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シャーロック・ホームズの冒険 [海外の作家 た行]


シャーロック・ホームズの冒険―新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

シャーロック・ホームズの冒険―新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/01/01
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ホームズ物語は、月刊誌『ストランド』に短編が掲載されはじめてから爆発的な人気を得た。ホームズが唯一意識した女性アイリーン・アドラーの登場する「ボヘミアの醜聞」をはじめ、赤毛の男に便宜を図る不思議な団体「赤毛組合」の話、アヘン窟から話が始まる「唇のねじれた男」、ダイイングメッセージもの「まだらの紐」など、最初の短編12編を収録。第1短編集。


本の感想は、7月4日に書いた「半席」 (新潮文庫)(感想ページはこちら)以来ですが、実は?「半席」 までがロンドンで読んだ本でして、この「シャーロック・ホームズの冒険」 (光文社文庫)は日本へ帰る機中で読み始めて、日本で読み終わりました。
また4月に読んだ最後の本でもあります。
4月に読めたのは、たった3冊......

ホームズ物を大人物で読み直している第3弾、なのですが、ロンドンにいる間には結局
「緋色の研究」 (光文社文庫)
「四つの署名」 (光文社文庫)
の2冊しか読めませんでした。3年近くいて、たった2冊......

今回の「シャーロック・ホームズの冒険」(光文社文庫)は、まさに不朽の名作といった貫録を感じます。

「ボヘミアの醜聞(スキャンダル)」
「赤毛組合」
「花婿の正体」
「ボスコム谷の謎」
「オレンジの種五つ」
「唇のねじれた男」
「青いガーネット」
「まだらの紐」
「技師の親指」
「独身の貴族」
「緑柱石の宝冠」
「ぶな屋敷」

12編収録ですが、傑作揃いです。
アイリーン・アドラーが登場する冒頭の「ボヘミアの醜聞(スキャンダル)」からして印象深いですし、その次に、「赤毛組合」が控えている。
「赤毛組合」って知らない人、いないんじゃないでしょうか?
冒頭から、全速力でかっ飛ばしています。
「緋色の研究」 (光文社文庫)「四つの署名」 (光文社文庫)で顕著だった、ロマン色というのか、強い物語性が、短編ということで抑えられて、ミステリとしての骨格がすっきり浮かび上がってくるのがよかったのだと思います。
その後のどんどん複雑化していっている現代ミステリと比べると構図が単純ではありますが、どの作品も、すっきりしたツイストが盛り込まれていて、そりゃあ、当時のロンドンっ子も夢中になったことでしょう。

ホームズの前にホームズなし、ホームズの後にホームズなし、です。

ホームズの職業は諮問探偵ということでしたが、割と一般人(?) からの依頼も引き受けていますね。
「報酬のことなら心配無用です。ぼくにとっては仕事そのものが報酬でしてね。ご都合のいいときに実費だけお支払いいただくだけでかまいません。」(「まだらの紐」313ページ)
なんて言ったりしています。
本当に、ホームズの収入源が心配です(笑)。

またホームズは「ぶな屋敷」で、彼の活躍譚を発表していワトソンに非難を浴びせているのですが、
「ふん! いいかい、一般大衆に--歯を見て織物工だと見抜けず、左手の親指を見て植字工だと見破れないような鈍感な一般大衆にだよ、分析や推理の美しさが理解できるものか!」(487ページ)
は、言い過ぎではないでしょうか?(笑)
ホームズ物語を褒めそやしたのは、ほかならぬその一般大衆ですよ、ホームズさん!

原書刊行順に読もうと思っているので、次は「シャーロック・ホームズの回想」 (光文社文庫)です。
楽しみ。


<蛇足1>
「ボスコム池というのは、ボスコム谷を流れている川が広がってできた、小さな沼だ」(141ページ)
えっと、池なのでしょうか? 沼なのでしょうか?
「クロイドン発12時30分」 (創元推理文庫)感想の蛇足にも書きましたが、池と沼の違いについて、池は人工、と聞いたことがあるので、自然にできた沼を、呼び名としてはボスコム池と呼んでいる、ということでしょうか?

<蛇足2>
「都会では世間の目というものがって、法律の手の届かないところを補ってくれる。」
「ところが、あのぽつんぽつんと孤立した農家はどうだい。それぞれがみな、自分の畑に取り囲まれているし、住んでいる者にしても、法律のことなんてろくに知らないような人たちだ。ぞっとするような悪事が密かに積み重ねられていたって不思議ではないくらいだ。しかも、そのまま発覚せずにすんでしまうのさ。」(504ページ)
都会と田舎を対比してホームズが語るシーンですが、最近は?都会も無関心がはびこって、恐ろしいところになってきていますね。時代の違いでしょうか?



原題:The Adventure of Sherlock Holmes
作者:Arthur Conan Doyle
刊行:1892年(原書刊行年は解説から)
訳者:日暮雅通














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