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白戸修の事件簿 [日本の作家 大倉崇裕]

白戸修の事件簿 (双葉文庫)

白戸修の事件簿 (双葉文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2005/06/01
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
どこにでもいる善良な大学生・白戸修にとって東京の中野は鬼門である。殺人の容疑者が飛び込んで来たり、ピンチヒッターで行ったバイトが違法だったり、銀行で強盗に銃を突きつけられたり……。だが次々に事件を解決する彼を人は「巻き込まれ探偵」「お人好し探偵」と呼ぶようになる。小説推理新人賞受賞作を含む、ちょっと心が優しくなれる癒し系ミステリー。


大倉崇裕のデビュー作「ツール&ストール」を含む短編集です。
単行本の時のタイトルは「ツール&ストール」だったんですよね。

「ツール&ストール」
「サインペインター」
「セイフティゾーン」
「トラブルシューター」
「ショップリフター」
の5編収録です。

これ、再読でして、第2短編集「白戸修の狼狽」 (双葉文庫)を読む前に、復習しておこうと思いまして。
(といいつつ、「白戸修の狼狽」をまだ読んでいませんが)

主人公である名探偵(?)白戸修のキャラクターがいいんですよ。
タイプは違うのですが、パーネル・ホール「探偵になりたい」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)で始まるシリーズに出てくるスタンリー・ヘイスティングスを思い出しました。

第一話「ツール&ストール」が小説推理新人賞の受賞作です。
ツールとストールというのは、スリの用語らしいです。
白戸修はまさしく「巻き込まれ」で、事件を解決する、のではなく、勝手に事件は解決します。
勝手に、というのはちょっと変ですね。白戸修の思惑などと関係なく、というべきでしょうか。

巻き込まれ型の設定なので、普通だと白戸修を主人公に据えた連作というのはないところなのですが......

第二話「サインペインター」では、やむなく引き受けたバイトの代役で事件に巻き込まれます。
無法の看板を街路樹や電柱に括り付ける「ステ看貼り」。
同業者(?)との競り合いとか、警察との摩擦とか、快調な巻き込まれぶりです。

第三話「セイフティゾーン」で巻き込まれるのは、銀行強盗。
立て籠もる犯人に立ち向かう人質、ということで映画「ダイ・ハード」を連想してしまいましたが、白戸修が立ち向かう、というのではなく、立ち向かう一人の人質に白戸修が巻き込まれる、という構図がいい。

第四話「トラブルシューター」は、間違い電話が発端。
こんなかたちで巻き込まれていくやつなんかいない、と思うのですが、これまでの白戸修の活躍を見てきた身からすると、白戸修なら巻き込まれてしまうなぁ、と思えてしまうから不思議です。
今回巻き込まれるのはストーカー騒動。
現実にこういうストーカーがいるのかわからないのですが、納得してしまったのは、視点人物の白戸修が極度のお人好しであることを除くと、きわめて普通の人物だから、かもしれません。

最終話の「ショップリフター」は、まさに万引きがテーマで、白戸修は万引きGメン(Gウーメン?)にいいように使われます。
スリと万引き、近いからか、第一話で登場した人物がちょこっと登場するのもご愛敬。
愛すべきシリーズになってきていると確信できます。

あらすじには「次々に事件を解決する彼」と書かれていますが、かならずしも白戸修は探偵役を務めてはいません。
事件解決に至るバラエティに富む道のりもこのシリーズの見どころだと思います。








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