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アメリカ銃の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


アメリカ銃の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

アメリカ銃の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/07/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ニューヨークのスポーツの殿堂〈ザ・コロシアム〉に二万の大観衆を集め、西部劇の英雄バック・ホーンのショウが始まる。カウボーイたちの拳銃が火を噴いた次の瞬間、そこには射殺死体が転がっていた。だが不可解なことに、被害者のものを含む四十五挺の銃はいずれも凶器ではない。客席にいたエラリーは、大胆不敵な犯罪の解明に挑む! 〈国名シリーズ〉第六弾。


あまりに更新をさぼりすぎているので、なにをどこまでというのが分かりにくくなってしまっていますが、前回感想を書いた「焦茶色のナイトガウン 杉原爽香:47歳の冬」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)までが昨年7月に読んだ本でした。
今日は、読了本落穂拾い。
手元の記録によれば2017年11月に読んだようです。
エラリー・クイーンの「アメリカ銃の謎」 (創元推理文庫)。中村有希さんによる新訳シリーズです。

この作品、国名シリーズの中では軽く観られていまして、評価もさほど高くない。
旧訳版で昔読んだ時、あまりピンと来ず。あまりのピンと来なさに、しばらくたってから再読までしたという。それでもピンと来なかった。
今回新訳が出たので再再読して、果たしてどうか、というところだったのですが......

今まで気づかなかった自分をどつき回したくなりましたが、帯にも
「大観衆の前で消えた凶器 西部劇の英雄、凶弾に死す」
とあるように、謎が派手なのです。
衆人環視のロデオの最中に起こる殺人。しかも凶器が見つからない。

エラリー・クイーンの作品はこの作品まで、謎そのものは地味だったのです。
残された手がかりから論理で犯人を追い詰める名探偵クイーンの手腕が見どころなわけで、事件そのものは派手である必要はない。むしろ事件は地味なほうが、ロジックの美しさが際立ちやすいような。
ところが、この作品では一転して派手。
二万人もいる観客含めた関係者からどうやって容疑者を絞り込んでいくのか。
途方に暮れるような内容で、なかなか容疑者も絞り込めない、と思っていると、エラリーは鮮やかに特定していきます。素晴らしい。
実はこのロジックだけは昔読んだ時から覚えていまして、それだけ印象深かったということですが、これこそがこの作品の特徴であり特長なのだと思いました。
このロジックは、もっと地味な設定でも使えます。でも、ロデオ会場という大掛かりな舞台に映える!
派手な事件に似合うロジックというべきか、鋭利なロジックに似合う派手な事件というべきか、いつもの地味な設定を離れて輝く、そのことを十分意識した作品だったんですね。

新訳で再読できてよかったです。

<蛇足1>
「北西部ではいちばん古い家のひとつだった」(120ページ)
やはり気になってしまいますね、「いちばん〇〇なうちのひとつ」という表現。
英語の最上級を使った典型的な文章ではありますが...日本語にすると違和感が。

<蛇足2>
さて、この瞬間までエラリー・クイーン君は、びっくりしたタラのような顔でぽかんとしていた。(316ページ)
びっくりしたタラ。どんなタラなんでしょうね? タラって、びっくりするのかな?


原題:The American Gun Mystery
作者:Ellery Queen
刊行:1933年
訳者:中村有希





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