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緑のカプセルの謎 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


緑のカプセルの謎【新訳版】 (創元推理文庫)

緑のカプセルの謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/10/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
小さな町の菓子店の商品に、毒入りチョコレート・ボンボンがまぜられ、死者が出るという惨事が発生した。一方で村の実業家が、みずからが提案した心理学的なテストの寸劇の最中に殺害される。透明人間のような風体の人物に、青酸入りの緑のカプセルを飲ませられて――。食いちがう証言。事件を記録していた映画撮影機の謎。そしてフェル博士の毒殺講義。不朽の名作が新訳で登場。


7月に読んだ9冊目の本は、ジョン・ディクスン・カーの
「緑のカプセルの謎」 (創元推理文庫)
奥付を確認すると2016年に出た新訳です。
旧訳でも読んでいますが、例によってあまり覚えていない......

引用したあらすじにも書いてありますが、
この作品はフェル博士による毒殺講義が有名ですね。264ページからの第18章「毒殺者とは」が該当します。
ただ、毒殺講義といっても、「三つの棺」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(感想ページはこちら)の密室講義とは違って、毒殺のトリックというよりは、毒殺者のタイプ分け、ですね。
とはいえ、この分類が犯人あてに寄り添っているのが見事です。

オープニングはポンペイの遺跡ですが、すぐに舞台はイギリスの小村ソドベリー・クロスへ。
事件は二つ。です。
菓子店の商品に、毒入りチョコレート・ボンボンがまぜられた事件と、実業家マーカスがみずからが提案した心理学的なテストの寸劇の最中に殺害される事件。
菓子店のほうは、ちょっと待ってくれ、と言いたくなるようなトリックで笑ってしまうのですが、寸劇中の殺人は素晴らしいですね。
事件の模様がフィルムに収められている、というのもセンセーショナルでいい。
傑作だと思います。


<蛇足1>
「リコリス味のグミ、板チョコ、ブルズアイのキャラメルはよく売れたが、チョコレート・ボンボンはその日、ここで初めて売れたそうだ」(33ページ)
日本ではなじみがないですが、リコリス(licorice)って、ヨーロッパでは割と普通に売られているお菓子です。ここではグミとありますが、キャンディタイプも多いですね。
甘草の一種で作っているらしく、激マズです(笑)。
カラフルなものもあるようですが、黒いもののほうが一般的だった気がします。
怖いものみたさ、世界のまずいもの体験として、旅行に行かれたらお試しあれ。


<蛇足2>
「フェル博士は心のこもった地鳴りのような声で挨拶を返し」(177ページ)
いったいどんな声なんでしょうね(笑)。
心のこもった地鳴り!? (「心のこもった」というのは「地鳴り」ではなく「声」にかかるのだとは思いますが)

<蛇足3>
タイトルになっている「緑のカプセル」そのものには謎はなかったような......??
また帯に「名探偵フェル博士vs.“透明人間”の毒殺者」とあるのも、あんまり的を射た惹句ではないような気がします。




原題:The problem of the Green Capsule
著者:John Dickson Carr
刊行:1939年
訳者:三角和代






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