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YAMATO Passion [イギリス・ロンドンの話題]

先週の土曜日23日に、Peacock Theatre に、Yamato のショーを観に行ってきました。

Yamato。知らなかったのですが、HPを拝見すると、「和太鼓プロ集団」ということで、
「結成26年
世界54ヶ国
公演数3,800回
観客動員数7,000,000人」
と書いてあります。
なんだかすごいですね。

日本にいると、コンサートとかショーとかってなかなか行けないのですが、こちらにいると割と身近ですね。
ということで、Yamatoそのものを知らなかったのですが、地下鉄の駅にポスターも貼ってあって、興味がわいて観に行きました。
うつりが悪いですが、地下鉄の駅で撮ったポスターがこちら↓。
Yamato ポスター.jpg
ミュージカルとか演劇もいいのですが、やはり壁になるのはセリフ。その点、和太鼓だったらセリフないからOKですよね。(もともと日本人の集団なので、なおよし)

驚いたことに、満席の客席、ほとんどが外国の方で、日本人には行き当たりませんでした。
海外でやってる公演って、客席は日本人が多いのが普通だと思っていたのですが、Yamatoは違いましたね。
こういう世界は言葉の壁もなく、万国共通で訴えるものがあるのでしょうね。

ショーは、とても素敵でした。
演奏は迫力満点で、ずんずん響いてくる音の世界!
と同時に、コミカルな演出も用意してあって、言葉はなくても観客も一体で楽しめます!

写真はケータイで撮ったので、ダメダメな写真ですが、雰囲気が伝わればいいな、と思います。
Yamato 1.jpg
Yamato 2.jpg Yamato 3.jpg
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猿島六人殺し [日本の作家 な行]


猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

猿島六人殺し 多田文治郎推理帖 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 鳴神 響一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
浪人者の多田文治郎は江ノ島・鎌倉見物のあと足を伸ばした米ヶ浜で、浦賀奉行所与力を務める学友の宮本甚五左衛門に出会い、対岸の猿島で起きた殺しの検分に同道してほしいと頼まれる。甚五左衛門が「面妖な事件」と評したことに興味をそそられ、承諾した文治郎。酸鼻を極める現場で彼が見たものとはいったい……? 驚天動地の時代ミステリ!


たぶん日本経済新聞だったと思うのですが、読書欄というのか書評欄というのかで(評者は縄田一男だったかと)、シリーズ第2作の「能舞台の赤光 多田文治郎推理帖」 (幻冬舎文庫)が取り上げられていまして、それがおもしろそうだな、と思ってシリーズ第1作のこの「猿島六人殺し 多田文治郎推理帖」 (幻冬舎文庫)をチェックしてみたら、こちらがこれまたおもしろそう。ということで購入!

離れ小島である猿島にある茶寮で六人が殺されていて、でも生きている者はだれ一人いない状態。茶寮は険しい崖の上に建っていて、門には頑丈な閂がかけられていて...
おお、「そして誰もいなくなった」 (ハヤカワ・クリスティー文庫)ではありませんか!!

探偵役をつとめる多田文治郎とワトソン役の甚五左衛門が事件現場に赴くまでの第一章のあと、第二章は事件の当事者の手記となっており、まさに「そして誰もいなくなった」

「そして誰もいなくなった」と違うのは、手記のあと、第三章以下で謎解きが行われること、です。
「そして誰もいなくなった」型のミステリは、皆殺しの部分が終わるとすとんとラストを迎えるパターンが多い(、そして、そのすとんと落とす切れ味で勝負する作品が多い)と思うのですが、この「猿島六人殺し 多田文治郎推理帖」は違います。手記が終わる段階で152ページほど。まだ200ページもあります。
そして、手記と現場を見たのをベースに謎解きを行う。
これは新しいように思いました。わくわく。
でもね、ちょっと残念なことに、次から次へとトリックをたちまちのうちに見抜いてしまうんですよね。
第三章でほぼすべての殺人の真相が明かされてしまいます。
ああ、もったいない。
もっともっと、ああでもない、こうでもない、とひねくり回してくれればよいのに。推理するという余裕もなく、ぱっぱと真相が語られてしまいます。
犯人もあっさり突き止められてしまいます。
ついでに文句を言っておくと、それぞれのトリックも特段とりたてていうほどのものでもないんですよね...だから多田文治郎でなくとも、読者も真相やトリックの見当が割と簡単についてしまうようになっています。

