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黄金の烏 [日本の作家 あ行]


黄金の烏 八咫烏シリーズ 3 (文春文庫)

黄金の烏 八咫烏シリーズ 3 (文春文庫)

  • 作者: 智里, 阿部
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/06/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。その行方を追って旅に出た日嗣の御子たる若宮と、彼に仕える雪哉は、最北の地で村人たちを襲い、喰らい尽くした大猿を発見する。生存者は、小梅と名乗る少女ただ一人――。八咫烏シリーズの第三弾。


松本清張賞を受賞した「烏に単は似合わない」 (文春文庫)(感想ページはこちら)から始まる八咫烏シリーズ第3弾です。
第2弾である「烏は主を選ばない」 (文春文庫) (感想ページはこちら)から読むのにずいぶん間が空きましたが、ロンドンに持っていくつもりが間違えて日本において行ってしまったからで、日本に帰ってきたので続けて読んでいきたいと思っています。

今回は、雪哉の故郷垂氷郷(たるひごう)あたりで起こる事件-頭がおかしくなって怪力で人(烏)を襲う-を皮切りに、烏対大猿、烏の表社会対裏社会(谷間-たにあい-)、が描かれます。
虐殺現場に残された少女を怪しむところとか、ちゃんと雪哉のところへ若宮が宮廷からやってくるところとか、手堅いんですよね。
すごく心地よい。

この事件の構図やなりゆきがじゅうぶん面白いのですが、なによりこの作品で興味深いのは、この烏たちの世界(山内)のありようが、次第次第に読者に明らかになってくるところです。
外の世界、として人間がいる、という設定なのですね。
「山内に伝わる伝説では、八咫烏は山神に率いられて、この地にやってきたとされている。それにしても過剰ではないかと思えるほどに、山内にあるものは、外界にあるものを自分達の都合に合わせて、作り変えたようなものばかりだったのだ。外界を知る度に、若宮は漠然とだが、自分達の先祖は、山内に外の世界を再現しようとしていたのではないだろうか、と思うようになっていた。」(239ページ)
いいではありませんか、こういうの。物語世界がどんどん拡がっていく気配がします。
そしてそれと平仄を合わせるように、金烏、若宮のあるべき理由が考察されていきます。

ファンタジーは読みつけないのですが、こういう風に世界が構築されているのを垣間見ていくのはとても楽しいですね。物語の展開に合わせて、世界が姿を現していく場合は特に。
シリーズ展開でおそらくどんどん明らかになっていくのでしょう。

このあともシリーズは順調に続いているので、楽しみです。


<蛇足>
毎度のことで恐縮ですが、
「報告を鑑みるに」(287ページ)
とあるのが気になりました......
もう気にするほうがおかしいというか、気にしても仕方ないことだとわかっているのですが、気になるものは気になるんですよね。



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