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凍雨 [日本の作家 大倉崇裕]


凍雨 (徳間文庫 お 41-1)

凍雨 (徳間文庫 お 41-1)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
あいつが死んだのは俺のせいだ──。嶺雲岳を訪れた深江は、亡き親友植村の妻真弓と娘佳子の姿を見かけ踵を返す。山を後にしようとする深江だったが、その帰り道、突然襲撃される。武器を持つ男たちは、なぜ頂上を目指しているのか。さらに彼らを追う不審な組織まで現れ……。銃撃戦が繰り広げられる山で真弓たちの安否は、そして深江の過去には何が。冒険小説に新境地を拓いた傑作長編。



2022年9月に読んだ2冊目の本です。
大倉崇裕の山岳ミステリ。
あらすじに「冒険小説に新境地を拓いた」とありますが、その通り、いままでの大倉崇裕の作品とはテイストが違います。
以前感想を書いた「白虹」 (PHP文芸文庫)(感想ページはこちら)はハードボイルドタッチでしたが、今度は冒険小説、活劇小説色が強くなっています。

主人公深江の視点で幕が開くのですが、一気に背景などを説明してしまうのではなく、深江の行動や観察を通して徐々に読者に明らかになっていく手法がわくわくできます。経歴もなかなか明かされません。
あらすじでいうところの「武器を持つ男たち」と「さらに彼らを追う不審な組織」と敵(と想定される存在)が2種類いることに加え、亡き親友の妻子という足枷が課されて、主人公の動向にハラハラ。
個対集団、しかも複数の集団、ということで、どう知恵を絞って対抗していくのか。
定番中の定番の流れですが、そこがいいのです。純度の高い冒険活劇。

深江が敵に
「山を味方につけやがった」(184ページ)
と評されるシーンがあります。
また解説で樋口明雄が指摘している場面ですが、
「山はいつも、あんたに味方していたもんな」(393ページ)
と言われるシーンもあります。
戦闘シーンなどを通して、山が感じられるのが魅力です。山登りは経験ないのですが、感じた気になりました。

あえてサプライズ等は排し、直球勝負で王道の活劇小説を作り上げてみせた作品だと思いました。
この後も山岳ミステリを書き続けている作者のこと、さまざまな変化球を今後見せてくれるのではないかと期待しています。




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