このあと犯人の手記があって背景が語られ、プラスαで物語は幕を閉じる、という流れ。
「そして誰もいなくなった」型のミステリに犯人の手記は必須アイテムではありますが、本作ではトリックや事件の流れが解き明かされてしまっていますので、手記は事件の仕掛けを明かすという役割を担うのではなく、事件の背景を語るものとなっています。
ここも新しい試みですよね。
この手記に新たな謎を仕掛けるというのも、楽しい仕組みだと思いました。

ということで文句もつけてしまいましたが、トータルでは大満足。
「そして誰もいなくなった」の変奏曲を時代小説の枠組みで構築した、なんて、素晴らしい!

シリーズを追いかけていきたいです。


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ポリス猫DCの事件簿 [日本の作家 若竹七海]


ポリス猫DCの事件簿 (光文社文庫)

ポリス猫DCの事件簿 (光文社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
三十人ほどの人間と百匹以上の猫がのん気に暮らす通称「猫島」。島の臨時派出所の巡査・七瀬晃の相棒は、丸顔で目つきの悪いでっかいドラ猫、DCだ。個性的すぎる島民や困った観光客が引き起こす騒動にてんてこまいの毎日。そんな中には、大きな事件も隠されていて…。お気楽だけど真面目な青年警官とポリス猫が、意外な(?)活躍を見せる傑作コージー・ミステリ。


ずいぶん久しぶりの若竹七海です。
このブログで感想を書くのは、「さよならの手口」 (文春文庫)(リンクはこちら)以来で、実に2年10ヶ月ぶり。
例によって感想を書けていない本として日本推理作家協会賞受賞作を表題作にした短編集「暗い越流」 (光文社文庫)があるのですが、これすら手元の記録では読んだのは2016年12月なので、2年3ヶ月前ですね。
佳多山大地による解説によると葉崎市シリーズの7作目とのことです。
「ヴィラ・マグノリアの殺人」 (光文社文庫)
「古書店アゼリアの死体」 (光文社文庫)
「クール・キャンデー」 (祥伝社文庫)
「猫島ハウスの騒動」 (光文社文庫)(リンクはこちら
「プラスマイナスゼロ」 (ポプラ文庫ピュアフル)(リンクはこちら
「みんなのふこう~葉崎は今夜も眠れない」 (ポプラ文庫ピュアフル)(リンクはこちら
「ポリス猫DCの事件簿」 (光文社文庫)

事件簿、というだけあって短編集でして
「ポリス猫DCと多忙な相棒」
「ポリス猫DCと草もちの謎」
「ポリス猫DCと爆弾騒動」
「ポリス猫DCと女王陛下の秘密」
「ポリス猫DCと南洋の仮面」
「ポリス猫DCと消えた魔猫」
「ポリス猫DCと幻の雪男」
の7編に、全体のプロローグ、エピローグとして
「ポリス猫の食前酒」
「ポリス猫のデザート」
が付け加わっています。

各話、猫島(のお馴染みの面々)と直接関係なさそうなエピソードから始まり、そのあと、いつもの猫島のドタバタ(?) となります。冒頭のエピソードがどう猫島と絡んでくるのか、興味を惹かれます。
また、若竹七海らしいと申しますか、猫島の外での事件が全編の根底にあって、1冊を最後まで読むことでその事件の真相が浮かび上がってくる、という趣向が忍ばせてあります(これ、一種のネタバレかもしれませんが、最初から放り投げてあるような事件、記述があるので、ある程度ミステリを読んだことのあるならすぐなにかあると気づくと思いますので書いてしまっても構わないと思います)。
他愛ない事件がほとんどですが、そんな中にも若竹七海らしい意地悪な視線があって楽しい作品集でした。


<蛇足1>
「招き猫だって、もともとは客寄せだったのが金寄せになって、厄除けになったり方位除けになったりしたじゃん。それと同じでしょ」(83ページ)
というセリフが出てきまして、招き猫が金寄せになっている、ということまでは知っていましたが、厄除け、方位除けにまで活躍しているとは知りませんでした...

