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白い僧院の殺人 [海外の作家 カーター・ディクスン]

白い僧院の殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

白い僧院の殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/06/28
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
渡英した女優マーシャ・テイトをめぐり、契約が残っていると連れ戻しに来たハリウッドの関係者、ロンドンでマーシャ主演の芝居を企画するブーン兄弟、芝居ばかりか私生活の後援もしかねない新聞社主らが不穏な空気を醸し出す。その不穏さを実証するように、スチュアート朝の雰囲気に浸るべく訪れたブーン家所有の屋敷〈白い僧院〉の別館で、マーシャは無惨な骸と化していた……。


足跡のない殺人の代表的な傑作が、新訳で登場しました(といっても、例によって積読してしまって、新訳が出たのは2019年6月ですが)。
当然(?)、旧訳で読んでいます。
初めて読んだとき、謎解きのあまりの鮮やかさにびっくりした記憶があります。
その後さまざまな作家が足跡のない殺人を書いていますし、この「白い僧院の殺人」 (創元推理文庫)を応用した作品も多いですから、ひょっとしたら今読むとトリックに見当がつきやすくなっているかもしれませんが、カーが技巧を凝らしているので、まだまだこの傑作は色褪せない、どころか、まずまず光を放っているのではないでしょうか。
H・M卿がさらっとポイントを明らかにするシーンで、ぜひびっくりしていただきたいと思います。
帯に「“雪の密室”の最高峰 ここにあり!」
とありますが、まったくその通りだと思います。

足跡のない殺人、あるいは雪の密室、いいですよね。
「密室だけなら鼻歌交じりでやっていけるがな。ドアに外側から鍵を掛ける細工の一つや二つ、誰でも心得とる。針と糸のちょっとした仕掛けで差し錠を飛び出させることができるし、鍵穴の軸はペンチで回せる。蝶番を外せば錠には手もつけずにドアを開け閉めできる。だが、差し渡し百フィートに何の跡もない深さ半インチの雪で囲まれた密室という、単純かつ明瞭、呆れ返った問題ときては……」(198ページ)
とH・M卿が言っている通り、ステキな謎です。

細部は忘れてしまっているので、再読でも十二分に楽しめましたし、中心となる足跡トリックの切れ味には、やはり、ほれぼれとしてしまいます。
ぜひ!


<蛇足1>
「カーテンは引かれておらず、ベネチアンブラインドも上がったままだ。」(58ページ)
以前、「小鬼の市」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)で、ベネシャン・ブラインドという訳が使われていたので、注目してしまいました。

<蛇足2>
朝顔口の窓(66ページ)というのが模式図つきで(67ページ)で出てきます。
お城や教会などで見られるものですね。朝顔口っていうんですね。
なんとなく男子トイレの便器を連想してしまって、笑えてしまいました。

<蛇足3>
「二分以内に着替えてご用を伺うのが、規則と申しますかモーリスさまのお決めになったことでーー」(160ページ)
二分で着替えもするというのは無理な気がしますね。
フランス語で「ちょっと」というときに deux minutes (二分)と言ったりするので、その連想でしょうか?



原題:The White Priory Murder
著者:Carter Dickson
刊行:1934年
訳者:高沢治




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