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鏡面堂の殺人 Theory of Relativity [日本の作家 周木律]


鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/12/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型(ルーツ)たる建物を訪れた百合子に、ある手記が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO(誰が)、WHY(なぜ)、HOW(どのように)の謎。原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!


2021年6月に読んだ7作目(9冊目)の本です。
堂シリーズの第6作です。

前作「教会堂の殺人 ~Game Theory~」(感想ページはこちら)で路線転換してしまっていてシリーズの今後に不安を抱きましたが、この「鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~」 (講談社文庫)は、普通のミステリです。
二十六年前、一九七五年十二月の初めに起きた事件の手記を読み解いていく、という話。

シリーズのラスボスである藤衛の前に、堂シリーズの建築家である沼四郎とまずは決着をつける、という段取りでしょうか。
しかし、藤衛(の設定)がすごいですよね。
「齢九十を過ぎた老人にして、天皇とまで称される日本数学界の重鎮、しかも二十三年前の孤島における大量殺人事件の主犯でもある男だ。死刑判決を受け、十三階段を待つ死刑囚として収監されるも、昨年、最新請求により無罪判決を受け釈放、そのままどこかに行方を晦ました。」
「世界の秘密たるリーマン予想の証明を得て、神となった。」(ともに38ページ)
いや、リーマン予想を証明したからって神にはなれないでしょう、なんて思っていたら堂シリーズのよき読者にはなれません(ならなくてもよいかもしれませんが)。
まあ天皇という段階で、ある意味神なんですけどね。

細かい点は気にせず、堂シリーズ特有の無茶苦茶なトリックを楽しむのがよいと思います。
例によって、現場の図があり(47ページ)、今度はどう回転するのだろう、と考えるのが楽しい。
楕円形というのが、こういう風に使われるとは。
高校の数学とか物理で想像がつく内容ですが、まあ、思いつく人はいないんじゃないでしょうか。

いよいよ次の「大聖堂の殺人 ~The Books~」 (講談社文庫)でシリーズが完結するんですよね。
手放しで褒められるシリーズというわけではありませんが、ここまで来ましたから、最後に楽しませてほしいです。


<蛇足1>
「わたしが十歳前後の酷い動乱の果てに、幾度もの引っ越しを余儀なくされ、両親もこのときに財産をかなり手放したという。」(99ページ)
ここでいう動乱とは何を指すのでしょうね?

<蛇足2>
「こうして数年後、年齢もすでに二十代も後半に差し掛かったころ、博士課程を無事に終えたわたしは、研究室の助教として机をひとつ与えられると」(106ページ)
手記の記述です。この事件は一九七五年に起こったものとされていますが、そうすると助教というのが変ですね。
調べてみると、助教というのは2007年4月1日の学校教育法改正施行により正式に導入されたもののようです。それ以前の言い方でいうと、助手でしょうか。

<蛇足3>
「だが本当のところ、相対論の数学的基礎は、アインシュタインが学生時代に講義を受けたミンコフスキーによって定式化されたものである。すなわち、ミンコフスキーの存在なくしてアインシュタインのエレガントな相対論はあり得なかったのだ。」(120ページ)
知りませんでした。
こういう蘊蓄は読むのが楽しいです。

<蛇足4>
「もっとも、学者には自らの仕える学問領域こそが至上のものであると考える傾向がある。」(140ページ)
そうなんですか!?



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コースケ

31様、こんばんは。
このシリーズは、無限の回転ですね(笑
藤天皇との決着もいよいよ。
by コースケ (2023-02-23 23:34) 

31

コースケさん、ありがとうございます。
回転は、もうお家芸ですね! 無茶なものであっても楽しいです。

by 31 (2023-02-27 11:55) 

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