<蛇足2>
猫島観光協会とやらが作ったポスターのキャッチコピー(?) が注目です(141ページ)。
「よそにくらべりゃすいてます 猫島海岸」
「よそとくらべりゃ及べます 猫島海岸」
「よそより海がよく見えます 猫島海岸」
これを見て、つい最近話題になった三重県にある志摩スペイン村の宣伝を思い浮かべました。
「①並ばないから乗り放題
 ②空いてるから映え放題
 ③ライバルが少ないから目立ち放題
 ④距離も近いから仲良し放題」
ぜひHPをご覧ください! とってもおもしろいですよ。(←HPと書いてあるところをクリックするとスペイン村のHPが開きます。勝手リンクです)

<蛇足3>
「神事の直後から、低気圧が日本付近に腰を据えててこでも動かなくなり、海上には稲妻が走り、葉崎付近では一時間に四十八ミリという豪雨を観測し、葉崎山で土砂崩れが起きて、葉崎在住の作家・角田港大先生宅が半壊し、高価なスコッチウイスキー数本と、こつこつ集めたハードボイルドのペーパーバック・コレクションが土砂とともに押し流された。」(143ページ)
というのが出てきまして、この嵐、「火天風神」 (光文社文庫)の背景でしょうか??

<蛇足4>
「あいかわらず貧乏かわかしている、という財政事情を除けば」(160ページ)
この「貧乏かわかしている」の意味がわかりません....どなたかお分かりになりませんか?

<蛇足5>
「温泉の二文字は、葉崎のロコの心をしっかりとらえ、日帰り入浴にやってくる地元民がひきもきらない。」(280ページ)
ロコ? 
ネットで調べたら、
『「ロコ」とは、ハワイ生まれ、ハワイ育ち、ハワイ英語を第一言語とする人たちを指します。 厳密にはハワイで生まれ育った、白人以外の人々のことなんだそうです。』(勝手リンクです)
とありました。Local が訛っている(か、そう聞こえる)もののようですね。
その転用ということでしょうか。


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そしてミランダを殺す [海外の作家 さ行]


そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

  • 作者: ピーター・スワンソン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
実業家のテッドは空港のバーで見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻ミランダの浮気を知ったことを話し「妻を殺したい」と言ってしまう。リリーはミランダは殺されて当然だと断言し協力を申し出る。だが殺人計画が具体化され決行日が近づいたとき、予想外の事件が……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防を描く傑作ミステリ!


「このミステリーがすごい! 2019年版」、2018年週刊文春ミステリーベスト10、ともに第2位です。
とてもおもしろく読みましたが、うーん、第2位になるほどのものか、と思わないでもないですね。

空港のラウンジで偶然隣り合った女性リリーに、工事業者ブラッドと不倫に走っている妻ミランダの愚痴をテッドが話し、「僕の本当の望みは、妻を殺すことだよ」と言ってみたら、リリーは「そうすべきだと思う」と応じ...
解説で三橋曉も書いているように、パトリシア・ハイスミスの「見知らぬ乗客」 (河出文庫)を思い出させるオープニングですが、「見知らぬ乗客」は交換殺人で双方向であるのに対し、この「そしてミランダを殺す」は単に妻を殺したいと思っている主人公が助けてもらう、手伝ってもらうだけという一方向(一緒に殺人計画をたてる)なので、より一層信じがたい設定ですね。
テッド、リリー双方を語り手として登場させることで、この部分をなんとかクリアしているように思いました。
さてどうなるかな、と興味を惹かれてぐんぐん読み進んでいくと、第一部の終わりでびっくり。
ああ、こう来ましたか... これは意外でした。
たぶん、「見知らぬ乗客」を連想させることを逆手にとっているのでしょうね。

