SSブログ

間に合わせの埋葬 [海外の作家 か行]


間に合わせの埋葬 (論創海外ミステリ207)

間に合わせの埋葬 (論創海外ミステリ207)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2018/04/04
  • メディア: 単行本

<帯惹句>
ニューヨークの富豪の元に届いた幼児誘拐予告事件を未然に防ぐため,NY市警のロード警視はバミューダ行きの船に乗り込む!
「いい加減な遺骸」「厚かましいアリバイ」に続く〈ABC三部作〉遂に完結!


2021年11月に読んだ4冊目の本。
論創海外ミステリ207。単行本です。
C・デイリー・キングのABC三部作のうち、「いい加減な遺骸」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら
「厚かましいアリバイ」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら
に続く第3作にして最終作。

舞台がバミューダということで、異色作ということになると思われます。
ほぼほぼロード警視ひとりで、ポンズ博士は最後の方にちょこっとしか登場しません。
だから、ということではないと思いますが、作品の持つ雰囲気が少々今までとは違います。
事件もなかなか起こらず、ロード警視は休暇のようにバミューダを楽しみ、恋に落ちる!

オベリスト三部作、ABC三部作と6作に登場してきたロード警視が、ようやく幸せになれるのかどうか。
事件そっちのけで、この点が気になってしまいました。

おもしろいのは、ロード警視は主人公でありながら、ミステリ的には狂言回しの役どころという点でしょう。
ポンズ博士も結局のところ、引き立て役。
最後のクライマックスで真相を見抜いていたのはロードでもポンズ博士でもなく、というのがおもしろい。
いいんです、いいんです。
ミステリとしては苦しいところも多いけれど、ロード警視が幸せになれそうですから。

ある意味、見事な最後の事件、完結編です。


<蛇足1>
「中でも、偶然見つけた小さな砂浜は絶品で、岩陰でこっそり水着を脱ぎ捨ててひと泳ぎした後、体が乾くまでゆっくり太陽を浴びたおかげで、うっすらと健康的な日焼けまでしてきた。」(73ページ)
旅先のバミューダでのこととはいえ、全裸で泳いでその後日光浴とは、ロード警視も大胆な(笑)。

<蛇足2>
「この女性はこれから恐妻ぶりを発揮して、綿棒を振りかざすつもりだろうか?」(89ページ)
「恐妻」を恐ろしい妻という意味で使う例に初めて遭遇しました。
かなり独特の言語観を持った訳者のようですね。

<蛇足3>
「どの窓にもバミューダ・シャッターが吊ってあり、下辺部を外へ押し出してつっかえ棒で留めるため、隙間しか開かないのだ。」(103ページ)
バミューダ・シャッターがわからず調べました。
ああいう窓をバミューダ・シャッターというのですね。

<蛇足4>
224ページに株を使った詐欺の手口が書かれているのですが、そこに
(原注・著者は前述の手口について、クレイトン・ロースン著『天井の足跡』(一九三五年)を参考にさせてもらった。著者自身にはこの詐欺行為を実践した経験がないからだ
と書かれていて笑ってしまいました。
この書き方だと、まるでクレイトン・ロースンはこの詐欺行為をやったことがあるみたいです。

<蛇足5>
「なあ、赤ん坊のものがいくつか見つかったんだ。おまえが<メイシ―>で買ったシャツが二枚ある」(236ページ)
ここのメイシ―、おそらくアメリカの非常に有名なデパート Macy's の訳ではないかと思うのですが、通常日本語にするときはメイシーズ、と訳されていますね。
's はもともと「~の店」という意味なので訳さないと習うことが多いですが、's まで含めて固有名詞化していることが多くそこまでカタカナにする例が多いように思います。




原題:Bermuda Burieal
作者:C Daly King
刊行:1940年
訳者:福森典子




nice!(12)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 12

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。