SSブログ

サンダルウッドは死の香り [海外の作家 ら行]


サンダルウッドは死の香り (論創海外ミステリ217)

サンダルウッドは死の香り (論創海外ミステリ217)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: 単行本




単行本です。
作者、ジョナサン・ラティマーの作品を読むのは「赤き死の香り」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら)についで2冊目です。
「赤き死の香り」は「ハードボイルド+本格ミステリ」とあって、読んでみたら「軽ハードボイルド」だと思ったのですが、「サンダルウッドは死の香り」 (論創海外ミステリ217)を読んで「軽ハードボイルド」というよりは呑ん兵衛が探偵役の本格ミステリなんじゃないかと思えました。
探偵の設定や巻き込まれる事件や騒動がハードボイルドタイプなのは確かですが、作家の指向性として本格ミステリが底流にあるような気がします。
脅迫状の取り扱いとか、密室殺人とかでそのことは顕著ですよね。
それと女性の扱い方をみてもそうではないかと感じます。

と思っていたら、このあたりのことは「論理酔いの探偵たち」と題した解説で笹川吉晴が詳しく書いていました。
そうですよね、そうですよね。それくらいのこと、みなさんとっくに気づいていますよね。
でも、我が意を得たりでうれしくなりました。

本格ミステリ好きのかたにも満足いただける作品だと思います。


<蛇足1>
脅迫状の署名が「ザ・アイ」。(最初に出てくるのは14ページ)
The Eye でしょうか? とすると、ザではなくジと読むはずですが、日本語にするとわからなくなるのであえてザとしたのかもしれませんね。

<蛇足2>
「彼女の足が地面につくまでのわずかな間、彼女はクレインの胸に体をもたせかけた。ほんの一瞬、サンダルウッドのような濃厚な香水の匂いがした。」(68ページ)
邦題にもなっているサンダルウッド。ここでは香水ですね。
サンダルウッドといえば、日本語で白檀。


<蛇足3>
「アスキボー(アイルランドの香料入りのアルコール飲料)って吞んだことあるか?」
「いや。何で?」
「ただ、どういう味なんだろと思ってな」(154ページ)
ウイスキーの語源がゲール語で「生命の水」でウスケボーといったと記憶しています。ウスケボーという名前のお店が日比谷にあって、そこで知りました。
こちらのページによると
「ゲール族の言葉で「生命の水」=ウシュクベーハーという言葉から、時代の経過と共に「ウスケボー(アスキボー)(Usquebaugh)」→ウショク(Uisge)→ウスキー(Usky)→「ウイスキー(Whisky・Whiskey)」になったといわれています。」
ということらしいです。

<蛇足4>
「彼は椅子のところまで行くと、シルクのパンツと靴下を身に着け、エナメル革の礼装用の靴を履き、ワイシャツを着た……ところがで一体ズボンはどこにあるのか?」(207ページ)
ズボンより先にパンツを履くのですね......
(このシーンではズボンが見つからないので履けないのですが)

<蛇足5>
『彼はクレインの腹をひどく蹴りつけてから、船室のもっと奥のほうに押しやった。「道は空けとけ」と彼はいがんだ。』(308ページ)
いがんだ? この語がわかりませんでした。まさか「歪む」が訛っているわけではないだろうし。
ネットで検索してみると、啀むというのがあり、
1 動物が牙をむいてかみつこうとする。
2 激しい口調で立ち向かう。くってかかる。
という意味らしいです。知らなかった。


原題:The Dead Don’t Care
作者:Jonathan Latimer
刊行:1938年
翻訳:稲見佳代子







nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 13

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。