このミステリ、引用したあらすじにも、帯にも書いてあるのですが「男女四人の語り」で進行します。
先入観なく読むには邪魔なコメントになってしまいますが、<伏字この四人が誰か>、というのもポイントですね。
<伏字リリー、テッド、そしてミランダとブラッドだと思うじゃないですか、普通...でも、違うんですよね。
この作品は全体を通して、リリーの物語、として成立している、と思いました。過去を振り返るシーンが結構な比重です。

意外な展開(過去の話も含め)にワクワクしながら読み進んでいったのですが、ラストがちょっとねぇ...
このラスト、この展開にしてはつまらないラストだと思いました。
なんか安っぽくなっちゃった感じがします。

あとミステリ的に不満が残るのは、殺人を犯すというのに計画が極めて杜撰なこと。
失敗してもいい、捕まってもいい、と思っているわけではないのだから、しっかり考えてもらわないと、ミステリとしてはつまらなくなってしまいますよね。いくら話の展開が重点のサスペンスだとは言っても...

不満は述べましたが、2位だと思えばこその不満、とも言えまして、読んでいる最中はどっぷり世界に浸ってしまいましたので(だからこそ、第一部の終わりでびっくりしました)、十分おもしろい作品でした。

原題はThe Kind Worth Killing。
直訳すると、殺すに値する種類(の人間)というくらいの意味でしょうか。解説でも触れてありますが。
「あなたの奥さんは、殺されて当然の人間に思えるわ」(43ページ)
というリリーがテッドに言うセリフが当てはまりますね。当然、と訳してあるのはさすがプロ、ですね。



原題:The Kind Worth Killing
作者:Peter Swanson
刊行:2015年
訳者:務台夏子












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僕と先生 [日本の作家 坂木司]


僕と先生 (双葉文庫)

僕と先生 (双葉文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2017/06/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
こわがりなのに、大学の推理小説研究会に入ってしまった「僕」と、ミステリが大好きな中学生の「先生」が、身のまわりで起きるちょっとした「?」を解決していく“二葉と隼人の事件簿”シリーズの第2弾。前作『先生と僕』同様、ふたりの活躍に加え、ミステリガイドとしてみなさんを愉しいミステリの世界へと導く!


「先生と僕」 (双葉文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続く《二葉と隼人の事件簿》シリーズの第2弾です。
このシリーズ、《二葉と隼人の事件簿》というんですね。「先生と僕」 の文庫本が出たときにはシリーズ名はこうなっていなかった気がしますが。
それにしても、「先生と僕」の次が「僕と先生」というのは極めて紛らわしいですね。
文庫版あとがきで作者も
「まず最初にひと言謝らせて下さい。ややこしいタイトルですみません。」
と書いています。続けて
「『しかも解説も同じ人だし』」
というのは、逆にちょっと楽しいですけどね。

「レディバード」
「優しい人」
「差別と区別」
「ないだけじゃない」
「秋の肖像」
の5編に、ボーナストラックというか後日譚というかという位置づけの
「指先の理由」が収録されています。

「先生と僕」感想に書いた不満はまったく解消していません。
不満は大きく2点。
紹介されている作品があまりにも有名すぎて新鮮味がない、ということと、扱われている謎が魅力的ではないこと。
紹介される作品が、
「ブラウン神父の童心」 (創元推理文庫)
「怪盗紳士リュパン」 (創元推理文庫)
「ポー名作集」 (中公文庫)
ってラインナップだと、ちょっとなぁと思いませんか?? 
いくらなんでも、このラインナップはないですよね。
ヘンリイ・スレッサーの「快盗ルビイ・マーチンスン」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
天藤真の「大誘拐」 (創元推理文庫)
あたりは、ぎりぎりアウトでしょうか...

