賛美せよ、と成功は言った [日本の作家 石持浅海]
<カバー裏あらすじ>
十五年ぶりに再会した武田小春と碓氷優佳は、予備校時代の仲間が催す同窓会に参加した。ロボット開発事業で名誉ある賞を受賞した同期・湯村勝治を祝うためだった。和やかに進む宴の最中、出席者の一人、神山裕樹が突如ワインボトルで恩師の真鍋宏典を殴り殺してしまう。優佳は神山の蛮行に“ある人物”の意志を感じ取る。小春の前で、優佳と“黒幕”の緊迫の攻防が始まった――。
ここから、3月に読んだ本の感想とです。
ちんたらブログを更新していてすみません。
「扉は閉ざされたまま」 (祥伝社文庫)
「君の望む死に方」 (祥伝社文庫)
「彼女が追ってくる」 (祥伝社文庫)(感想ページはこちら)
「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」 (祥伝社文庫)(感想ページはこちら)
に続く、シリーズ第5弾で、前作「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」 の15年後という設定。
「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」 のラストは非常に印象的でしたが、そこで「優佳。じゃあね」というせりふで優佳と別れを告げた上杉小春(この「賛美せよ、と成功は言った」 (祥伝社文庫)では結婚していて武田小春と姓が変わっています)が、優佳と再会します。
碓井優佳が出席する同窓会というだけで不穏なものを感じるのはシリーズ読者の悪い癖ですが(笑)、想定通り事件は起きます。
視点人物というのは結構盲点になるのですが(だからこそ、そこを突いたミステリの名作が書かれているのですが)、武田小春という語り手も、なかなかのくせ者です。
「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」 では、優佳を描くための語り手だと思っていて、そのため優佳の陰に隠れる格好だったと思うのですが、この「賛美せよ、と成功は言った」 で本領発揮ですね。
優佳を見抜くあたり、武田小春がただものではないことはわかっていたはずなのですが......
小春が優佳をどう捉えていたかは、ある意味「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」 のネタバレになるので控えますが、37ページで簡潔にまとめられています。
ただ、15年経ったからか
「けれど、大人になった今ならわかる。人間は、大なり小なり優佳のような行動をとってしまうものだのだと。」(37ページ)
と語られています。
なので本書は犯人(と一応呼んでおきます)と優佳の対決というのに加えて、小春がそこにどう絡んでいくのか、というのところも読みどころです。
特に後半、狙いを定めて攻防が始まると、ほぼ会話のみという展開がむしろスリリング。
とても楽しめましたね。
今回もエンディングは衝撃的です。
わかりにくいタイトルの意味はラストで優佳によって明かされます。
最後に優佳の結婚相手が明かされて、優佳が小春をうちに招待します。
まさかそこで事件は起きないですよね!?
シリーズ続刊を強く、強く希望します。
2021-04-26 00:00
nice!(12)
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