私の命はあなたの命より軽い [日本の作家 近藤史恵]
<カバー裏あらすじ>
東京で初めての出産を間近に控えた遼子。だが突如、夫が海外に赴任することになったため、実家のある大阪で里帰り出産をすることに。帰ってみると、どこかおかしい。仲が良かったはずなのに誰も目を合わせようとしないし、初孫なのに、両親も妹も歓迎してくれていないような……。私の家族に何があったのか?
出産を控え、実家へ帰ろうとした主人公が、実家の様子に違和感を覚える、という物語です。
ミステリの読みすぎですね。
「私の家族に何があったのか?」の部分、相当早い段階で見当がついてしまいました。
それでも、この作品は、とてもサスペンスフルに感じました。
すごい。
あとがきで作者は
『この本が出たばかりのとき、何人かの男性にこんな感想を言われた。
「いやあ、女の人ってこわいですね」
あれれ? と思った。わたしはそんな話を書いたっけ。』
と書いていますが、ぼくもここを読んで、あれれ? と思いました。
女の人がこわい、というストーリーではないから、です。
確かにこの「私の命はあなたの命より軽い」 (講談社文庫)は恐ろしい物語です。
でも、それは女の人の怖さを描いた物語なのではなく、常識とか思い込みとか体面とか、さまざまなことが絡み合った怖さです。
主人公の父や母の気持ちや行動も、はたして責めて良いものかどうか。
タイトルにもある通り、命の重さが、迫ってきます。
そんななか、ラストの怖さは、ちょっと質が違いますね。
このラスト、それまでの物語のトーンと違った手触りになっていて、ぎょっとします。
<蛇足>
さらっとインターネットバンキングで送金したというエピソードが書かれている(214ページ)のですが、高校生って、銀行口座、持っていますか?
持っていてもおかしくはないかもしれませんが、未成年ですので持っていない方が自然ではないかと思います......??
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