ただ、帯に「二葉と隼人に強敵あらわれる!?」とあるように、冒頭の「レディバード」から新キャラが登場していて、この人、楽しそうなんですよね。
ミステリ味を濃くして、かつ、紹介するミステリを入門編から一歩も二歩も踏み出して、続編を書いてください。



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消えたメイドと空家の死体 [海外の作家 は行]


消えたメイドと空家の死体 (創元推理文庫)

消えたメイドと空家の死体 (創元推理文庫)

  • 作者: エミリー・ブライトウェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/09/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
人柄の良さに反比例して刑事の才能はない主の警部補のため、こっそり事件を解決してきた屋敷の家政婦ジェフリーズ夫人と使用人たちは、その実績を見こんだ知人に、行方知れずのメイド捜しを依頼される。一方、警部補は新たに身元不明の若い女性が殺された事件を担当することに。捜査を始めるや、このふたつの事件が意外な形で結びつく?話題沸騰、痛快ヴィクトリア朝ミステリ。


もう3月ですか...
1月末から仕事上でちょっとごたごたし、本を読む気にもあまりならず、ブログの更新もできませんでした...あ~あ。まだすっきりとはいっていないのですが、なんとかもとの状態に戻りたいところです。

さて、この「消えたメイドと空家の死体」 (創元推理文庫)「家政婦は名探偵」 (創元推理文庫)に続くシリーズ第2弾なのですが、「家政婦は名探偵」 を昨年2月に読んだものの感想は書けないまま、第2作を1年ぶりに読みました。

ヴィクトリア朝を背景にしているのですが、コージーと言いたくなるような雰囲気に浸れるところがポイントの作品かと思います。ミステリとして突出したところがあるわけではないのですが、楽しく読めるのがいいですね。
「家政婦は名探偵」というと、市川悦子さん主演だった「家政婦は見た」シリーズみたいなのを思い浮かべるかもしれませんね。あちらは名家の秘密を家政婦が暴いていく、という設定ですが、「家政婦は名探偵」シリーズは、ご主人様であるスコットランドヤードのウィザースプーン警部補を助けるために家の外で起こった普通の殺人事件を捜査する、という設定になっています。
このウィザースプーン警部補のぼんくらぶりが笑えるのですが、事件がわからない、というだけではなく、ジェフリー夫人があれこれいっても、助けてもらっていると気づかないあたりがすごいです。
探偵をつとめるのは、家政婦のジェフリー夫人だけではなく、ハウスメイドのベッツィ、料理人のグッジ夫人、従僕のウィギンズに馭者のスミスと、ウィザースプーン家の面々全員(!) で、さながら探偵団。
この探偵団に支えられて事件は解決できるので、ウィザースプーン警部補は実はヤードでは切れ者として通っているのかも(笑)。だって、ウィザースプーン警部補を目の敵にするライバル(?) ニーヴンズ警部補なんてのもいるんですから。

メイド探し、と廃墟と化したマグパイ・レーンの元地下室と思しき場所で見つかった若い女性の死体、という二つの事件が交差するのか、交差しないのか、このあたりの匙加減がうまくいっているなと思いました。
ヴィクトリア朝の、雇う側と雇われる側の大きな溝、というのが軽やかな物語の中にしっかりとした軸として入っていて、ミステリ面でもすっきり整理されているイメージです。
(その点で、雇われる側のジェフリー夫人が、雇う側のところに乗り込んでいくシーンにはちょっと首をかしげてしまいました。使用人ごときが正面から家に入れてもらえなくてもおかしくないのですから... アメリカ人の未亡人、ルティは雇う側ながら、ジェフリー夫人と仲がいいという設定で、これはアメリカ人だから、開けた性格の人だから、という背景が用意されているので、たとえばルティを使って探らせる、というように運んだほうがこうした疑問を抱かれずにすんだのにな、と思いました)

同じような困難や時代背景は、アン・ペリーの作品にも使われていますが、物語のテイストがまったく違うのが興味深く感じました。



原題:Mrs. Jeffries Dusts for Clues
作者:Emily Brightwell
刊行:1993年
訳者:田辺千幸








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