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わたしのノーマジーン [日本の作家 初野晴]


([は]7-1)わたしのノーマジーン (ポプラ文庫 日本文学)

([は]7-1)わたしのノーマジーン (ポプラ文庫 日本文学)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2013/06/05
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
終末論が囁かれる荒廃した世界──孤独に生きるシズカの前に現れたのは言葉を話す不思議なサルだった。シズカを支えるためにやって来たという彼の名は、ノーマジーン。しかしその愛くるしい姿には、ある秘密が隠されていた。壊れかけた日常で見える本当に大切なものとは。


更新に間が空いてしまいました。
今年の7月に読んだ10冊目の本です。
初野晴のノン・シリーズ作品で、終末の世界を舞台にしています。
ハルチカシリーズのイメージが強いですが、この「わたしのノーマジーン」 (ポプラ文庫)のようなファンタジックな作品世界も、初野晴の持ち味です。

この作品の終末(感)は、戦争によってもたらされたものではないのですね。
「世界の各地で熱波や豪雨などの異常気象が頻発」(12ページ)したからなんですね。そして終末論が流布する。けれども人々は、終末論を信じたり信じなかったりさまざまながら、普通の生活を続けているような状況。

主人公(?) のシズカは足が不自由で、注文したはずの介護介助ロボットは届かず、かわりにやってきたのは、言葉を操る赤毛の小さいサル、ノーマジーン。
シズカと無邪気なノーマジーンとの、二人の共同生活が始まる。

二人のエピソードは、あらすじから想像がつくかもしれませんが、微笑ましい、心温まると言っていいようなもの。
映画『Some Like It Hot』のセリフ
「Nobody's perfect(完全な人間なんていない)」
の聞き間違いとか、素敵ですね。(172ページ~)

そのエピソードが積み重ねられて、終末というのに、(それだからこそ、かもしれませんが、)柔らかな世界を紡いでいく。
こういう静謐な世界観、好きなんですよね。ずっと浸っていたい気になります。

第二部に入ると、新たな視点人物が登場します。
「ある賊徒の視点」と目次にもありますが、この賊徒が重要な役割を果たします。
出来上がっているシズカとノーマジーンの世界をめぐる秘密が、この第二部で、薄皮をはぐように、明かされていく。

その秘密は(小説である以上)当然のことながら、シズカとノーマジーン、ふたりの関係性を変えてしまい得るもの、なわけで、どうなってしまうのだろう、とドキドキ、心配しながら読み進めることになります。

エピローグで再びシズカの視点に戻ります。
この結末は、物語的にはハッピーエンディングなのでしょうね。
こうなることを祈りながら読んでいました。
でも、寂しさを内包している。
なぜなら
「わたしたちには必ず終わりがくる。
 わたしたちだけではなく、動物にも、花にもーー」(296ページ)
だから。


<蛇足>
この本、サイン本が売られていたのでそれを買いました。
初野晴さんのサインもかわいいのですが、横にリンゴのスタンプが添えられています。
さらに、この本だからだと思いますが、おさるさんのシールが貼ってあって、とてもかわいい。
すごく得した気分です!
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