、珍妙と呼んでよいトリック(?)が披露されますが、笑ってしまいます。

と、こう書くとダメダメっぽく思えるかもしれませんが、そこはやはりベテラン作家というか、西村京太郎らしいというか、細部はいい加減なんですが、全体を通しての発想とか筋運びは、なかなか面白いんですよね。
人気作家になったのも、なるほどな、と思えます。
(これでちゃんと細部を詰めてくれたら、というのはないものねだりでしょうね。西村京太郎は、売れっ子になる前からこんな感じでしたし)

久しぶりに読んで、悪くなかったですね。もっとも、お勧めするか? と聞かれたら、お勧めはしませんね。そこかわり、昔の作品を読まれることをお勧めします(笑)。


<蛇足1>
「銀行も、アメリカ系のものだった。
 左文字は、期待して、通帳を調べた。」(16ページ)
「中を調べたところT銀行の預金通帳が、見つかったが、残高は、五万三千円だった。
 T銀行はアメリカ系の銀行である」(34ページ)
アメリカ系の銀行だと日本の支店であっても通帳を出すところ、ないんじゃないでしょうか?

<蛇足2>
「高い物件は億ションでしたから、買うにしても、下の方の三千万クラスの部屋だと思います」(24ページ)
月島の超高層マンションの話です。三千万クラスの部屋、ありますかね? 安い部分でも、もっと高くて、三千万台では手に入らない気がしますね......

<蛇足3>
「池田社長を知らないといったでしょう。でも、池田工業が、作っている携帯電話を、自分のところで、作っているロボットに、組み込んでいるといっていたわ。そういう時は普通、社長同士で会って話したりするじゃないかしら。」(98ページ)
会社の規模によっては、そうとは限らない気がしますが。

<蛇足4>
「塚原代議士は、無関係を、主張したが、殺された芸者の家族が、塚原代議士を告訴した事件である。地裁では、証拠不十分で、無罪の判決が出たが、検察側が控訴した。」(119ページ)
告訴ではなく、告発でしょうか?
なんだか文脈がわかりにくい文章です。

<蛇足5>
!!!! 気にすることはないと思いますが、若干ネタバレ気味なので、気になる方は読まないで !!!!
「たった一人の人間を、殺すのに、億単位もの金を、払おうとする人間がいるだろうか?」(225ページ)
億単位は確かにすごい金額ですが、人の命と比べると、複雑な気分になるセリフですね。





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