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黒い天使 [海外の作家 あ行]


黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

黒い天使 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/02/01
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
夫はいつも彼女を「天使の顔」と呼んでいた。彼女を誰より愛していたのだ。それが突然そう呼ばなくなった。ある日、彼女は夫の服がないことに気づく。夫は別の女のもとへ走ろうとしていた。裏切られた彼女は狂おしい思いを抱いて夫の愛人宅を訪ねる。しかし、愛人はすでに何者かに殺されており、夫に殺害容疑が!無実を信じる彼女は、真犯人を捜して危険な探偵行に身を投じる…新訳で贈るサスペンスの第一人者の傑作。


2021年12月に読んだ2冊目の本です。
2005年に黒原敏行による新訳で刊行されました。

帯にフランシス・M・ネヴィンズJr.のコメントが書かれています。
「これは、若い妻が恐怖にとらわれながら時間との戦いをくり広げ、愛人殺しで有罪となった夫がじつは無実であり、真犯人は死んだ女と関係のあった別の男であることを証明しようとする物語である。夫を死の運命から救うために身の破滅をも顧みないヒロインの愛と苦悩、恐怖と絶望、癌のように広がる妄執を生き生きと描き出している」

個人的には、夫に裏切られ浮気されているというのに、その夫のために命の危険まで冒して奔走するヒロインの心理がピンと来なかったです。
少々、どころか、ずいぶん頭の弱い女性のように描かれていますから、これでよいのでしょうか?

頭文字Mつきの紙マッチを現場で見つけたことから、順にMをイニシャルに持つ男を訪ねて真相を探っていく、というストーリーで、ここからして非論理的ですが、ウールリッチ(アイリッシュ)独特の雰囲気とサスペンスは健在で、クイクイ読めました。
(解説に、フランシス・M・ネヴィンズJr.によって紹介された、東欧の文芸評論家ツヴェタン・トドロフの指摘が記してありますが、そもそもイニシャルを持つ男を訪ねるということ自体が根拠レスなので、有効な指摘ではないように思いました)

まだまだウールリッチ(アイリッシュ)の作品は読みたいので、早川書房さん、東京創元社さん、ぜひぜひ復刊をお願いします。


<蛇足>
「リュージュで急カーブを曲がるときのスリルを感じさせる声」(224ページ)
本書の原書は1943年に出版されているのですが、当時から既にリュージュという競技はこういった小説の比喩に使われるほどアメリカでは一般的だったのですね。
ちなみにこの文章のある224ページは、電話の声のたとえ、描写が延々続いて壮観です。ぜひご一読を。


原題:The Black Angel
作者:Cornell Woolrich
刊行:1943年
訳者:黒原敏行



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